出現したとんでもない敵
大音声と共に振り下ろすと、恐らく豪将室蘭でしかそれは可能では無いだろう。どすんとその前足は落ちたのだった。
「ぐ、ぐぎゃああっつ!」
「おい、前足を運べ・・」
10人掛かりでその前脚を運び出すと、今度は反対の前脚を室蘭は叩き切った。それも運び出すと、流石に黒魔には4本の脚が機能しない、口も火だらけになり、
「おい、このまま丸焦げにしちまおうぜ。こんなでかいのは持って帰れないからな」
凄まじい飛矢が黒魔の周囲で突き刺さると、もう唐揚げ状態の黒魔は断末魔の叫びをあげ、動かなくなったのだった。
「やったぞおっつ!」
おおおおっつ!彼らは心からの雄たけびを上げるのであった。この閉鎖的な空間の中でその恐らく最強の黒魔は、こうして集団で協力し、戦術を駆使すると言う手段によって彼らに駆逐されたのだった。黒魔はもう他には居なかったのである。
その黒魔を食べた事によって、ある変化が起こっていた。
今までの食とは段違いの栄養源であり、彼らに特殊能力が授かったのだ。殆ど全ての者が飛翔出来るし、走力も数倍になった。また知識力が高まったのである。自分達が驚く程であり、もう赤魔、白魔、緑魔などは近寄っても来なくなった。数魔達が襲って来ても一人が難なく倒してしまう程のレベルになると、ようやくこの半径3キロの囲まれた空間に住む、全ての人の数が判明した。その数はようやく1000人に迫る989人と言う事が確認出来て、一つの集団として、もう彼らを襲う事の無くなった魔人達を食として利用するか、或いは彼らを飼育するかと言う話まで出るようになった。肉食の彼らを草食に変えれば、家畜として飼育出来、安定的なものとなると言う、ここでも抜燐が知能の上では抜けていた。そして安良をこの集団の大将とする事も決定した。副将には恵比寿と物探が。そして軍の中将には閏琉、我利、背無理が率いる事となったのである。
こうして、組織が出来上がり、魔人達に草食を与え始めると、彼らの形態は徐々に変化しだし、穏やかになった。もう人を襲うような事は無くなったのである。こうして一時の平和は維持された。
だが、勿論こんな話では終わる筈も無い。




