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5.元護衛の男ガードン

「ああぁ!!リアーナ様〜!どこですかぁぁ!!」


自分の慢心から、未来の皇后様の護衛の任務を解かれ国境に飛ばされた俺は、トイレに行っている隙に居なくなった未来の皇后様を探していた。


国境に面したこの広い砦は迷路のようで、配置換えされてやってきて三日目の俺には、何処がどこに繋がっているのかまだ把握出来ていなかったし、知り合いだってほぼ出来ていなかった。


完全孤立と言っても良い状況の中、涙を流しながら走り回る。


「りああなさまぁぁ!!」


居ない…。

手当たり次第扉を開けて確認し、叫びながら見渡すが、どこを探しても見つけることができない。


突然開いた扉に驚く騎士たちはビクリと体を震わすが、知らない顔の俺を不審に思うだけで当然手伝おうと申し出てくれる者はいない。

知っている者であっても、王都から飛ばされてきた俺を“何かとんでも無いことわ、やらかした男“として認めてはくれないだろう。


何しろ現在もやらかしの真っ只中なのだ。


「なんでぇぇ…。どこぉぉ…??」


リアーナ様は王宮の別邸である、リカード王子の新居に住まわれており、護衛は常に二人、そして影と呼ばれる王国の諜報員が見守っているはずなのだ。見失うなんてあり得るのか?


そんなリアーナ様は未来の皇后となることはすでに決定されており、今はリアーナ様と結婚された者が次期国王になるのだと、噂されている。

つまり、リアーナ様ありきの王位継承なのだ。


リアーナ様は、国の要と言っても過言では無いのだ。

本人知らされてないけど…。


リアーナ様のスキルは二つ生えていると言う話だも耳にした。どちらもとても重要なスキルのようで、誰もどんなスキルなのかは知らされていない。知っているのはおそらく賢王と鑑定士、本人と家族くらいなものだろう。慣例に則り、リカード王子にも秘匿されているはずだ。


俺が思うに、『皇后』と『隠密』とか『ステルス』なんてスキルなのではなかろうか。と、現在進行形で思っている。


なんでちょっと目を離したすきに居なくなるんですかぁぁあ!!!


こうやって離宮からも消えたんだろうな。

影でも見失うだから、俺が見失っても罰則は無しにしてくださいよー!!!と心で叫ぶ。


「リアーナさまぁぁ!!」


ついでに、だんちょー!とも叫んでみる。


扉を開けて閉めて、叫び続けていると、前方から大きな体の男が走ってくるのが見えた。


「ガードン、どうした?」


この人は三日前自分の上司になったばかりの騎士団長ウィリアムだった。


「わぁぁん!だんちょー!!!」


俺はウィリアム団長の腰に巻きつき叫ぶ。


「探しててんですよぉぉ!どこにいらっしゃったんですかぁ!大変なんですよぉぉ!!」


「ええと…俺には愛する妻がいる。そんな縋られても応えてやれないのだが。」


「そんな的外れな返答はいらんのですよぉぉー!!」


「なら、離してくれないか?な?離れてくれ。こんな男所帯でこんな姿を見られたら、面白がられるだろう?」


ウィリアム団長は俺をベリッと引き離す。


「で、何があったんだ?報告はあるのか?」


騎士団長とは思えぬほどの穏やかさで語り掛けられる。騎士団長は元々賢王付きの護衛だったそうで、佇まいは高位貴族と変わらない。そうでなければ王様付きの護衛は勤まらないのだろう。


