台頭する若い武将
「抜燐師にも言われているからさ。あんたの傍に居てやれとね」
「だったら、何も言うな。俺の傍に居ても黙っていろ」
閲呉がそう言った矢先の事だった。
「しいっつ!閲呉、構えろ。何かが居る」
閲呉隊は20名だった。その燕尾の言葉で武具を握りしめ身構えた。確かに何かが居ても全然不思議じゃないのだ。黒魔が出て来たこの洞窟には禍々しい雰囲気が立ち込め、又松明の火をともし、絶え間なく火を継ぎ足しているものの、相当の距離を歩いて来た。ここまで何者にも出会わなかったものの、何かが居て不思議じゃないのである。未知への探索なのだから。
「ぐ・・ぐるるるぅ・・」
唸り声が聞こえて来た。
「こっちに向かって来る。相当でかそうだ」
「黒魔か?」
「いや、そんな事は分からない。でも、こちらの火が消えたら、確実にやられる。だから、この行軍の後に持って来ている芝草の半分を使おう、これで半日灯かりは持つからね」
「おう、すぐやれ。とんでもない魔人か、何かがこっちへ向かっている事は確実だ。おい、惔倹、お前達5名は飛矢を構えていろ」
惔倹とは弓の名手と呼ばれている。こちらも閲呉の右腕と呼ばれる生後6500日前後の若手だ。その後ろに生後13000日から15000日程度の今回は、かなり上級の勇士達が続いている。
彼らは身構えた。そして、その相手は止まったようだ。耳の良いこっちも今度は閲呉の左右を固める側近である饗場が告げた。
「相手も警戒しているようだ。動きが止まった・・」
「ほう・・俺達の殺気を感じたのなら、なかなかの敵じゃねえか」
閲呉が言うと、
「閲呉、また突進したら駄目だよ。相手が分からないのに、こちら側から攻撃を仕掛ける事は無謀だ」
「ち、燕尾、お前は俺がやろうとする前に先々と言いやがる」
「しっつ!」
燕尾が再び、閲呉にシーーっつと言った。