第1章 勇者現る
「おう・・そうだなあ・とにかく大将に伝えた。大将の傍に、もう少し使える者が数人は欲しいよな。俺達も頑張っては居るんだが・・」
背無理も相当な戦士と呼ばれる一人らしかった。今報告に来た馬路もその一人であった。
その時、ある者の前に複数の赤魔が現れていた。勿論この者を食うためだ。彼らには心なんて微塵も無く、その赤いとげとげの針を体中にまとったサタンそっくりな姿で、どこからか瞬間的に人の匂いを嗅ぎつけハイエナのように襲って来るのである。もちろん人達も何らの対処が出来て居ない訳では無く、長年の戦いの中でこの赤魔が最も嫌うある匂いの草を住む所に植えてあり、その集落はかろうじて襲われなかった。そう言う集落の場所が点々としているのだが、この時代には互いに連絡・伝達方法が限られていた。加太のような空中を飛べる術?能力を持つ者だけにそれは可能だし、馬路のような地伝達も可能な手段であった。つまり、特殊な能力を持つ者だけがこの世界に生き残っていると言う事らしいのである。
この男はどこの集落からやって来たのかは知れないが、10数体の赤魔に囲まれていた。そして赤魔は強いのだ。膂力は人の数倍あり、体格も2倍はあった。敏捷性をも持ち、力強い尾で攻撃を受ければ、人など一たまりも無かった。ぼろぼろの肉片になるのである。そこで、人達は装飾と言う武具をまとい、何とかその攻撃だけは耐えられるだけの武具とは言わない、防具を身につけているのであった。
「ぐわるるうううーーーーーっつ」
飢えた肉食龍と同じだ。倒れれば食われる。反撃せねば即ち死が待っている。一頭?いや一匹でも無いか、その赤魔がこの男に襲いかかった。だが、その強烈な尾の一撃はこの男には届かなかった。
「バシュウーーーーン」「どおおおーーーん」
その赤魔の尾は、すさまじい音を立ててその付け根から切り離され、一頭と言おう。他の赤魔にあたり、その勢いで、数十メートルも吹っ飛ばされたのである。
「ぎ?ぎぎぎぎ?」
自分達の身に何が起きたのか分からぬ赤魔達は、声を上げている。しかし、この男は間髪を入れずに尾を切り取った赤魔に、閃光鋭く、大きな大刀を抜き、切り裂いたのである。
「どおおおん・・」