本当の魔界とは・・
「どうだ?動きはあるか?」
「俺の姿を見たと同時に、小人のような者達が走り去って行った。恐らくこの南の山岳民族であろうな」
「背はどの程度あった?」
「そうだな・・今お前はエバを連れて来た。同じ位だろう」
「ほほう・・以前の灰種と同じ位か」
「の・・ように見えたが、確信では無い」
「分かった。エバ、俺がお前を同行して来た意味が分かるか?」
「相手は攻撃性を持って居ないと言う事と何らかの言語、伝達手段を持っていると言う事よね?で、無ければ、この南の山は急峻であり、互いに連絡もつかないから」
「そうだ。お前には、ここにノノと言う耳の達者な者が居る。俺達がここを動かずに居ると、相手は一端逃げたものの、こちらの動向を探りに来るだろう。その時、その彼等の通信手段を記憶せよ。例えば、逃げろと言う言語、会話のようなものを記録する為だ」
「分かっているわ、父」
エバは頷いた。こうして、丸一日ガリ達はそこを動かなかった。すると、やはり見た事も無い者達がこの地へ来ているのを彼等は、監視せざるを得ない。攻撃こそ受けていないが、完全なる脅威と見ているからだ。逃げ惑ったとしても自分達の身が危ない事は十分に分かるからだ。
ノノがその通信を捉えた。
「チ・・チチ・・チと聞こえた。かなり近くに居る」
「シ・・こっちは動くな、良いな」
エツゴは小さな声で指示をする。その通信は、同じような音階で続くが、ガリが敢えて弓矢を発射したのだった。
「チ!チッチイッツ!」
その通信は驚いたと見える。エバが、
「逃げろ、危ないと言う意味ね。ガリさん、鳥を撃ったのね」
「ああ・・彼等の真上に落下した筈だ」
「ふ・・どうするかな、弓矢で撃った事は分かっているだろうが、それを俺達が回収しようとしないと見たら・・奪いに来るだろうか?或いはもう近寄らないだろうかな?」
「さあて・・また一日待つかのう、はは」
ガリが笑う。こちらには食糧は十分にあるし、彼等より食の種類も豊富だ。食に窮している事は大体想像がつく。




