敵と味方
【イツキサイド】
「…これで、君の記憶の事も、ノアの事も、能力の事も、ヒナちゃんの事も、理解してくれたかな?」
僕はレイに殴られた頬を擦りながらレイに笑顔を向けるが、レイはあからさまに嫌いオーラを発している。
今まで以上に嫌われてしまっているようだ。
「………はいそうですかって納得はしてない。…が、辻褄が合った………」
不貞腐れたような顔でそっぽを向く。
その顔、きっとヒナちゃんの前では見せてないんだろうなぁ。
「…これからは君もこっち側の人間って事で。時が来るまでみんなには秘密にしてて。あと、ノアの誤解は解いておいてね。」
「………ノアの誤解って…きっかけになったのが事実って………どうすればいいんだ……」
レイが動揺している。
幼馴染が幼馴染じゃなくて、何なら敵だし、仕方無いか…。
「じゃあ、僕がフォローしておこうか、僕はノアを育てたお兄さんみたいな存在だしね。」
「…っいや!お前はダメだ!ノアに近付くな!」
レイが警戒心丸出しで敵意を向けてくる。
傷付くなぁ………。
「…もう話しは終わりだよな?ノアのところに戻る。」
「とりあえず、今日のところは終わりだねぇ、師匠についてはまた今度時間作るよぉ。ノアが元気になったら、一緒に聞きにおいでぇ。」
先生は上機嫌でレイを送り出す。
レイは振り向きもせずに出ていく。
これ、師匠と戦うとか無理なんじゃ………。
僕が苦笑いしていると、先生がこちらを振り向き、訪ねてきた。
「で、どういう風の吹き回し?」
「………どうとは?」
「今まで沈黙を守っていた秘密主義者みたいだったのに、ノアに打ち明けた理由だよ。」
「………そんなの、簡単ですよ。」
「僕も、先生側についたって事です。」
僕がニコニコと手を振ると………
ヒュンッ!!!
「子供達に手を出したら、君から止めるよ。」
先生がメスを飛ばしてきた。
「先生、師匠の手先だからって、僕にだけ冷たいのやめて下さい。」
「師匠の戦争に賛同出来ないだけですよ。」
「それに、子供達を気に入ってるのはあなただけじゃない。『今は』先生達の味方です、安心して下さい。」
先生はため息をつきメスを拾い
「わたしは、こういった脅しは苦手なんだ、頼むよ…。」
と困ったように笑ってみせた。