~序章:無為な日々~
「あぁ・・・つまんねー」
俺は「りゅう」とでも言っておこうか・・・
18歳になったばかりの所謂「ひきこもりニート」だ・・・
中学校に上がったころ、ひょんなことから学校に行けなくなった。
別にいじめられたわけでもないし、学校の成績が極端に悪かったわけでもない。それなのに、学校に近づくと急に体調が悪くなるという日が続いたんだ。
それでも、最初のうちは、週に1回くらいは学校に行こうと努力はしていたんだ。でも、それでも行けない日が続き、数か月も過ぎるとそんな努力すら、する気が起きなくなったんだ。
タイミングが良かったのか悪かったのか、当時世界中で未知のウイルスが蔓延し、学校の授業も雪崩式にオンラインになった。俺は、ここぞとばかりにタブレットを学校につなぎつつ、画面の外ではゲーム三昧という日々を送ることになった。
当然、成績なんて上がるわけないし、上がったのはゲームの世界ランキングだけという結果だったけど、親父はそれなりに収入のあるサラリーマンだったし、母親は家事だけは得意だったから、不満もないけど、特に充実感もなく、その日その日を過ごしていたんだ。
高校は一応受験したけど、勉強なんてしてないんだから当然行けるところなんてたかが知れてるし、別に俺は喧嘩が強いわけでもなかったから、1か月くらい在籍してすぐに退学したんだ。
さすがに母親が泣いたときには少しだけ心が「チクッ」としたけど、別に俺が退学したからと言って、その日の飯に困るようなこともないから、最終的には「ま、いっか」って思ってた。
ただ、親父は違った・・・
高校を退学してきた日、普段は遅くまで帰ってこない親父が珍しく早く帰ってきた。
やつは、俺の部屋のドアを開けるなり、
「お前には失望した。努力すらしないのであれば、法律的にお前が成人してからは面倒を見る気はない。18歳の誕生日までに俺に努力を見せるか、この家を出ていくかどっちかにしろ」
って言い放ったんだ。小学生の頃も、中学校に進学して不登校になった時も「出ていけ!」って言われたことはあったから、「どうせ今回も同じだろう」と大して気にも留めなかったのだが、それが大きな過ちだったと気づくまで数年しかかからなかった。
明日で18歳になるという日(昨日だ)、俺は再度親父に呼び出された。
親父の部屋に入ると
「2年前の約束は覚えているな。24時に放り出すのは忍びないから、朝10時まで待ってやる。それまでに荷物をまとめて出ていけ。それ以上この家にいるのであれば警察に引き渡す」
って言われたんだ。「あ、やべっ。親父マジだ。」って思ったけど、すでに遅かった。せめてもの抵抗に、
「働いてもいないのに、俺に野垂れ死ねっていうのかよ!!俺に出て行ってほしければ支度金として100万円よこせよ!それだったら出て行ってやるよ!」
って言ったんだ。親父は、『これ幸い』とばかりに、俺の目の前に帯封のついた札束を1つおいて、
「これで満足だろ。男だったら自分が言ったことを軽々しく撤回しないよな。」
と冷たく言い放ったんだ。
『うわぁ、親父、ここまで読んでたのかぁ』
ってちょっと焦ったけど、よくよく考えたら、100万もあればしばらくどこかで生活できるし、バイトでもしながら今後のことでも考えようと、自分の部屋に戻り、荷物の整理を始めることにした。
----翌日----
俺は100万円と、ゲーム機と、家にあったカップ麺とかを持てるだけもって、家を出た。行く当てなんてないから、公園のベンチに座り、とりあえずネカフェを調べることにした。
「意外と高いなぁ・・・」それが俺の最初の感想だった。
ずっと引きこもっていたから、ネカフェなんて行ったことがなかったけど、さすがに最初から無駄遣いをするわけにもいかず、ネカフェは夜だけにして、図書館にでも行こうかと思ったんだ。その瞬間・・・俺と同じくらいのやつが俺のリュックをもって猛ダッシュしていきやがったんだ。
「まてぇ!!」
俺は全力で追いかけたけど、ずっと引きこもっていたせいか、全く追いつかない。息も上がってきた・・・でも、そこには俺の「命よりも大事な」ゲーム機と、何せ100万円も入ってるんだ。こんなところでしょっぱなから無一文になるわけにはいかない!
相手が曲がっていった方向に向かって、必死で走り、曲がり角を曲がったその時だった・・・
「あ・・・」
よける間もなかった・・・直進してきた車に飛び込む形になった俺は、そのままボンネットに乗り上げ、最後に目に入ったのは、ハンドルを握ってものすごい顔をしてこっちを見ていた女性の顔だった。
そして、俺の18年に渡る人生はここで終わることになった




