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僕の中の『ノア』

【ノアサイド】


 何かが僕の中ので些細(ささやい)ている。

 『ノア、もう一人の僕、ノア』

 「君は…元の、『ノア』…?」

 『そう、僕はもう一人君だよ。』

 「………僕、生まれてきて、良かったのかな…君の存在を奪ってしまったみたいで…本当なら、僕の立ち位置(いち)に君がいたかもしれないのに…」

 『何を言ってるの、僕はもうとっくに昔に死んでいるんだ、君が居てくれたから、僕は存在(そんざい)出来ているんだよ。これから、僕の記憶(きおく)を君に(うつ)す。そうして君は僕に、僕は君になれるんだ。』

 「僕が、君に…?僕は消えるの…?」

 『正確(せいかく)には、今の君に、昔の僕の記憶(きおく)が残るだけで、僕が消えるんだ。』

 「………君は、それでいいの?君は生きたいんじゃないの?」

 『僕は、君が気に入っているんだ、君がこれから()す事を、見届けたいんだ。』

 「僕は君の期待(きたい)(こた)えられるか、分からないよ…」

 『今はそれでいいよ、君がやりたいことはきっと、僕のやりたい事でもあるからね。自信を持って生きていってほしい。』

 「………うん、分かった、やってみるよ…」

 『あ、それから1つ君にお願い事。(たの)まれてくれる?』

 「君の(たの)み事なら、絶対(ぜったい)引き受けるよ!」

 『………ありがとう、君には(たの)(づら)い事だったんだけど、これは僕の、最後の意思(いし)だと思って聞いてほしい。もし、今後(こんご)、シンキとルカが………なったら………その時は、君が………して………あげて………僕が………シンキと……ルカを………』

 「……え?待って、よく聞き取れない…!『ノア』、待って………!」

 『…それじゃ、(たの)ん………』


 「………ノア!ノア!おい!大丈夫か…?!!」

 目を開けると、目の前にレイが居て、僕の(かた)()さぶっていた。

 「………ん、レイ…?あれ?『ノア』は?僕何してたんだっけ…」

 「………はぁーーー…お前、突然(とつぜん)光り出して、光が無くなったと思ったら立ったまま寝てたんだ、流石(さすが)(あせ)ったぞ…?」

 「そ、そうなんだ…?ごめん、あんまり覚えてない…なんか、『ノア』と話してた気が…あ!なんか、『ノア』の記憶(きおく)をもらったんだった!あんまり、実感(じっかん)がないんだけど…………うーん…」


 「………素晴(すば)らしいのぅ!」

小首(こくび)(かか)げていると、アイちゃんが少し興奮(こうふん)したように声を(あら)げた。

 「第二次(だいにじ)覚醒(かくせい)をした子はアール以降(いこう)初めてじゃ!しかも移植者(いしょくしゃ)がするとは…前代未聞(ぜんだいみもん)事態(じたい)じゃ!」

 「………ぇ?第二次(だいにじ)覚醒(かくせい)?」

 「そうじゃ!自分の容姿(ようし)を確認してみぃ!」

 アイちゃんが何故か自慢気(じまんげ)姿見(すがたみ)の前に僕を押していく。


 姿見(すがたみ)に映った僕の姿は…大きな羽根が4枚になり、髪が床についている程伸びきっていた……


     挿絵(By みてみん)

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