無双がフタリ④
とある少女は眠る前に日記を書く。
<華読の手記より一部抜粋 其の一>
今日は日本国の神話についての本を読んだ。古事記と言う名。日本語の現代語は風世飲帝国の言葉に似ていて、現代語訳された古事記は比較的とっつきやすい。父上も、だから、わたしに教える最初の異界語に日本語をお選びになったのでしょうね。
古事記でわたしが面白かったのは、天照大御神様が天の岩戸に隠れられたときの話。沢山の神様が人間の宴会みたいにお騒ぎになってるなんて、考えただけで笑ってしまう。天照大御神を出すためにそうしてらっしゃる、と言うのも嫌々行く会社の飲み会みたい。日本国のさらりーまんは、そういうことをしているらしいわ。
面白いのでは全く無いけれど、印象深かったのは、国生みの話。伊邪那岐命様と伊邪那美命様が日本国の土地をお作りになる。だけど初めにお生みになった水蛭子様を、両親である二神はお捨てになる。お体が小さかったからと書くものも、骨が無くお歩きになれなかったからと書くものもあったが、水蛭子様のその後を書くものは無かった。
そして、二番目にお生まれになった淡島様もまた、丈夫なお体ではなかったらしい。そのため、子の数には入れない、という記述がある。
数には入らないが手元に置かれるのと、捨てられるのと、捨てるのと、その家庭で全てを見ながらも両親に認めらるのと、どれがましなのだろうか。
兄上のことを思い出して、記録にならないので今日はもう寝る。
安らかなる未来を、神々と我等に。




