第1章 勇者現る
真っ二つになった赤魔を見て、この襲撃をした残りは「バシュッ!」と言う音と共に、空間に消えて行くようにそこから退散したのだった。何をするのだろうか、この男はその真っ二つになった赤魔と尾をぶつけて倒れた赤魔を紐でぐるぐる巻きにして引きずって歩き出したのだった。そして、ある集落に間もなく入った。
「あ!恵比寿さん!戻って来たんだね」
迎えたのは、女性と思しき、水色の髪で胸の大きな住民であった。
「おう。玲都、腹が減っているだろう、赤魔の肉は美味いからな。あいつらが仲間を食うのと同じく、俺達もあいつらを食う。これが今の所互いの重要な食糧源なんだからな、今回は一度に二頭となかなかの獲物になったよ」
「うん!すぐ皆に伝える。でもさ、さっき地伝達ってやつがあって、どこかの集落の一つが全滅したらしいんだよ」
「そうか・・でも、集落には必ず勇者が一人や二人は居る筈だが?どこの集落だと言っていた?」
「それが、どうやら、閏琉の所らしいんだよね」
「何!閏琉程の奴が殺られたのか?むうっっ!」
恵比寿の顔色は曇った。
「あ・・いや、はっきりは知らないんだけど、全滅って言う事だけは伝わって来たわ」
「玲都、お前は地獄耳だ。それに、最近トビムシを使ってリレー伝達が出来るようになったんだよな?それで詳しい事を聞いてくれ」
「え・・うん、まあ・・閏琉がそんなに簡単に殺られるとはあたいも思ってないんだけどさ。もう少し情報を広げて見るよ」
閏琉と言うのは、走力が半端なくあって、赤鬼が出現したとしても既に数十体も倒している猛者の一人だった。体は剛毛に覆われて熊のような風体だが、戦い方は実に繊細で無駄な動きは一切しない、剣豪に近い長刀の扱いの名手だった。恵比寿は、大刀を駆使するこちらも指折りの猛者であるし、同じく数え切れ程の赤魔を倒していた。
こちらは、背無理だ。やはりこちらの集団のボス的な存在であり、猛者である。この集団は結構凄い奴らが揃っていて、赤魔は近寄らなかった。では、赤魔とは一体どんな存在なのかを徐々に説明して行く。