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夏のホラー2023『帰り道』

タクシー

作者: 家紋 武範

 俺はタクシーの運転手だ。先ほど、会社帰りのOLさんを拾った。

 なかなか美人な人で、とても良い香りがする。お友だちになれたらいいなぁと思った。


「運転手さん、大山方面」

「はい、かしこまりました」


 大山方面か。この街場(まちば)から離れて田舎の山のほうだ。集落もポツポツとしかないような場所だ。結構稼げそうだな、と思っていた。

 彼女は電話を取り出し、なにやら話し始めているようだった。


「あ、課長ですか。今終わりまして、施錠して出ました。はい、はい、お疲れさまでした」


 仕事の終わった報告か。電話の前でもお辞儀している。とても好感が持てた。


 しかし、次の電話──。


「M@Παη都⑪升κΔ₩∂殻Иα鋳琴♭︎Åデ$υ──」


 それは男の声……。私はぎょっとして、室内ミラーで彼女を確認する。やはり女性だ。

 そして電話の内容。中味がまったく分からない? かなり偉そうだった。ボス的な存在。彼女が?


「運転手さん」

「は、はい!」


 思わず声が上擦る。呼ばれた声は最初の女性のものだった。私の背中に冷たいものが流れる。


「タクシーには守秘義務があるわよね?」

「え、ええ。お客さまの話や情報は外部には漏らしません」


「ならよかった」


 その言葉を背に受けて、車は街を離れて郊外へ。やがて大山方面の山の中に入って行く。彼女は集落がない道のほうを指示した。

 道には木の葉が落ちて、しばらく車が走った形跡がなかった。

 私は不安で彼女に聞いた。


「こ、こんなところに家があるんですか?」

「ふふ。もうすぐ目と鼻の先よ」


 その声は野太く、男とも女とも取れない。私は息を飲んだ。


 もはや山道で、街灯もない。車のスピードは徐行ほどである。何かあったら車を方向転換出来ない場所だった。


「お、お客さん、無理です。これ以上は……」

「ああそう。なら仕方ないわね」


 私は車を停めて、彼女を下ろそうとしたが、彼女はまた電話を始めた。


「食事の時間だ」


 それはまるで怪物のような声。私は震えて振り向けないでいると、外には彼女と同じ顔のスーツ姿のOLさんが何人も何十人も──。


 無線は!?


 しかしなぜかそこには無線機がなく、運転席側の女の手の中にある。

 そして助手席側のドアが音を立てて破られ──。

 途中の訳の分からん誰かとの会話は、「まあなんといいますかわからないことばです」と、漢字とローマ字の組み合わせです。その他に意味はないです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 美人さんの山盛り、羨ましいですね、運転手さん。 同じ顔なら互換性も抜群! ラストのキレの良さで、幸せな彼の今後がしみじみと伝わってきます。 [気になる点] 何もありません。 [一言] 山に…
[良い点] ああああ、途中まで、てっきり「運転手の名前は夜明日出夫、元刑事」 な展開になると思ったのにぃぃぃぃぃ! ……うん、すんません、二時間ドラマ脳で……(T-T) この先は、やっぱり「お…
2023/07/31 23:25 退会済み
管理
[良い点] 食事の時間。 それも何十人にも……。 このあとのことを想像すると、戦慄が走ります。
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