展開が変わった
ビゼンは、マビの指を折った・・いや、かのようにキランには見えただけであったが、脂汗を滴たたせて、マビは苦悶の表情を浮かべている。やはり、瞬間に折ったのだろう。これは痛いだろうと思える。拷問とは即ちこう言う事なのだろうか・
「ぐ・・ぐむむ」
「どうだ?少しは喋る気になったか?」
「知らん・・ぐ・・ぐぐ」
「そうか、それならヤラにも同じ事をしてやろう」
しかし、ヤラは、
「ま、待て」
「待てだと?お前に指図はされんわ。ほれっつ!」
「ぎゃああ、ぎゃっつ、ぎゃっ」
今度は右手の爪の間に針を打ったようだ。ビゼンの所作は早くて、キランには良く見えなかったが。マビよりも更に強い痛みを感じているようだ。
「い・・言う。言うから止めてくれ」
ヤラの眼からは痛みで涙が零れていた。
「いや、止めん。お前達は、この上原族を売ったんだ」
「売る?・・何の事だ」
確かに売り買い等と言う商業用ルールなど皆無の世界だ。しかし、それは自然にビゼンの口から出たとは言え、ニュアンスは分かる。
「こっちの情報を黒魔人に渡した事を言っているのだ。故に、その裏切り行為を許す訳にはいかんと言う事だよ。こんな事があれば、もはや組織としての統制が取れないからな」
「それなら、何故このような拷問をする。殺せと言っている」
「ふはは・・その裏切り行為とは、死で償うべき優しいものでは無い。お前達はその非を悔いても、それ相応の罰を受けねばなるまい。それとだ・・お前達が何の脈路も無く、突如黒魔人族に情報を提供する訳も無し。だろう?お前達は自分の家族を人質に取られているんだもんな」
「え!」
キランも知らない事だった。