無双がフタリ⑰
<華読の手記より一部抜粋 其の三>
ようやく北欧神話を読み終えた。難しいところも多々あったが、同時にとても興味深くもあった。
中でも、ロキという人はとりわけ興味深く不思議な人だ。いや、"人"と書くのは語弊があろう。ロキは人間ではないのだから。ロキは神々の敵たる巨人の血を引きながら、オーディンという神の義兄弟として神々と住む者。元は火を神格化していたようだ。
ロキは、邪悪とさえ言えるほどの悪戯好き。そして性別不明で、私には少し不気味に感じる子供達の、父にも母にもなる。
神話の序盤は困った悪戯好き程度だったため、途中で驚いた。バルドルという美しい光の神を、その兄弟神のヘズに殺させたのだ。しかも、それを神々の宴で彼等への罵倒と共に話した。そのためロキは地底に閉じ込められ、頭上からは毒が垂れ、ロキを苦しめたそうだ。その毒は、いつもは妻が器で防ぐが、いっぱいになった皿を代えるときにロキに当たり、ロキを激しく痛めた。
結局、世界の滅亡のときであるラグナロルでの神々と巨人の戦いで、ヘイムダルという神と相打った。
自ら赴いた神々の地で、しかし不満と苦痛を感じていた理由が、なんとなくだが私にも分かる。でも、そんなことを言う資格は私にあるのかな。
今日の分はこれでお終い。もう寝る。
安らかなる未来を、神々と我等に。




