無双がフタリ㉒
北欧神話には、ロキという名の者がいた。
<北欧の神々の過去 其の一>
「ロキさんは、どうやって愛受得さんと仲良くなったんですか?」
おずおずと切り出した相手に、ロキは口笛を吹きそうになった。
「どうして?君、あいつが気になるのかい?」
「はい。仲良くなりたいんです。でも、あんまり気軽に話し掛けられるタイプじゃないし…。」
ロキは大仰なくらい腕を広げる。
「そんなこと無いよ!うんうん、楽しそうだ。私が教えてあげるから、今度話し掛けてみな。」
「ありがとうございます!」
愛受得は自身の体質を気にして、あまり他者と関わらない。話し相手はロキくらいなものだ。ロキはそのことを常々どうにか出来ないかと考えていた。そこにこの話。まさしく渡りに船。
ロキは相手を改めて見やる。超絶美人、うんうん、我が愛受得に十分釣り合う奴だ、全力で手伝ってやろう、とロキは思った。
その言葉を、聞くまでは。
「ぼく、あのひとの全部を手に入れたいんです。」
恍惚と輝く目。微笑んだ口元は明らかにぼんやりとしていて、自我が無かったと言われても何等不思議でない。
いっそ自我が無かったと言ってくれた方、ほっとしただろう。
「愛受得の、全部が欲しんです。」
ぞっと、した。




