再出発までの準備
「うん?何故お前達に言う必要が?これは開発隊の任務だぞ?」
「いえいえ、では、我々の探索の任務はいかに?」
「それは、まだだ。何事も準備が必要。無謀に挑戦するものでは無かろう?」
「うふふ・・それもおかしいですわ。その危険を承知で閲呉隊を派遣されたのでは無いのですか?結果論として、我々は怪物を倒した」
「それは良くやった。故にお前達には慰労もしたし、閲呉隊を正式な遊撃隊として任命したのだ。燕尾、それに対して不満があるのか?」
流石に抜燐が眼を剥いた。怒っているようだ。しかし、燕尾は平然とした顔をして、
「では、遊撃隊として組織した我々に、次の指令が無く今はそれこそ遊軍のような扱いですが?」
「待て・・お前達には何も分かっていないんだ」
「分かっていない?一番先頭に立ち、探索する我々をもう相当に長い期間そのままにしている事の前に、飛翔する翼を創った私達に、余計な事をするなと言わんばかりの言葉に聞こえていますが、いかがでしょうか?それは、自由にやれと言う事と相反する事では無いでしょうか?」
「燕尾、待て・・お前達に、説明が確かに抜けていたようだ。閲呉を呼べ、いや、幹部でもある、惔倹、饗場もだ。そして、今回我利もお前達に預ける」
「そうですか、ただちに呼びますが、お師匠様。その前にもう一つ聞いてもよろしいでしょうか?一体何があると言うのです?いえ、何かの存在を飛翔隊が発見した。ですよね?我々はそれを確かめる為に翼を開発したのですよ?これは隠密にやりました。飼育している天鳥の羽ではありません。岩山上に居た天鳥を捉え、その羽を利用したものです」
「むっつ!やはり、閲呉隊はそれをやっていたのか・・ならばもう仕方が無い。隠すつもりも無かったが、時期尚早と思い、お前達に伝えて無かった事を言わねばなるまい」
深いため息を抜燐はついた。その眉間に苦渋の色が見えた所で、燕尾も追及の矢を収めた。既に抜燐は分かっていた。そろそろ軍師の立場は、この燕尾にバトンタッチすべき時期に来ている事を。
ただ、今回我利を閲呉隊に加えたのは、大将との信頼関係の深いこの男を加入させる事で、まだまだ猛将とは言えど、閲呉が年長の中隊長、小隊長との信頼関係が出来ていない事だった。それは、これからこの人族の集団が向かう困難な道が予想される展開を考えての事なのだ。燕尾は呼ばれた幹部達が到着する前に、短くその要旨を聞いたのだった。そこには驚くべき内容が含まれていたのである。