本体と、コピー
【ノアサイド】
イツキに指定された場所までは、夜中に飛んで行く事で早く着く事が出来た。
流石にこんな羽根で街中歩けないし…
僕は苦笑しながら、畳めない羽根を少し恨めしそうに見つめた。
それにしても、施設から出たのは初めてではないにしろ…世の中は電気で溢れていた。
夜中でも煌めく街中、出歩く人々、こんな世界だったんだと、僕はまるで普通の少年に戻ったかのような高揚感に包まれていた。
けれどそれは平和な世界の一環で、こんな世界に戦争が始まるなんて、思ってもいないだろうなと…行き交う大人達を上空から眺めていた。
山奥の廃病院みたいなところに到着すると、中から僕そっくりの人物が出てきた。
「…やぁ、ノア。久しぶり。その姿で会えて嬉しいよ。」
僕より年上に見えるその人物は、ニコリと笑い、手を差し伸べてきた。
「えっと…すみません。もしかして、師匠さん、ですか…?僕の本体の………」
「…あぁ、記憶は戻ってないんだね、知識だけは取り戻せたのかな?」
「はい、まぁ………テレパシーは、受け取りました。」
「そうか、君からの返事はなかったから受け取れてないのかと思っていたよ。けれど、君がここに来たということは、イツキはちゃんと働いてくれてるようだね。」
「イツキから、ここに来るようには伝えられましたが…僕は今の生活を気に入ってます…!あなたの戦争に、みんなを巻き込まないでください!」
本体はそんなに強そうではなく、何なら僕そっくりの弱々しい印象なのに…何故か本体からは強い威圧感があり、僕は精一杯、強がって意見を述べた。
もしかしたら、少し、震えてしまったかもしれないくらいだった。
「……は…ははは、何を言い出すかと思ったら………これは僕の戦争じゃないよ、君の為の戦争じゃないか…!」
本体がさも面白そうに笑いながら、けれど目は笑わずに告げてくる。
「………え、僕の為の、戦争って………」
「…ノア!それ以上聞くな…!」
突風と砂煙が上がり、氷の矢が本体の足元にささる
「………っ!!!」
本体が動揺すると共に、目の前に氷のボウガンを手にしたレイが現れた。




