戦況が変化して来た
「良し・・抜燐師と本来の呼び方に戻そう。戻って貰って良いっす。巍然族の皮の鎧は、むしろ、その巍種から直接入手した方が効率も良い。白魔洞からの封鎖通路もついでに聞いて置こうか。もう隠し事は無いっすね?」
「そこまで・・見切ったのか?閲呉は恐ろしい奴だ」
抜燐は、眼をぐりっとさせて驚くのであった。
「ふ・・抜燐師は気づいていないかも知れないけど、隠し事がある時には、ある特徴が出るんすよ。俺は、そうやって人を見抜いているつもりっす。尤も、備前もそうなんだよな?」
「ふ・・くく」
備前は苦笑するのであった。やっぱり、そうやって閲呉は自分の側近を決めているのだと思った。
気藍は驚くのみだった。秘密の通路が存在した訳だ。これだけ命がけで探索をしているのに、そんな通路を師匠が隠していた事に衝撃を受けている。逆に自分が殺してしまおうかと思った程だったのである。
「気藍・・帰りはお前が護衛しろ」
「え・・は・・い」
閲呉にその殺気が見抜かれていたのか、かろうじてその言葉で留まるのであった。彼女にも激しい気性が隠れていたのである。閲呉はむしろ、燕尾の影では無くもっと表に出て来いと言っているようだった。信頼とは、そこに隠し事があっては成立しない。気藍は、抜燐師が影の多い人物である事を知りながらもここまで師匠として慕って来たのだ。それが無くなれば、もはやその関係は崩れる。これは全ての者達の命を左右する重大な事であったからなのだ。
気藍が抜燐を伴い、その場を後にすると、すぐ備前が言った。
「ふう・・どうなるかと思いました。閲呉さんには言葉とは裏腹な殺気は御座いませんでしたが、気藍さんは抜燐師をばっさり斬るかと思いました」
「斬っただろうな、恐らく」
燕尾は、
「裏切られた思いが強かったのでは?私より遥かに信頼をしていたから」




