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8.リアーナ

出してもらった温かくて美味しい昼食をいただきながら、お女将さんと話をしました。

ここでは賄い以外のちゃんとしたメニューをいただくのは初めてです!

賄いもとても美味でしたが、この人気メニューは彩りも盛り付けも素敵で更に美味しくて感動ものです!

毎夜混雑していた理由がよくわかりますね!


「ここ数日、ホーネスト王国方面から早馬が来たり、早馬が戻って行ったり、戦争でも起きるんじゃないかってみんなでヒヤヒヤしてたんだよ。」


お女将さんは凄い勢いでパクパクと食べ進めます。これ味付け変えても良いかも。辛味を足してみるか。なんて言うのでその速さでもきちんと味わっていると分かりました。すごいです!


「おそらく戦争は起きないかと。私は砦からここまで来ましたがそんな様子ではありませんでしたし、それに、ご一緒させていただいた商人のお爺さんはどなたか大切な方を懸命に探しているだろうとおっしゃってました。」


大切な方、と言って、お爺さんは高貴な方と言っていた事を思い出しました。

まぁ、どちらでも同じですよね?高貴な方は大切にされている事が多いと聞きます。


「それ、リアーナ、あんたを探してたんだよ?どこで騎士さんたちを見たんだい?気が付かれなかったのかい?」


呆れた口調で女将に言われ、え?と驚いてしまいました。


私は高貴な人ではありませんよ?

誰かに大切に思われるような人間でもありません!

いつか誰かから大切に思われたら幸せだろうなと、リカード様に求婚されるされないかくらいの頃に、身の程知らずにも思ったりしましたけど。

リカード様は私ではなくこの珍しいスキルが大切なのだから、私が望むのとはちょっと違うのです。


「私を?でも私は砦から商人さんの馬車に乗せてもらって砦からまっすぐに、ここ、王都に向かいましたよ?すれ違うこともありませんでしたし。馬を休憩させている時に早馬が遠くを通るような事があったようですが、特別こちらが隠れたということもなく堂々と馬車でやってきました。御者台に乗せてもらったりもしましたし。商人さんも札持ちでしたから、なんら問題はないはずですよ?」


札持ちの商人であれば、騎士団から隠れるような移動をする必要はないのです。

後ろ暗い事がないのだから。


悪い事をしている人たちは騎士様に出会う事を極端に嫌がるので(逮捕されちゃいますからね。)騎士様たちの動きには敏感になって、隠れ潜みながらの移動をされるようですよ?


「札持ちなら使う道はほぼ同じだから安心だね。ちゃんと王都まで送ってもらったみたいだし。しかし、なんてタイミングですれ違ってるんだろうねぇ…。(ボソ)」


何か言ったようですが、とにかくほっとしてくれたみたいです。更に安心材料を提供しておきましょうか。


「この食堂前の新道を下って、広い馬車回しのある場所の角の店、おしゃれなカフェがありますよね?」


「あぁ、朝食を提供してる珍しい店だね?」


さすが女将さん。周囲の方達ともしっかり繋がりを持っていますね。


「そうです。その店の店員さんが最近ご結婚されたようで…。」


「あぁ、騎士と結婚したっていうハルチカだね!」


「ハルチカさん…とおっしゃるのですね…私、名前に興味が向かなくて…失礼してしまいました…。」


そう思って振り返れば、名乗ってもらった方や、誰かが呼んでいるのを耳にすれば覚えてお名前を呼ぶことはありましたが、自らお名前を聞いたことは一度もありません…。


不義理だったでしょうか…。


「いや、そう思ったのなら次から気をつけたらいいんじゃないかい?名乗りたくないとか、正体を隠しておきたいって人だっているかもしれないよ?」


女将さん。名乗りたくないとか正体を隠すとか、そんな方はおそらく悪人だけな気がします。

少し俯き加減でそう思っていると、女将さんは話の先を促してきました。


そうでした!話の途中でした。


「ええと、砦から馬車に乗せて下さったのはその店員さん、ハルチカさんのご両親だったんです。」


「ハルチカの両親!?あんたそりゃ、ホーネスト王国でも店を持ってるって話だよ!まあ、まぁ、まぁ!それは随分と大御所の二人と知り合ったもんだね。あの二人なら問題ないどころか、誰も疑いやしないよ!」


