台頭する若い武将
「とっくにやっている。それに、燕尾もそうだろ?お前は細かく指示していた筈だ。後ろにでかい飛矢を用意して来ているってな」
「な・・何で知っているのよ」
燕尾の眼が点。
「ふ・・なら、こっちの化け物も、何やら俺達を警戒し、観察しているようだが、攻撃態勢は出来ているって事だ。ただ、今は飛矢を撃つなよ。火を潜り抜けて来たら、おい、別動隊」
「え?別動隊?」
燕尾も饗場も知らない事だった。惔倹は自分の別動隊をかなり後方からこの探索隊に呼んでいたのである。
「俺もな、少しは考えるんだぜ?燕尾。それにお前もそうだろ?袋は何だ?ただの食糧にしてはでか過ぎだろ?何を用意して来たんだ?あれはよう」
「ふ・・うふふ。閲呉は、伊達に今回の探索隊に任命されてはいないようね。前に出て来て・・」
燕尾も覆面隊をこの20名の後ろに率いていたのであった。そして、総数が30名になった所で、その怪物はどうやら火に慣れて、じりじりと攻撃体制を整えようとしている。
「しゃああああーーーっつ!」
やっぱりこいつは巨大な蜘蛛だ。小さな蜘蛛はこの世界に居るからだ。無数の糸を口から吐き出すと、火の勢いは衰えた。いざ、その瞬間飛びついてくるかと思う中で、
「今よっ!飛矢っつ!油袋っつ!」
軍師燕尾のこれは初陣であった。こちらも当然身構えているのだ。相手の動きを一瞬の隙も見逃す事は無い。
「ぼおおおおおっつ!」
火は、先ほどより何倍にも強くなり、燃え広がっている中で、飛矢が何本かその硬い蜘蛛様の怪物に突き刺さった。そして、その飛矢にもまた油が塗ってあり激しく燃えだした。
「ぎゃ・ぎゃぎゃ、がぎゃ」