「リアーナ様が消えたんですっ!トイレに行って、王都への手紙を早馬にお願いしてる間に綺麗さっぱりとっ!」


「はあ!?何だって!?」


しゃがみ込んでいた俺をぐっと立たせた団長は尋ねる。


「で、それはいつ頃だ?どれくらい前だ?」


ざっと頭の中で計算して時間を弾き出す。


「はいっ!目を離してから二十分程度です!」


「まだそれほど経過していないな。それなら砦内の可能性もある。しかし、昨日受けた報告書からすると、ここを出た可能性を考えて捜査したほうが良いだろう。」


団長は少し考えると、壁にあるボタンを押して飛び出た漏斗状の金属に顔を寄せた。

砦全てに伝わる通信機、拡声器なるものだ。

この王国では、国境砦には必ず取り付けられているそうだ。ここにきて一番最初に教わった。


「全隊員に告ぐ!第一から第四隊は東西南北から中央に向かいリアーナ様の捜索!第五隊は国境付近の捜索!第六第七は国境から王都へ向けて捜査開始!副団長は情報整理だ!」


広い砦全体に伝わると、あちこちから声が上がった。


「「「リアーナ様が行方不明だってぇぇー!!!」」」


「「「探せぇぇぇーー!!探し出せぇぇえーー!!」」ー


「「「ぬぉぉぉぉーーー!!!」」」



突然砦にやってきた小柄の美少女リアーナ様は、リカード様と賢王に大切に囲われているため、護衛や騎士と言っても、その顔を見る機会はほとんどなかった。


王族が、リアーナ様本人に秘密にしていることが多いうえ、未来の皇后ともなれば見かけても容易に話しかけることはできない。自分たちから秘密の話がリアーナ様の耳に入ることは最大限気をつけなければならないのだ。


遠巻きに見た者たちが、リアーナ様は超絶美少女である。と、こっそり噂をする程度にしか情報がなかったのだ。


それが突然国境を越える他国の旅商人と現れ、たまたまそこに居合わせたガードンが気が付かなければ、そのまま他国へ流出していっただろう。


なんて恐ろしい…。想像したくない…。

そんなことになったらリカード様も賢王様も二度とリアーナ様には会えなかっただろう。


これを重く見た騎士団長は、断腸の思いでその場にいてリアーナ様に気が付かなかった団員をそこそこ嫌がられる罰、トイレ掃除やら風呂掃除、砦周辺の掃除など、掃除系を命じた。


リアーナ様に気が付かないのは絵姿は勿論出回っていないし、噂も軽いものばかり、名前が辛うじて伝わってきているくらいなものなので、当然と言えば当然なのだが、おそらくそれではリアーナ様にゾッコンなリカード様は納得しないだろう。


俺のやらかしですら国境に飛ばされるくらいなのだ。いや、あれは俺がよくなかった。


この掃除程度の罰則ではかなり軽いと言われるだろうが、何の罰則も無ければどうなっているのかと厳しく問われるかもしれない。


騎士団の雇い主は王族なのだ。王族の意に沿わないことが起きたとなれば、不敬罪だと首を刎ねられる王国があったという話を聞いた。

我が王国では聞いた事がないけど。


何かしらの罰則が必要だったのだ。



団長の放送後、


「「「リアーナさまぁぁぁ!!!」」」


と、叫びながら部屋から出ていく沢山の団員たちを見守る俺と団長。俺はついさっきの自分を見ているようだと思っていた。



軽い噂と名前しか聞かなかったリアーナ様が、突然男所帯にやってきた美少女と一致した時の団員たちの驚きと言ったらなかった。


皆一様に視線だけでリアーナ様を愛でていた。


自分の子供と同じくらいだと言って見守る者、自分の妹と同じくらいだと言って世話を焼きたがる者、未来の皇后と知って目に焼き付けようとする者。

横恋慕するなんて強者はどこにもいない。


たったの二日で、砦にいる全ての団員を虜にしてしまったリアーナ様は、初日に侍女がおらず、世話をするものが若い男とじいさんのどちらが良いかと尋ねれば、


「自分のことは自分で出来ます。お手を煩わせません。お気遣いありがとうございます。」


といって頭を下げて辞退するし、


風呂上がりにとても可愛らしい格好で砦を散歩する姿を晒した。

この王国の王族も貴族もそんな姿は見せないし、夜に安全とは言え砦を散歩するなんてあり得ないため、それに出くわした騎士たちは、リアーナ様が部屋に入る音が聞こえるまで、壁際に寄って石化したように動かずしっかり目を閉じたらしい。


翌日ここまでどうやってきたのかと尋ねれば、なんと保存食を片手に歩いてきたと言うではないか。

これには騎士や護衛といえど驚愕した。


騎士だってそんな無茶な移動はしないのだ。


たまたま動物にも悪人にも出会わなかったようだが、国境付近には精霊王様の加護が届きにくく、人に危害を加える野生の動物が出る事もあるし、亀裂が起きる事もある。

人攫いに遭うことだってあるのだ。

国境付近は男一人でも出歩かないし、出歩くなと規則にも書いてあるほどなのだ。


それを小さな少女が一人で歩いてやってきて、持ち物は保存食と靴だけ。水も持たずに暑い日差しが降り注ぐ中、どうしていたのか問えば、湧き水を見つけて飲んでいたと言うではないか!