「まぁ!そんなに有名な方でしたか!有り難いご縁ですね!」


精霊様のご加護でもあるんじゃないかと思ってしまいますね。有り難いことです。私のスキルさん、ありがとうございます!と心で伝える。


お陰で女将さんも安心してくれました!


「そんなわけで、戦争なんて怖いことは起きないと思いますよ!」


自信満々にそう告げると、


「そうじゃないだろうに….。」


と呆れられてしまいました。

なぜでしょう?


思い切り不思議な表情を晒してしまい、ハッとしました。

せっかく王妃教育で表情を隠す方法を教わってきましたのに、いつの間にか思った事をそのまま表情にのせ、晒しておりました!


今からでも隠した方が良いですよね?


私は習った通りの笑顔を貼り付けて女将さんに顔を向けました。


「いいかい?リアーナ。あんたはリカード様に探されている。これは間違いないよ?何があったにせよ、突然居なくなれば誰だって心配するんだ。ちゃんと顔を見せて安心させておやり?」


顔、ちゃんとできていましたか?

女将さんの顔を見ても何にもわかりません。

私、ちゃんと顔できてましたかー?


「ちょっとリアーナ?話聞いてるかい?」


「はっ!なんでしたっけ?」


すみません!表情を貼り付けられていたかが気になって、聞いていませんでした!


「はぁ…。突然いなくなったらダメだよって話だよ。」


すみません。ため息を吐かれてしまいました。

そうですよね。突然居なくなれば、どうでも良い相手であってもみなさんお優しいですし心配かけてしまいますよね。


「今後は気をつけます!出ていく時にはきちんと出ていくことを伝えてからからにします!」


「そこじゃないんだよ…リアーナ…。」


何故かガッカリされてしまったようです。

ガッカリさせてしまって申し訳ありません…。




「とても美味しかったです!私、今は無一文なのでお支払いが出来ないのです。申し訳ございません。後日お支払いに来ますね。」


そう伝えて席を立ちました。


「もうちょっと待っててもらえるかい?」


「あの。少しでも早く宮廷に戻って、王妃教育の先生方に謝罪をしたいので、失礼します。」


「え、ちょっとまっ…。」

「急ぎますので!」


女将さんの言葉を最後まで聞かず、申し訳ありませんれ

でも、早く宮廷に戻らなければと気が急くのです。


  「ちょーっ!!」



この時間から戻れば、ギリギリ先生がいらっしゃると思うのです。

ギリギリです。ギリギリ。

お腹もいっぱい、座れたので脚にも元気が戻っています。

少し頑張って歩けば問題なく間に合うはずですが、とっておきの道を歩くことにします。


この道は旧道からさらに脇道で、獣道なのか少しデコボコしていますが、かなり時間が短縮されるのです。


「バーネットさんのおかげで靴と足がしっかり密着していますね。これならサクサク歩けてしまいます!バーネットさん!ありがとうございます!」


今日何度目かの感謝の気持ちを天に向ける。

この気持ちが届かずとも、バーネットさんに良いお導きがありますように!





