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無双がフタリ  作者: 片喰
22/49

無双がフタリ㉒

北欧神話には、ロキという名の者がいた。

<北欧の神々の過去 其の一>

「ロキさんは、どうやって愛受得さんと仲良くなったんですか?」

 おずおずと切り出した相手に、ロキは口笛を吹きそうになった。

「どうして?君、あいつが気になるのかい?」

「はい。仲良くなりたいんです。でも、あんまり気軽に話し掛けられるタイプじゃないし…。」

 ロキは大仰なくらい腕を広げる。

「そんなこと無いよ!うんうん、楽しそうだ。私が教えてあげるから、今度話し掛けてみな。」

「ありがとうございます!」

 愛受得は自身の体質を気にして、あまり他者と関わらない。話し相手はロキくらいなものだ。ロキはそのことを常々どうにか出来ないかと考えていた。そこにこの話。まさしく渡りに船。

 ロキは相手を改めて見やる。超絶美人、うんうん、我が愛受得に十分釣り合う奴だ、全力で手伝ってやろう、とロキは思った。

 その言葉を、聞くまでは。

「ぼく、あのひとの全部を手に入れたいんです。」

 恍惚と輝く目。微笑んだ口元は明らかにぼんやりとしていて、自我が無かったと言われても何等不思議でない。

 いっそ自我が無かったと言ってくれた方、ほっとしただろう。

「愛受得の、全部が欲しんです。」

 ぞっと、した。

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