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本来のヒナちゃん

【先生サイド】


 「ここに来たばかりのヒナちゃんの事、覚えてるかい?」

 「………いつも明るくて、家族の事、火事のこと…覚えてなくて…。」

 「…ここに来た時、ヒナちゃんは(すで)に覚醒していたんだ。」

 「………は?」

 「…あの火事で、両親の焼ける姿を見て、ショックで心を閉ざし、能力を自ら覚醒していた。そしてその能力で子供達を傷付け、手に負えない状態だったんだ…。」

 「そ、そんな…ヒナが…………」


 「そこでわたしは、ヒナちゃんの記憶を奪い、みんなの記憶を改ざんし、明るく元気な女の子であるという記憶を植え付けた。つまり、本来のヒナちゃんは…今のヒナちゃんなんだ。」

 「………もう、何処までが本当で、何処からが偽物の記憶か、分からないな………」

 レイは頭を抱えながら、苦笑いする…。


 「………ヒナちゃんを目覚めさせる為に、少し手荒な真似(まね)をしたのは、申し訳ないと思っている。だが、君達兄妹は(きずな)が強すぎた。そして眠ってしまったヒナちゃんの能力を目覚めさせるのは、そう簡単にはいかなかった。」

 「………ヒナに、何をしたんだ。」

 「ショック療法だよ、身内が、酷い目にあっているところを見てもらうっていうね…」

 「………お前、まさか………!」

 「そう、レイの覚醒術中の映像を、見てもらった。その後、麻酔(ますい)無しの手術を受けてもらい、本来の能力を取り戻してもらったんだ。」

 「………それ、正当な理由で許されると思ってるのか?俺が、お前らを許すと思うのか?!!!」


 バキッ!バキバキッ!!


 レイは、イツキに向かって1発、わたしに向かって2発のグーパンを食らわせた。

 1発は食らうと思っていたが、2発だった事にわたしは悲しんだ…。


 「ヒナの特殊能力を封じてくれた事は感謝するが、目覚めさせる為だとしても、その行為は一生許さないからな。」

 レイが睨む。


 「分かってるよぉ、けれど、ヒナちゃんに生き延びてもらうためだって事も、忘れないでほしいな…イテテ。」


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