「誰もいらっしゃらない…。」


宮廷に到着し、いつも王妃教育を受けている部屋へ行くが誰もいらっしゃいませんでした。


私が半月以上サボってしまったのです。

考えてみればわかったことです。

今もまだこちらの部屋で先生方が待っていてくれるなんてあるはずがありません。


自分勝手にも程があります。

自分が嫌になります。


しかし、せっかく戻ってきたのですから、謝罪するために先生にお会いしたいと思います。

先生方には傍迷惑かもしれませんし、謝罪を受け入れていただけるかもわかりません。

しかし、それでも悪い事をしたのですから、謝る姿勢は必要だと思うのです。


では、先生方はどちらにいらっしゃるのでしょうか。私以外にも王妃教育を受けているのだと、一緒にお食事をいただいていた若い男性がおっしゃっていましたので、宮殿には通われているはずです。


「あら?あの方のお名前って…。ふぅ…。聞いた事がありませんでしたね。」


本当に私ったら人のお名前に興味がいきませんのね…。あの方が嫌な思いをされていなければいいのですが。


とりあえず、隣の宮廷へ向かうことにしましょう。

私が借りている部屋があるこの宮廷は隣の宮廷よりも小さな作りとなっています。

こちらにはリカード様も借りているお部屋があるそうです。私はそちらへ行ったことはありませんが。


隣の宮廷へ向かうには、私がお借りしている部屋の前から行った方が早いので、一度部屋を覗いてみることにしました。

もしかしたら全て処分されている可能性もありますよね。半月も居なかったのですし。


捨てられて困るものと言えば勉強道具くらいなのですが、勉強道具は揃えるのにかなりお金がかかります。しばらく仕事はしておりませんでしたので、手元にあるお金では心許ないのです。

そんなわけで、出来れば今後も使いたいので、どうか処分されていませんように。と祈りながら歩きます。


いつもであれば、両脇に護衛が付き、部屋の前には護衛がおりましたが、今この宮廷には人がほとんどおりません。

そういえば、あちこち歩いておりますが、誰ともすれ違っておりません。と言うよりも人気が全く感じられないのです。


「お食事の時間でもありませんし…何かあったのでしょうか?」


おかしいとは思いますが、尋ねる誰かもおりませんので、部屋へ向かいます。


既に他の方の部屋になっている可能性がありますので、ノックをしてしばらく待ちますが、どなたからも返事がありません。

ドアノブを回して扉をそっと開けてみます。


「あ、開きました!」


鍵は掛かっていないようです。

私は一度もかけたことはありませんが、かける方もいらっしゃると聞いた事があります。

私の場合、盗まれて困るものは勉強道具くらいですので、鍵をかける必要性を感じてこなかったのです。


「失礼致します。」


部屋の中に入ると、見知った状態のままでした。

まだこの部屋は私が入っても大丈夫だったようです。ホッとしました。


せっかくお部屋に来たので、ずっと背負っていた靴の入った袋を下ろし、靴を取り出してしまいました。袋は洗う必要がありそうだったので、未洗濯のカゴにかけられたタオルをそっと外して中に入れて、元に戻しました。


今履いている靴はバーネットさんに調整してもらってから、持っている靴の中で一番歩きやすいので、そのまま履いていくことにしました。


「そうでした。ここを引き払って寮へ移動するとなれば、荷物も整理しておいた方が良いですよね。」


とはいえ個人で持っているものは少ない。

時々リカード様が送ってくださる髪飾りなどは、私が使ったら作り手に申しわけないですし、何より勿体無いので一度使わずに保管してありました。


「手付かずですし、お返しできますね!」


綺麗な箱に入った贈り物には触れず、自分のものを持っている一番大きなカバンである、学校で使用するための予備バックにどんどん詰め込みます。勉強道具は学校へ通うためのカバンに全て詰め込みました。


「ちょっとおデブになっちゃいましたけど、入って良かったです。」


服も最低限しか持っておりませんので、さっと袋に詰めると、やる事がなくなりました。


こんな部不相応なお部屋には居づらくて、荷物を広げていなかったのも早く片付けられた要因です。


さて、これから隣の宮廷へ行きましょうか。



隣の宮廷へ向かうには、一度外に出る必要があります。外に通じる扉は正面玄関と裏玄関の二つ。

私はリカード様と一緒じゃない限り正面玄関は使いません。正面玄関はキラキラしすぎていて、私なんかが使ったら汚れてしまう気がして出来る限りシンプルな裏玄関を使うようにしています。


