奇妙な敵が出現した!
そこで抜燐が燕尾にかっと眼を開いて向き合った。
「我々も何者かも分からぬ敵には備えようもありませんし、暗路についても、お前達は近づくなの一点張りです。つまり、向き合う敵がそれとはまた違うのではありませんか?」
「何故・・そう思う」
「単純に考えて、我々人型であれば、眼前で生身の者をばりばりと食う事は有り得ないかと」
「だが、実際に見て来たと報告がある」
「故に確かめるには、相対するしか無い訳ですが、そうなると未知なる敵に、無謀な挑戦をするしか無くなる訳ですよね?私にその無策をせよと言われるのでしょうか?」
「おい・・燕尾、お前は口を割らぬ我に対して責任を転嫁しようと言う論調で言うのか?」
「そのつもりは御座いませんが、今回我が隊の中でもトップ3名が向かいました。しかし、その3名で無ければ、飛翔隊も相当な身体能力を持った者達。その者達の何名も眼前で食われたと言うなれば、いずれ、こちら側にもやって来ましょう。何故ならあちら側の中腹に住むとなれば、岩山上にが天鳥しかおりません。こちら側を超えて来る事は容易ではありませんか。その時どのように対処すべきと言われるのでしょうか。自分を知り、敵を知るにおいて、そこには戦略が必然でしょう、そう教わって来ましたので」
「む・・むむむ。近頃ますます口が達者に成りおって・・」
抜燐は完全に言いよどんだ。
こうして、誰にも言うなと一人のその時の飛翔隊の生き残りである、阿波と言う武将に燕尾は面接する事になった。確かに非常に怯えている様子でまともに言葉を発する事は出来ない状況であったが、燕尾はある液体を飲ませる事にした。それこそ、最近楽理で抽出した今で言う酒である。弱いアルコール度であるが、それで相当の警戒心が解かれた阿波は、この言葉を発した。
「相手は・・見えなかった。周囲に煙幕を張り、大きな声を出しながらばりばりと言う音を立てて、仲間の悲鳴がそこで聞こえ、途絶えた・・」
燕尾はそれだけを聞くと、閲呉の所に戻った。
「ほう・・煙幕か。それは、恐らくあの青緑の植物と関連あるのでは?」
「採取して来て貰えますか?ただし、地に降りてはいけません。空中から刈り取るのです。数本もあれば大丈夫です。これは抜燐殿の開発隊に届けますので」
「分かった。すぐ行って来る」