北方より来る魔の影
「俺達は、勿論我が身を守る必然性を持つ。しかし、これだけの壮大な戦術を持つ彼らもまた、長寿の者達と理解せねばならない。だな?ユウゴ、エバ」
「あ・・うん。そう言う事です・・」
「唯一それを知るのは、又バツエツ師と言う事にはなるが・・もう俺は聞かない」
エツゴはそう言った。ビゼンも頷いている。
「恐らく、過去に壮大な何かがあり、当時のバツエツ師はまだ幼かった。故にその前の世代、父親なら知って居ようが、この歴史文書が恐らくそこにある筈だ。それはバツエツ師の所では無い。黒魔人の本拠にだ」
エツゴが言い切った。
「じゃあ、盗って来るのか?」
「ああ・・だが、盗るのは同じ黒魔人だ」
「何だって!」
これには全員が又驚いたのであった。
「斥候と言っていただろ?俺達が黒魔人に送っている斥候の存在などとっくに見破られているさ。あっちの黒魔人は最近、高速の羽を利用しだしたから、こっちの陣容や、兵軍の配置等は把握もしているだろう。だから、こっちの斥候等は恐らく進入等が出来まい。あの霧はめくらましと同様に、彼等を魔人化させているものだろう」
「何と・・エツゴもそう言う分析をしているのか」
「客観的に見て、互いにそう言う薬湯であるとか、魔人化、魔物化出来るものがこの大地にある訳だ。まだまだ先には、到達していないギ種の棲むこれも広大な砂漠があり、その先にもまた何かがあるのだろう。火山も多い。決してこの地が俺達にとって住みよい環境なんかじゃないんだ。所々に点在する動植物が生きて行ける環境のみに、俺達のような存在がある。黒魔人達の姿もそう言う環境下によって適応したと見るのが自然だ。元々の姿は、恐らくもっと違ったものであるんだろうが、そう言う過去の文章を恐らく上原族の王が保管していたに違い無い。魔物使いのギゼン族との戦いの時には、相当数奪取されているだろうしな。恐らく自分達が追いやられてしまった狭窄な地に適応して変化した一族が、この地を奪取しようとしている。恐らく、上原族を更に使役していたのが黒魔人では無いのかなと、俺は思うんだよ。あ・怒れ、ビゼン。俺の空想だ、それは」
エツゴが苦笑い。ビゼンは怒り顔で、
「く・・相変わらず。親子揃って、空想ばかり言いやがる・・しかし、相当な飛躍をした割には筋が通ってやがるんだなあ、これが。俺はタメ口で良いと言われているから、そのまま言うがな、この野郎!お前も殴りたいぜ!」
ガリが笑う。