この宮廷に入ってくる時にも使った裏玄関の扉をしっかり閉じて、お庭を回ります。


宮廷と宮廷の間に大きなお庭があるのです。

林があるほどのお庭で、私が通る道の先には大きな倉庫があります。

倉庫には倉庫番用の部屋がついていて、かなり昔からあるようです。一度どんなところなのかと口走ってしまったところ、護衛の方が案内をしてくださって入ってみたことがあります。

倉庫番用の部屋は、宮廷のどのお部屋よりもひろいのですが、ところどころ崩れ始めており隙間風が吹き込むのです。どうやら何年かしたら取り壊して別のものを建築予定なのだとか。一体何が建つのでしょう。


それとは反対側の道にはガゼボもあるそうです。

リカード様のお気に入りの場所だそうで、時々そちらでお茶をしたりゆっくりしたりするとおっしゃっていました。

せっかくの情報ですので、出来る限りそちらへは向かわないことにしています。


『お前の不細工で憂鬱そうな顔なんて見たら、誰だって嫌な気持ちになるよ!』


そう母に言われたことは忘れておりません。

美味しいお茶やお菓子をいただいている時に、私の顔などみたら美味しくことができませんものね。

嫌な気持ちにさせてしまうのは出来る限り避けなければなりません。


と、ここまで考えて自分が矛盾している事に気がついてしまいました。


「どうしましょう!」


王妃教育後のお茶。

私の所作の復習のためにリカード様にはお付き合いいただいていました。私にとっては楽しい時間でしたが、リカード様には大切な休憩時間でしたのに、申し訳ない事をしてしまっていました。

さすが高位貴族とでも言うべきなのでしょうか、リカード様の所作は完璧。

お手本にはもってこいだったのです。


一緒に過ごさせていただけると、おさらいは完璧になりそうでしたので、お断りしたことがありませんでした。


これは私のわがまま、怠慢でしたね。

リカード様はお優しいですから、断る事が出来なかったのでしょう。


「もし次があれば、しっかりお断りしましょう。もうお手本は無くても大丈夫だと先生たちにも言われてましたし。」


そういえば、学校へ向かうのにも、同じ場所に行くのだからと、馬車に乗せていただいていましたが、そちらもよくよく考えたら同じ事なのでは!?


同じ時刻に馬車回しへ行っていたのだから、お優しいリカード様なら誰にでも手を差し伸べるはずです。


「何も考えていませんでした…。とにかく勉強出来ることが楽しみすぎて…。」


やはり、母の言うように私はグズなのでしょう。

思い返すたびに、失態も一緒に思い出してしまいます。

多分他にも沢山あるのでしょう。


「ま、毎日のお食事は?ご一緒させてもらっていましたが、それって準備される方々の仕事が減るようにではなくて?」


なんてことっ!

実の親である母ですら、私と一緒に食べたく無くて一人部屋で食べていたのに、みなさんの優しさに甘えてしまっていました!


そうです!リカード様もあの美しい男性も高位貴族。ド平民の私が一緒に食事をして良い方ではありませんでした!


気が付かず一年半もご一緒してきたなんて…

お二人もみなさんもお優しすぎます!


もうすっかり母からの呪縛は解けましたし、一人でも大丈夫。

みなさんにしっかりお礼を伝え、寮に移動できるようにお願いしなくては!


「せっかく宮廷へ行くのですし、先生への謝罪、学校はまだ通えるのかの確認、寮の確保。あとはスキルの仕事の再開が出来るならさせてもらえたら、実家の管理を誰かにお願い出来るかもお聞きしたいわ。」




