なにそれ美味しいの?
前書きなんてそんなしょーもないものないぞ?
窓から見える景色はとても澄んでいて雲一つない。
薄い白線がいくつか伸びていて気持ちが良さそうだった。
ただ、僕の体はひどく苦しく、上半身は形を失うかのような痛みだった。僕は死を直感した。万年床の布団は随分前から異臭がするし布団の隣には投げ捨てられた使用済みのティッシュ。
ああ、こんなくだらない最後を迎えるのかと虚しくなった。
明日の朝、僕は誰かに発見されるだろう。職場の上司が無断欠勤に対して意気揚々と電話をしてくる。でも僕は出ない。不審に思った上司は警察に…
そんなことを妄想しつつも体はどんどん苦しくなる。何年か前に狭心症と診断されそれ以来いくつか薬を飲んでいたがアドヒアランスが悪く、机の上には散らばった錠剤が見える。
死ぬのは別に構わない。そう思った。でもこの部屋の汚さ、タンスのなかに隠したアダルトビデオ、いつかは関係を持つと思っていた女の子の写真、そんなものは死んでも見られたくない。
走馬灯とは違う、過去への後悔と悔しさで涙が出た。そうしている間にもどんどん苦しくなる。僕が死ねばこれは孤独死だ。独居老人の孤独死は悲惨だと聞く。だが、僕の孤独死も別に変わらない。死んで、腐敗し、液体が漏れ出し。最後は同じところに行き着く。
28歳。短い人生だった。でも十分な人生でもあった。何かを成し遂げるには十分な、時間が僕にはあったはずだ。
まず、親の顔が浮かぶ。それから兄弟、大好きだったあの子、友達、それから愛猫、あ、でもあいつらはもうあっち側だったか…、じいちゃんばあちゃん…。
ちょっとずつ意識が途切れて行くのがわかる。なんとも言えない感情、絵の具を垂らしたバケツみたいな。接続が切れるように…みん…な、さよう…な…ら、
ブツん。
岬吉佐美 独身男性 享保28年 心筋梗塞にて自宅アパートで死亡。
あったらいいな、あとがき。でもこれはただの落書き。なりたくねーぞクソガキ。