双子ということ
【ウイサイド】
本当は、分かってた。
戦争が起きる事、誰も死なないエンドは存在しない事。
だって、あの人がそう言っていたから…。
でも大丈夫、わたしがお兄ちゃんを死なせないから、絶対に、何があっても。
2人で逃げようと思った事もあったけれど、特殊能力者には行き先なんてない。それに、望んでこの力を手に入れたんだ。
もう、自然に老いる事も、朽ちることもない。殺されない限り…。
この戦争が終わったら、お兄ちゃんと一緒にあの人の元に行って、2人で幸せに、平和に暮らすんだ。
もう傷付く事も、飢える事もなく…
だからお兄ちゃん、少しだけ辛いかもしれないけど…みんなの事は見捨ててね。
その為に、核の融合をさせなかったんだから。
事が済むまで…おやすみ、お兄ちゃん。
【ウタサイド】
ウイちゃんの考えてる事が分からなくなったのは、この施設に来てからだったかもしれない…。
それまでどうやってここに辿り着いたのかは分からないけれど…僕達は、路上で暮らしていた。
家を追い出されて、知らない大人に囲まれて…食べ物をくれたりした人も居たけど…食べた分だけ働けと言われ、労働力を提供していた…。
ウイちゃんは、凄く良い子のふりをしていた。
だから可愛がられて、僕の方が沢山働かされた。
ウイちゃんはそれでも僕の心配をしてくれたけど、僕にはそんな事出来ないって思ってたんだ。
だけどウイちゃんが連れて行かれて暫くしてから、突然人が変わったように大人びてしまった…僕は、取り残されたような気持ちになって、ウイちゃんを抱きしめて泣き喚いた…。
それから周りの人の目が変わった。
あまり感情を出さないウイちゃんより、僕を可愛がってくれるようになった。
僕はかつてのウイちゃんの真似をしてみた。
みんなに可愛がられるように、見捨てられないように…。
そうしている内に、それが僕になってしまった。
僕って、どんな子だったけ…
ふと、ウイちゃんに聞いてみた。
「ウイちゃん、僕って………」
「………お兄ちゃん?お兄ちゃんは、ウタちゃんって言ってるんだよ。」
………僕の変化に、ウイちゃんは気付いてしまったかもしれない。
気付いてて、それを見守っていてくれたのかもしれない…。
僕の妹は、とても鋭い…情けないお兄ちゃんで、ごめんなさい…。
「ウタちゃん、なんでもないっ」
「うん、お兄ちゃん、ウイがいつも側に居るからね…。」