隣の宮廷へ踏み入れましたが、やはりいつもより人が少ない気がします。

廊下には人がおらず、緊急会議があちこちで行われている時のような緊迫感と人の少なさです。


「近々イベントが行われると言う話は聞いていませんし。この感じは何か緊急事態なのでしょうか。」


そう言う事なら邪魔をしては申し訳ありません。

いつもよりもさらに足音を立てないように、細心の注意を払いながら廊下を歩きます。


人員の配置やらを担当してくださっている部署の部屋の扉までピッタリと閉まっています。

閉まっている時は会議中の時や人に聞かれたくないようなデリケートなお話をされている時です。何か緊急の際はノックをして入室しますが、私の話は王妃教育をしてくださる先生方の行方を聞くことですので、緊急とは判断されません。


「ここは、また後で来ることにしましょう。」


学校や寮関係を取り仕切っている方々のいらっしゃる部署の部屋へ向かいましょう。

更に奥へ歩きます。


「どの部署の扉も閉まっていますね。中に人はいらっしゃるような気配を感じますが、音が全くしません。どう言うことなのでしょうか。」


会議の邪魔にならないよう、こっそり移動して目的の部屋へ到着すると、こちらは扉が開いておりました。


「失礼致します。」


「はいはーい!なんでしょうか?」


あら、見たことのない方だわ。

今回新しく就職した方なのね。

すっかり忘れていましたが、そう言えばそんな時期でした。

少し前にリカード様が飛び級して学校を卒業されましたからね。私が砦に行っている間に少し長い休暇が終わり、新たな門出があったのでしょう。


私ったら本当に自分のこと以外興味が向きませんのね。

でもそれなら卒業された方たちが抜けた寮に空きがあるかもしれません。


「あの。学校の寮の空きの確認をしてもらいたいのです。今年四年になるリアーナと申します。」


受付をしてくださるのはこの若い女性のままのようです。


「はーい。今年四年のリアーナさんですね?ええと、在籍してますね。進級おめでとうございます。寮は…女子寮のある北と西両方に空きがありますね。北は貴族の方が多いですから、平民のリアーナさんなら西が良いかと思います。西には新入生が多いですが、大丈夫ですか?」


ちゃんと席が残されているようでホッとしました!進級もできたようです。

西だとこの宮廷からは少し遠いですが、校舎へは一番近いので新入生には人気があるそうですし、問題ありません。


「西で大丈夫です。よろしくお願い致します。」


「では、こちらをよく読んで、サインを頂けますか?」


申し込み用紙には、部屋番号と部屋の間取り、契約内容が書かれておりましたので、じっくり内容を確認します。


ふむ。一年更新か卒業までの契約かチェックする欄がありますのね。

なら絶対卒業までです。


力強く卒業までの欄にチェックをいれます。


「ふふ。」


あまりに力強かったからでしょうか、笑われてしまいました。お恥ずかしいです。今後気をつけねば。


前回お借りしていたお部屋よりも大分こじんまりとしたお部屋。無駄なスペースはなく、安心できそうな間取りで大満足です。

広すぎると寂しさを感じてしまいますからね。


問題ないので『リアーナ』とサインを入れてお渡しすると、


「こちらが西1301室の鍵となりまーす。無くさないようにしてくださいね。」


と、鍵を差し出しながら、受付の女性は周囲をちょっと伺って手招きされましたので、近づいてお話を伺います。内緒話のようです。


「平民の部屋には時々盗難が入ったりします。大体が嫉妬からくるものなんですが、犯人がお貴族だと犯人特定には至りません。犯人が見つかれば弁償してもらえますが、特定されないと無くなってしまったものは買い直す必要があり、出費が嵩みますし、悲しい思いもします。そんな嫌な思いをする事もありますので、しっかり毎回鍵はかけて外出してくださいね?部屋にいる時も鍵はかけて、誰も部屋に入れないように。自衛できることはしっかり自衛するんですよ?」


