出現したとんでもない敵
5地区が繋がった事によって、かなりの戦力が整い、赤魔は逆に彼らの狩場になっていた。赤魔は、姿こそ醜悪ではあるが美味なのだ。つまり食材としては、上々の対象だった。そして何故人が襲われるのかも少しは分かった。彼らには食糧が少ないのだ。確かに眼前に平野が広がるが、彼らは肉食だ。そして、その平原には殆ど人以外に肉が供給される動物が居ないのである。その動物とは、何かと言う事も人は知らない。しかし。口頭伝授においては、その昔には相当数が棲息していたそうであるから、食い尽くしたと見るのが正解なのかも知れない。知恵者抜燐は、色んな事を例えば・・と言う推理をしながらも人に伝えて行った。そして、ある程度の伝達方法として記号を組み合わせた文字なるものも創ったのである。こうする事によって、今自分達の存在意義を伝える、そして自分達がこの魔人に殺られても、しっかりその記録が残った方が、次の世代に伝授出来ると言う事を説いたのだ。確かに、それは全員を納得させたのだった。彼らは決して何も知らない訳では無くて、驚く程知能は高かったようだし、身体的能力も相当に上がったのであった。
その中で、とうとう黒魔と言うとんでもない敵が出現するに至った。この黒魔がどこかの集団を襲撃したのか、散り散りになって、彼等は安良の集団の中に逃げ込んで来たのだ。それは、赤魔、白魔、緑魔を遥かに超える巨体の、金属光沢をしたようなゴジラを連想させるような怪物であった。
既に数百人が襲われ、食われたと言う。そして、白魔、緑魔、赤魔でさえもその対象となっているようだ。
「こんなの・・どうやって戦うんだ?それに全く忌避植物なんて効きゃしない」
安良は、蒼白となった。束になって掛かってもとても敵わぬ敵である。彼が幾ら豪将と言っても、赤子のようなものだろう。
「いや・・逃げるしかねえわ・・これは」
室蘭さえもそう呟いた。だが、ここで新に加わっていた、非宇と言う男が進み出た。
「これを止めにゃあ、俺達全員が餌になっちまう。戦うしか無いっしょ、安良大将」
「だって、どうやってだ?全員でかかるのか?こいつに」
「ぎゃあぎゃあ、地響きをするような大吠えで、俺達もびびっちまっていますけど、足を狙ったらどうですか?動きはとろそうだから」
「足・・でも、とても硬そうだし、あんなの切るような刀もねえしな」
安良もびびっていた。