ヒナと先生
【ヒナサイド】
オニィチャンがノアに付きっきりだから、あまり邪魔したら悪いかなと、わたしは1人で居ることが多くなった。
寂しい感情はあるのに、表に出せない気がする。今までどう出していたのか、そもそも、ずっと出せていたんだっけ…
ナナちゃんもノアのストーカーしたりしてる。
ウイちゃんはウタちゃんとずっと一緒。
キラはイツキのストーカー。
じゃあ、わたしは何をしたらいい?
何をしたいのか、何をしたらいいのか、どうすべきなのか…
オニィチャンが居なければ、何も出来ない、分からない…
でも、オニィチャンの邪魔は出来ない…
ただひたすらに、花に水をやっていた。
「ヒーナちゃん、1人なの?」
クソヤロウが話しかけてきた。
「先生、じゃま…」
わたしはクソヤロウに水をかける。
「うわぁぁぁ~水かかっちゃったよー」
大袈裟に驚いているが、避けられる運動神経がないだけなのではないか。
「ね、ヒナちゃん、君の手術の事、レイには聞いたと思うけど…あのね、わたしはね………」
「うるさい」
わたしはもう一度水をかける、今度は顔面にかけてやった。
「…っうぼほぼぼぼ!!」
わたしが手術という覚醒行為を受けた理由、どうしてオニィチャンの手術を見届けなければならなかったのか、色々聞いたけれど…
1つどうしても納得出来ない事があった。
「…ヒナちゃぁん…もう全身びしょびしょだよぉ……」
クソヤロウは情けなくこちらを見てくる。
視界にも入れたくないんだけど。
「先生、なんでわたしの力を封じたの、どうせ開くなら最初から封じなければ良かったのに…」
そうしたら、わざとオニィチャンが手術中酷い事を受けなくて済んだかもしれないのに…
オニィチャンの手術は、わたしに見せる為に、わざわざカメラで録画して、出血も大量に仕込んだらしい…
わたしの為に、オニィチャンが………
物凄く腹立たしい。
「………あんまり、ヒナちゃんには、言いたく、なかったんだけど…聞いて後悔しない?」
「納得するなら。」
「納得するかは、分からないんだけど………あの頃、施設に来たばかりのヒナちゃんは、特殊能力を使って、周りの子供達を、攻撃していたの。」
「…それは聞いた。」
「………その中に、レイも含まれているんだよ………もう少しでヒナちゃんは、レイを殺してしまっていたかもしれなかった…」
「………………………」
「そんな事するわけないって思ってるよね?隔離すれば良かったのかもしれないけど…あの頃のレイがね、言ったの…ヒナちゃんが居なければ、俺は生きていけないって…きっと、火事で生き残った妹を守る、それが生きる目的だったと思う。」
「…オニィチャンの、生きる、目的…」
「そう…でも、ヒナちゃんは特殊能力を覚醒させたのに、火事のショックから自我を無くしていた…今より酷い状態でね…レイを攻撃し始めてから、どんどん酷くなって………レイは毎日のように治療しなければならなくて…それでも一緒に居たいって…見てられなくてね…」
「だから、ごめんね…封じ込ませてしまったの…」
「………わたしの、せい…」
「記憶ごと封じたから、ヒナちゃんは明るく元気な子でいられたの、それがレイの生きる希望になった、そして、今のヒナちゃんの感情としても育ってくれた………」
「オニィチャンの、希望…?」
「そう、今はレイもヒナちゃんに安心して、ノアの側についててあげてくれる。だからヒナちゃんも、自分の為に生きてほしい。わたしが言えた事ではないけれど………」
「………納得した。」
「…は、早いね…!でも、納得してくれたなら良かった!手荒な事してごめんねぇ…」
「…わたしも、クソヤロウって言ってごめんなさい…」
「…いいよいいよー!…………へ?クソヤロウ…?」
「先生、仲直りシマショウ」
「…えっ?う、うん…………納得…してくれたんだよね…?」
「ハイ、シマシタヨ」
「………な、なんか嘘くさく聞こえてくるような………」
「ダイジョウブーウソクサクナイー」
ビシャー!!!
「…ヒ、ヒナちゃーん!」
その場では、何となく納得するしかなかった…
………でもやっぱりムカついたから、水を上から下まで全部かけまくることにした。




