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無双がフタリ  作者: 片喰
7/49

無双がフタリ⑦

<続5 天使のヤサシサ>

「やめろ。」

         ○

 しょーがない。あーんな珍しい人、死なせたく無いし?

         ○

 純黒の双眸には、ありとあらゆる色が混在していた。光と闇が、混沌とあった。

 天邪鬼が愉愉の目を見る。愉愉には、天邪鬼が見えない。

 やがて天邪鬼の丸い目に、悲しみと諦めが滲む。

「ほどぉがまぁやぁああ。」

「動くな。」

「りぃまあいうえるあぁまあ。」

 ゆっくりと、噺に幕を下ろす様に、天邪鬼は地に頭を付けた。愉愉へ。そして天邪鬼は、自分で自分の頭を捻りもぎ取った。

 地面に大量の血が流れて行く。

 沈黙が続いた。その後で、新月が口を開く。

「……おわった、愉愉。仕事は終わった。」

「…ああ、そうですか。」

 愉愉はふっ、と息に吐いた。

「じゃあ、今度こそ帰りますか。あ、新月さん怪我は大丈夫です?って、大丈夫じゃないですよね。」

「大丈夫だ。もう治った。」

 愉愉は新月の足やら腕やらを見、

「本当だ、凄いですね。」

「ただの体質だ。」

「皆さんは?大丈夫ですか?」

 すぅと、愉愉が香路島達に目をやる。

 途端、香路島達は煮えたぎる様な強い感情に困惑した。畏怖。敬愛。独占欲求。凄い。恐い。愛してる。美しい。見て欲しい。

 この方が喜んでくれるなら、何でも出来る。

「…。」

 僅かに眉を歪め、愉愉は目を逸らす。呪縛が解けた様に感情が自分のものに戻った。

 香路島は無理矢理肺に空気を詰め込んだ。

 こいつは、本当に何者なんだ?と、愉愉を見るが、答えは、見つからない。

「愉愉?どうした?」

 きょとんと新月が愉愉を見た。愉愉は新月だけを視界に入れて答えた。にっこりと。

「え?なんでも無いですよ。」

 空にはいつの間にか、鈍色の曇が拡がっていた。

 愉愉は、紫のヒヤシンスが描かれた紙を地面に置いた。紙はすぐに邪物の血に染まった。

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