煮沸もせずに飲んではダメなのだ!

騎士だって腹を下す者だっているのに!


驚いて医師を呼べば、逆に驚かれてしまう始末。



俺が上げたこんな報告書。

団長に提出したはずが、どうやって読んだか知らないが、読んだ者が涙ながらに他の団員へ内緒だが。と告げたら、あっという間に騎士団中を駆け回った。

内緒話しに戸は建てられないのだ。


ますます可愛がられることになったリアーナ様が、突然姿を消したとなれば、騎士団が集結して大騒ぎになるのは必須。


団長がした放送が、口火を切ったのだ。


「「「うをぉぉおお!!!」」」


ダダダと走り回って扉を開けては閉じていく団員たちを横目に、団長のウィリアムと二人で執務室へ急ぐ。


どうか見つかりますようにと祈る。


リアーナを見失った王宮の護衛たち三人は今どうしているのか。影は大丈夫か?

また護衛がここに飛ばされるのかな?

なんて頭の片隅で思いながら。



---



「何?それは本当か?それでは東側砦内にリアーナ様はいらっしゃらないということだな?トイレや風呂場も自分の目でしっかり確認したか?」


「いや、それは無理です!!自分たちでは確認できませんでしたので、食堂の配膳係の女性にお願いして確認してもらいました!」


副団長は、それもそうだなと納得して、本当勘弁してくださいよー!と騒ぐ部下を次の配置場所へ送った。


「自分たちの目で確認したなんてリカード様に知られたら、目玉をくり抜かれる可能性がありましたね…。」


ガードンがそんなことを呟くと、団長と副団長に心底驚いたという表情を向けられた。


「知らないようですのでお知らせしますが、リカード様のリアーナ様に対する溺愛は、見ていたこちら側こそが目玉を潰したくなるほどなんですよ?自分がこちらへ送られた原因も、リアーナ様をリアーナ様の実母から守りきれなかったがためなのです。」


「実母がどうしたと?」


副団長が恐る恐る尋ねてくるのでしっかり答えることにする。


「リアーナ様の実母である女性が、話していたリアーナ様にいきなり殴りかかってきたんですよ。」


「はぃぃ?」「へ?」


二人は顔からは想像できない声を出す。


「それも、もの凄いスピードで。グーですよ?グー。母親が娘を殴るなんて想像していなかった自分が百%悪いのは重々承知して、お助けする事ができなかったことは大反省致しました!しかし、女性が女性を殴るなんて見たことも聞いたこともなかったので、考えが及ばなかったのです。」


「うむ。」「確かに聞かないな…。」


頷いてもらえてホッとする。

自分だけがその想像が出来なかったのだと思っていたからだ。


「しかも暴言付きです。罵詈雑言です。女性三名で押さえつけてもその三人を引きずってリアーナ様に迫ってきてたんです。」


「そ、それは…。」「なかなかのホラーだな。」


でしょう?と、仲間を得た気持ちになってから、自分が情けなくなって気持ちが沈む。


「それでも、自分がその想像をしていたら、お守りする事ができたんですよね…。こちらへ即日配置換えされたのも、納得しています。あんなに小さなリアーナ様をお守りできなかったのは事実ですので。」


「そうか。」「報告書で読んだ以上の内容で驚いている。」


誰だ?その薄い内容の報告書を挙げたのは…。

新しく護衛に指名されたあいつか?あいつは俺の代わりに護衛に指名されて、俺を見てほくそ笑んでいたもんな。


悔しくなるが、リアーナ様はそいつらをまいてこの国境まで来たのだ。少し可哀想な気もするが、リアーナ様付きの護衛は、自分と似たような処罰を受けたのだろうな、と予測する。


