師匠のクローン【回想】
【先生サイド】
わたしは師匠の事が好きだった。
当時のわたしはまだ幼くて、師匠が世界の全てだった。
だから師匠の戦争も、師匠の思想も、全てが正義でわたしの命すらも師匠のものだった。
ーーーー回想ーーーー
「師匠ー!今日は何するんですかぁ?」
「…ん?ルカ君か、今日はね、クローン体の実験をしようと思ってね。」
「師匠の生み出すクローン体は不思議ですね~肉体年齢も精神年齢も個別過ぎて…まるで本当に人間を生み出してるみたいです!」
「はは、それは褒められてるのかな?」
「褒めてます!だって師匠と酷似してるのに教育さえしっかりすれば同じにも別人にも出来るって…やっぱり師匠は凄いですね!」
「流石に同じには出来ないよ、面倒だし、何よりオリジナルは1人で十分だからね。」
師匠は自身のクローンを生み出し、その個体に教育や実験を繰り返していた。
時には幼い何も知らない無垢な子供に。
時には年老いた老人に。
性別までは変えられないけれど、自分の肉体の成長過程で通過するもの、通過したものまでは作ることが出来た。
わたしはその実験を間近で見てきた。
命乞いをする幼い師匠に、最初こそは可哀想と思っていたのに、その内そんな感情も沸かなくなるどころか、同じく実験を手伝うようになっていた。
師匠は必ず、核の存在を気にしていた。
クローン体でも核を持つ個体と、そうでない個体、適正な個体、そしてその核を取り除いた後の個体と、核の保存状態。
師匠は、クローン体が殆ど核を持たない事、持っていたとしても何の力も持たなかったり、保存が出来なかったりと自身の能力の非力さを危惧していた。
今思えば…わたしの能力が、記憶操作なだけあって師匠のクローンを教育するのに適していたため、側に置かれていたのかもしれない。
そんな時だった、特殊能力者である彼と出会ったのは………。




