和解
【アイサイド】
まさかクローンでありながら移植者であるノアに第二次覚醒が起こるとは思わなかった、これではきっと、シンキとしては、喉から手が出る程欲しがる存在であろう。例えそれが、『ノア』の精神を持つ自身のコピーであったとしても…
「………して、ノアよ、体調の変化はないかのぅ?第二次覚醒者や移植者は、覚醒と同時に精神に混乱を招く事が屡々(しばしば)ある。精神の中で『ノア』と話してたと言っておったが…何か言われたのかの?記憶をもらったとは、どういった記憶か思い出せるかの?」
「…そう、ですね…少し身体がだるい感じはします。記憶も、実際に体験したというには、心許ないというか…まるで長編映画を見てきたような、一瞬で身体に流れ込んできた感じです…アイちゃんの事を、凄く大切に思ってたみたいです。ほっこりした感情が湧き上がってます。」
「………そうかの…恨まれてる訳じゃないんじゃな…外の世界について、何も教えなかった、わしも悪かったからの…」
「アイちゃんの忠告を聞かなかった事に対しては後悔してたみたいですが、外の世界を知れたこと、大切な友達が出来た事、楽しかった事は後悔してないようです。」
「あの時わしが助けに行けてたらの…申し訳なかった…。」
「アイちゃん、『ノア』は僕の中で生きてます、これからも生き続けてます、謝らないで下さい。」
「………ふふ、本当に『ノア』そっくりじゃの、困った事があったらわしらを頼るといい、ノアの力になるからの。」
「はい、そうさせて下さい。」
ノアは『ノア』にそっくりな、困ったような顔で微笑んでいた。
ルカも大分落ち着いたようでノアから離れると涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔を白衣で拭い、眼鏡を拭きながら笑っていた。
それを見守るイツキの、含みのある笑顔が少し気になったが、ここまできたら、わしらがノアを守るのは運命のようじゃった。