この砦は十分人手が足りているので北側の砦へ左遷されたのかもしれない。あそこは寒いので人手が常に足りないのだ。


「そんな事が起きて、ガードンはここに飛ばされたと?」


「はい。」


「まぁ、そうは言っても護衛の仕事は全う出来ていないのだから、首にならなくて良かったんじゃないか?」


副団長は憐憫の目を向ける。


「とは言え、自分のその場にいたらお守りできたか謎ではあるが…。」


ですよねぇ!?という言葉は辛うじて飲み込んだ。

そんな共感を喜ぶ言葉を発したら、リアーナ様を気持ちで蔑むことになりはしないかと思ったのだ。


「そ、そんなわけでして!リカード様はリアーナ様を大変大切にしておりますので!リカード様も見たことのない姿を見てしまっていたら、遠方に飛ばされるだけでは済まなかったと思われます!」


「う、うむ。」「それは…解る気がする。」


「「え?」」


団長の言葉に副団長と俺の声が重なる。


「君たちはまだ心に決めた相手がいないのだな?俺には愛する妻がいる。リカード王子の気持ちはよく解る。どんな姿も誰にも見せたくないっ!」


熱く語り出しそうな団長を副団長は冷めた目で見ているのをガードンは見てしまった。


団長はいつもこんな感じか…

副団長はこれに慣れてるんだな。


ガードンはここにも溺愛者がいるんだな。気をつけなければ。と心に刻む。


相手が王子でも騎士団長でも、自分にとって上司は上司。同じ轍は踏むまい。


トントントン

部屋の扉がノックされ第四隊長が入室してきた。


「報告します!第四隊も発見に至りませんでした!」


「それは本当か?それでは北側砦内にリアーナ様がいらっしゃらないということだな?トイレや風呂場も自分の目でしっかり確認したか?」


先程と同じセリフを繰り返す副団長に、ガードンは、だからそれで見つかったらリカード様に目玉をくり抜かれちゃいますって!と心で伝える。


「はい!この目で確認致しました!」


「「「なんだと!?」」」


団長、副団長、ガードンの声が重なる。


「は?え?」


驚く第四隊長。


副団長、自分で聞いておいてそれはないだろう?とガードンは思う。


「いや、そうか。解った…。外の捜索隊と合流しろ。指示は第六隊長に仰ぐように。」


副団長は指示を出し、地図にばつ印を加えた。


「これで砦内全ての捜索を終えた訳か。」

「となると、やはり外に出たのか…。」


外はすっかり闇に包まれており、窓から外を見ると松明を持つ団員がちらほら見える。

入国の手続きを終えた商人たちでさえ無料の休憩所を使っている頃だろう。


これ以上の外の捜索は騎士団にとっても危険となるはずだ。

一時中断して、夜明けと共に再開することになった。


---


騎士団の偶数隊は砦内にていつもの仕事を。奇数隊がリアーナ様の捜索を続ける。

危険を避けるため夜明けを待ち国境から扇型に広がるように王都に向けて捜索が再開される。


「ガードン、リアーナ様は王都に向けて進んだと思って間違いないか?」


再三繰り返した問答だが、団長、副団長、ガードンは更に確認する。


ガードンは現在団長付きの秘書役を務めている。

何しろリアーナの情報はガードンが一番多く保有しているのだ。


「おそらく。この国境からホーネスト王国に入国する事は出来ませんから、国内側に戻ったはずです。ここからは王都へ向かうのが一番早いですし。元々学校が大好きなお方ですから、学校に通い直そうと戻った可能性が一番高いと思われます!」


