たった1人のノア
【先生サイド】
「………僕が、『ノア』………」
「待ってくれ!それじゃ、ノアは、無理矢理『ノア』として作られたみたいじゃないか!!」
「その通りじゃ。シンキは、『ノア』が殺された事で、その復讐の為に戦争を起こそうとしている。例え、『ノア』が復活したとしても、ノアであって『ノア』でない存在を、完璧な『ノア』に仕立てる為に…。」
「そんな…命を、ノアを弄ぶような………」
「……そうじゃ、そんな事許される訳が無い。昔がどうであろうと、今のノアを否定出来る訳が無い。ましてや昔の記憶なんて持ってない者を………過去に囚われて自分の理想を押し付けるなんて…人間としてやっていい事ではないからの。」
「ノア、お主はお主じゃ。過去がどうであろうと、今のノアはお主1人じゃ。周りを見てみると良い、お主を好いている者は今のお主を見ておるのじゃ。前を向いて、友と共に歩んで往くのが正解じゃ。」
「……僕の言ってほしい事、全部言ってくれるんですね…」
ノアが弱々しく微笑む。
「俺が知ってるノアは1人しか居ないからな!」
レイがノアの手をギュッと握る。
「……うん、ありがとう。」
ノアもそれに応えるように握りしめた。
レイの氷の能力も操作に慣れてきたらしい。
アイちゃんはまるで側で見てきたかのように語ったが、そんなはずはない、あの頃、側には居なかったはず…
やはり、アイちゃんは凄い人だ。
「……もう1つ、聞いてもいいですか?」
「…『ノア』の死因じゃの。」
「はい、さっき、殺されたと…」
「……『ノア』は人間達に、殺されたのじゃ。」




