師匠の敵
【先生サイド】
そうして彼が裏切るのもあっという間だった。
彼は天使として人間達の前に舞い降り、師匠とわたしが、人間側に謀反を企てていると、人間達に知らせたのだ。
最初から、わたし達を危険因子として見ていた彼は、記憶操作なんかされていなかった。
平和ボケさせて、一気にカタをつけるつもりだったのだ。
裏切られた師匠は真っ向から対立し、彼を撃つ作戦まで立てていたのに…彼はその命をあっさりと人間達に奪われてしまったのだ。
人間達にとっては、彼すらも脅威だったのだろう。
師匠と協力して彼の亡骸を奪還後、彼の核を取り除き、師匠のクローンへと移植する。
ここまでは順調かと思いきや…人間達が爆弾を投げ込み、わたしを守り、師匠は死んだ。
その後逃げ延びたわたしは師匠の敵を!と思っていたのに、師匠は生きていて、裏切った彼の為にまだ戦争を重ねようとしている。
当初の目的であった、わたし達特殊能力持ちの為ではなく、彼だけの為に………。
わたしは子供達と触れ合う過程で、師匠の思想とはかけ離れた思想を持つようになった。
彼の思想には寄り添えないが、今なら分かる。
彼にも、親友と呼んだ者以上に、守りたいものがあったのだろう。
わたしにも、師匠以上に大切な存在が、沢山居る。
師匠と人間との戦争で死なせる訳にはいかない。
そして、師匠の送り込んだクローン、親友だった彼の核を持つ、ノアの為にも。
ノアという名前は、生前の彼のものだった…
師匠が、親友であった彼『ノア』に固執している以上、きっと戦争は起こる、人間達に、復讐するために………
もう、これ以上可哀想な子供達を作ってはいけない。
わたしは師匠との思い出を捨て、子供達と共に生きていく。
師匠、次に会ったその時は、わたしは師匠の敵でしょう………。