リアーナは学校に通うことを何より楽しみにしていたはずだ。ガードンからはそう見えたし、オリビアもそう言って嬉しそうだった。


「よし!では、王都へ向けて捜索開始!第七分隊は昨夜捜索した国境付近も隈なく再度捜索するように!」


「「「「「はっ!」」」」」


第一、第三、第五、第七隊員たちは気合が入った返事をして散り散りになった。


「続いて早馬隊!この報告書を賢王様にお届けするように!」


「「はっ!」」


早馬隊は報告書を手に、厩へ走って行った。


「これで見つかると思うかい?ガードン。」


団長は少し不安そうな目でガードンを見つめる。


「可能性は半々と言いたいところですが、三分の一、四分の一あるかないかくらいかと…影でも見失ったようですし。」


「影!?影でもか!?」


副団長は王国の諜報員がリアーナ様に付いていたこと、影がリアーナ様を見失ってここまで来たことに異常に驚いていた。


「未来の王妃はほぼ王族。影がつかないはずがないぞ?」


団長も副団長がリアーナ様に影が付いていることを失念していたことに気がついて苦言を呈する。


「は、はい。ですよね…。しかし、そんな影の眼を掻い潜って外出し、歩いてきたり、他国の商人の馬車に乗り込んで国境までやってくるとか、リアーナ様はどんなスキルをお持ちなのでしょうか…。」


「「本当、それ。」」


一体どんなスキルを持っていたらこんなことになるのか。謎だ。


---



「見つからない…。」


情報処理を続ける副団長がついに項垂れてしまった。


リアーナ様が徒歩であれ馬車に乗り込んだのであれ、どちらでも見つかるように、王都へ向けて走るどんな馬車も必ず確認するように指示していた。亀裂が入った報告はないし、野生の動物に襲われたという人の報告もない。


「なぜ見つからないぃぃー!」


ダンッと地図にバツをつけたペンを握った拳をテーブルに叩きつける副団長。

ビクリと体を震わす団長と俺。


しかし、本当にリアーナ様は見つからない。

目を離したすきにリアーナ様が消えて四日。

早い馬車ならそろそろ王都に到着した頃か。


ガードンが送り出した早馬は昨日のうちに到着したはずだ。賢王たちはリアーナ様が国境で発見されたという早馬からの報告を聞いて驚いた事だろう。


捜索再開した初日に送り出した早馬は今日のうちに王都に到着しているはずなので、賢王たちはリアーナ様が消えたと聞かされて度肝を抜いているだろう。


未来の皇后が国境で見つかった。

翌日国境で見失い行方不明となった。


こんな報告を聞いて驚かない王族、重鎮はいないだろう。


あの冷静沈着、無慈悲冷徹な宰相ですら顔色を失っているに違いない。


「恐ろしい…。」


ガードンは背筋を凍らせた。




「お、落ち着け。落ち着かねば見落としが増える。他に見落とした事がないか今一度考えよう。な?」


団長は副団長をなだめ、恐怖で固まっているガードンを引き寄せる。


男三人で頭を突き合わせ、色々考えるが…

見落としなんてあるのだろうか…


リアーナ様の知らされていないスキルを上回るようなスキルを持った者がいなければ、打破できないのではなかろうか。


「騎士団に、探知や探索といったスキルを持った人が居たら良かったのに…。」


俺の呟きで、団長と副団長が顔を見合わせる。少しするとその顔色は真っ青に染め上がった。


「え?もしかして、居るんですか?そして、忘れていたとか、言わないですよね?」


「す、すまん…。」「すっかり…。」


なんといううっかりさん…

いや、平和ボケしすぎだろっ!


団長は慌てて拡声器へ顔を寄せてボタンを押す。


「第七隊副隊長!居たらすぐに執務室へ!」



しばらく待つと、第七隊の隊長が執務室へ慌てて入ってきた。


「失礼致します!第七隊、隊長のオランです!」


「あぁ、オラン。副隊長のハーディは?」


一人でやってきた隊長のオラン。呼んだのは副団長のはずだ。


「はっ!ハーディ副隊長はひと月の結婚休暇をいただいております!現在王都にいるはずです!」


「「そうだった…。」」


未来の皇后リアーナが行方不明とはいえ、団長^も副団長も忘れすぎじゃないだろうか…。


しかしそれなら、騎士団としての初期対応としては満点のままだ。報告書に追加せねばならない項目はない。


「仕方がない。変わらず報告を待つしかないな。オラン、持ち場に戻ってもらって大丈夫だ。」


隊長に言われてオランは部屋を出て行った。


「待つしかないですね…。」

「「あぁ…。」」


リアーナ様!どうかご無事で!!

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