第1章 勇者現る
疲弊した大地には、もう雑草しか生えて居なかった。この地に居る住民は悉く度重なる彼らが呼ぶ、赤魔人によって食われてしまったのだ。時は、分からない。嘗ては高度な文明を持った時代もあったと言う。しかし、そんな祖先が創り上げた文明等は悉く潰されたのである。
「やられた!あの村も全滅だ」
白髪の、がっちりした体格の銀色の光沢ある装飾をした一際大きな恐らく武将?戦士と思しき者が、一人のやはり偉丈夫と思える長身のこっちは赤銅色のやはり装飾をした着衣の者に報告をしている様子が映った。
「馬路!あの矢筈地区には、相当な力量を持つ戦士の閏琉が居たんだぞ?アイツも殺られたのか?」
この報告した者は馬路と言うらしい。
「背無理、閏琉が殺られたと言う確信は無いが、辺りは血糊に染まっていた。誰一人居なかったんだよ。住居すら殆ど原型を留めちゃ居なかった」
こちらは背無理と言うらしい。
「そうか・・相手はどこからやって来るのか読めないもんな、不意打ちを食らえば、確かにその状況で生き残っている可能性は少ないかも」
「だが・・俺は閏琉には生きていて欲しいとは思っている。あいつの空中殺法はすげえもんな、みすみすこっちの戦力を奪われてたまるもんかい」
うんうんと頷きながら、背無理は、
「俺らの大将にまずは報告しないとな・・ここは、加太に伝言を頼むか。空を飛べるのはこいつしか居ねえし、空中では襲われないからな」
「おう、俺の地伝達で連絡する」
地伝達・・とは、大地に振動を起こし、その振動がモールス信号のように、振動の大きさで相手に伝達する方法らしい。彼らは一体・・
「ふ・・そこはお前に任すわ。こっちには今の所赤魔は来ていないものの、食い物はねえし、あいつらの餌にされたんじゃ、どんどん仲間は減り続ける一方だ。反撃出来る仲間はもっともっと欲しい。色んな手段を使って探しているんだが、なかなか見つからねえしな」