リアーナさんは可愛らしいので、それだけで嫉妬の対象になりそうですし。と受付の女性が言ってくださいます。

宮廷役員の方はそう言った方が多いですね。

リップサービスの研修があるのか、それともそのスキルが無ければ採用されないのでしょうか。


今年はそれについてもどなたからか学びたいですね。


「教えてくださりありがとうございました。気をつけます。」


鍵を受け取りました。

盗難があるという話、寮にいた時には聞いたことがありませんでした。怖い事も起きていたのですね。


私がお話を飲み込んでいると、うんうんと頷きながらこの女性が続けます。


「他に何かありますか?」


親身に色々考えてくださるこの方ならと、実家が今空き家になっているので、扱いに困っていると話したところ、


「時々いらっしゃいますので大丈夫ですよ!学校へ行っている間空き家になる家は、申請さえしてもらえれば一時宮廷管轄になりますので、無料で管理されます。とは言え、時々空気の入れ替えがされるのと、保安隊の見回りが強化されるくらいですが。それでも問題が起きたことはありませんので安心してくださいね?実家の住所は書けますか?」


「まぁ!無料でそこまでしていただけるなら安心ですね!保安隊の方々が見回ってくださるなんて、ありがたいです!」


住所は書けますので、書類にしっかり書き込んで、こちらにも『リアーナ』とサインを書き入れました。こちらも卒業までの欄にしっかりチェックを入れました。


実家の管理が無料ならば、お仕事はせずに勉学に励みましょう!

飛び級して早く卒業して、就職したいです!


「ありがとうございました。」


と頭を下げていると、


「明日から新学期ですが、お引越しが間に合いそうになければ寮母さんに伝えてくださいね。寮母さん経由で学校に連絡が入りますので。」


と、追加情報をいただきました。


新学期…私は無断で学校を休んだことになっておりませんでした!

生徒会のお手伝いでみなさんがお休みの時にも学校に登校していましたので、すっかり失念しておりました!


部屋を出ると、私の姿が見えなくなるまで受付をしてくださった若い女性は手を振ってくださいました。

なんてフレンドリーな方なのでしょう!

色々と実のある時間でした!


残すは先生方への謝罪です。

もう一度そちらの部署へ回ってみましょう。




「まだ扉は開いていませんね。」


随分と長い会議ですね。

いつ終わるかわかりませんし、待っていて誰かに不審に思われても困ります。

寮の鍵もいただいたことですし、宮廷のお借りしている部屋に戻って引っ越しを終わらせてしまいましょうか。


お部屋に戻る間にどなたかにお会いするかもしれません。お会いできた方に説明したら良いでしょうか。




「終わってしまいました。」


引っ越しは滞りなく終わってしまいました。

荷物は元々少なかったので、一つは背負って両手にカバンを下げて。


「大変そうだね?」


と、声をかけてくださった男性の方がいらっしゃって、寮の入り口まで荷物を持ってくださったのには、大変感激してしまいました。


その男性は同じ年で実家の仕事の手伝いのため、一年休学していて今年復学したと、話してくださいました。


「同じ平民だし、学校で会った時にはよろしくね。」


なんて、言ってもらえましたよ!

私もお友達はおりませんので、お友達になっていただけたら大変ありがたいです。

でもできれば同性のお友達が欲しいです。


寮母さんともお会いすることが出来ました。

今年から新たに寮母さんとして雇われたようで、前の寮母さんと比べると若くて威厳はありませんがとても優しそうな方でした。


「困ったことがあったら、どんな小さなことでも相談に乗るからね?」


と言ってもらいました。寮母さんは人によって異なる対応をなさるのですね。

前の方は…


いいえ、比較するとか失礼です。


すっかり疲れてしまいました。そろそろお風呂が使える時間ですので、お風呂を済ませて夕食をいただきに行きましょう。


宮廷の部屋に戻るまで誰にも会わなかったので、部屋の机の上に『大変お世話になりました。ありがとうございました。リアーナ』と書いたメモを置いてきましたが、見つけてもらえたでしょうか。



明日から新学期。めちゃくちゃ楽しみです!

3話程度で終わらせるつもりで書き始めたリアーナちゃんサイド。どんどん動いてなかなか終わらせられません。

もうしばらく続きますが、どうぞよろしくお願いします。

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