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スーツ第四話(原発交付金の闇)

第四話


不思議なことにその日をさかいに悪夢は終わりをつげる。

夢の中で二度と道浦公さんを見なくなっていた。

翌日、約束の時間9時前に俺の姿は寺尾中央交番にあった。

高橋巡査、岡崎巡査、両人の姿と共に。

同じ質問と押し問答。

俺も巡査達も一歩も引かない。

テレビニュースで映っていた 道浦公さんが木陰で横たわっていたとの問いに、

高橋巡査は「貴方が第二公園でスポーツドリンクを飲んだ直後に倒れたとの通報があり、二人と、一応何か薬を飲んだのかもとの疑いもあり、鑑識官も一緒に現場に急行した。事件性がないとの鑑識官の話で、倒れた貴方を第二公園近くの救急病院の第二湾岸病院に救急車で運んだ。十条タケシ医院長に詳しい事を説明したが、聞いていないのか。」

こんな内容だったか。

結果は同じ。

その後は、製薬会社としての業務をこなすだけの毎日。

次第に事件?のことを忘れかけていたある日、唐突に、俺の前にそれは姿を表した。

「週刊月光」の表紙にそれは語られていた。

「スクープ、原発交付金の闇。 自由の党幹事長 八神徹氏のお膝元、土狩とがり原発を抱える、福潟県柏原町では地元の体育館建設の入札価格において、事前に入札金額が地元の大手建設会社 大井建設に漏れていたことが内部告発によって知られることとなり、入札金の4億5千万の内の7千万が八神氏本人に流れていた事実が発覚。しかも、4億5千万は全額国からの原発交付金によるもので、警視庁は事実関係を八神氏に聞いていが、自由の党は火消しに躍起になっている。八神氏の弁明では先日、東京湾で水死体で発見された 第一秘書、道浦公さんが独自の判断で行ったものと国会の質疑で表明する予定。(当社記者の電話取材による。)道浦公さんの自殺の可能性が強く出てきたと、警視庁は見解を発表。」

何なんだこれは。

嘘だろ。

あの日、木陰で横たわっていた道浦公さんの単独で行った入札事件。

やはり、あの時には既に亡くなってたんだろうか。

それより、なにより、死体が勝手に動いて東京湾まで歩いたのか。

ありえない。

すると、その時突然記憶がよみがえって来た。

あの「かさこそ」の意味が。

あれは、俺が倒れる瞬間に目にした事実。

富山純鑑識官が木陰の道浦公さんのご遺体を落ち葉を使い、足で蹴って隠していたん音。

ぐるぐると視界が回る中で俺はしっかりと目にしていた。

富山鑑識官は人が入らない様に木陰でご遺体を見張っていた。

人が集まって来たのはそのあと。

俺の周りに来ていたのだった。

時間軸のずれ、記憶障害ではありがちな症状。

だが、少しずつ、決して完璧では無いが、確実に当日の記憶がよみがえってくる。


甚だ、遺憾だが、今となっては仕方ないこと。


あの日、早朝、自社のスポーツドリンクを片手に俺はマンションをでた。

5月中旬にしてはやけに暑かったように記憶している。

が、時間も6時半は過ぎていたし、飲み物もあり、なんといっても今が勝負時。

サッカーじゃないが「負けられない戦いがそこにある。」まさにそれ。

体力をつけるのが大事。

そんな思いにとらわれて、疲れているであろう身体を引きずる様にマンションのエレベーターへと向かう。

外に出ると意外に強い日差しが俺の身体を覆う。

だが、気力をふり絞って右足、左足、一歩づつ確実に前へと進める。

徐々にペースを上げ始める。

いつもの調子が出てきているように感じたが、それが間違いの元。


途中、スポーツドリンクを飲みながら、俺の足は速度を速めていた。

順調な滑り出し。

だが、暫くすると、その異変を感じた。

いつもと違う!


違和感の原因は河原近く、第二公園の木陰で横たわっている人らしき姿。

キレイに七三分けになっている頭頂部、ピカピカに光る高級そうな革靴にスーツ。

初老の男性らしき姿はあまりにも日常とかけ離れていた。

驚いた俺はポケットに忍ばせてあるスマホを手にし110番通報をしていた。


ほどなくすると、2台のパトカーにそれぞれ乗って、高橋巡査、岡崎巡査両名がやって来た。

そしてお決まりの職質。

そんな中、例のテレビでよく見るやつ。

鑑識の鞄を持ってきた富山純鑑識官の登場。

道浦公さんを見ていた富山鑑識官はたしか、岡崎巡査の方だろう耳打ちをして、巡査は俺にこういった。

「貴方が発見された方はすでになくなっています。」

くるくる回りながら俺の記憶の中で富山鑑識官が木陰あたりの落ち葉足を蹴り、必死に道浦公さんを隠していた。

ここからが今回の最大の記憶違いだったのだが、回りに人が集まって来たのは俺が倒れた後で、誰の目にも道浦公さんはふれられてない。

富山鑑識官は必死に皆が自分の近くに来ない様に道浦さんを隠していた。

そして、俺はどちらかの警官と一緒に救急車で病院に運ばれたってわけ。

そしてあの事件。

「週刊月光」のスクープ、土狩とがり原発の交付金が地元の議員八神徹に流れていた。

国民の血税、原発交付金と言う名の。

しかも、7千万もの大金、サラリーマンの生涯年収を針化に超える額。

道浦公さんが八神徹氏の第一秘書と言う事実にも驚きを隠せない。

道浦さんのご遺体は東京湾で見つかっている。

そうだとしたら、あの木陰から歩いて東京湾まで道浦公さんのご遺体が一人で東京湾迄たどり着いたのか、はたまた、他の方法で移動したのか。

いづれにしても、ご本人の意思で動いたとは滑稽すぎる。

疑問だらけで頭の中がうまく整理できない。

そんな考えにとらわれていると、「週刊月光」のスクープがまた、ネット上で上がった。

「スクープ、原発交付金の闇、第二弾。監察医の証言。自由の党、八神徹氏、第一秘書道浦公さんのご遺体の解剖は2名の監察医によって行われた。そのうちの一人T氏の自筆の手紙が当社に届く。内容は以下の通り。警視庁の命令で隠していたが、事績の念に駆られ、内部告発と言う形を取らざる負えない自身を恥じる。医師の一人として真実を語ります。あの日の道浦公さんのご遺体には後頭部に明らかに外部からの力が加わった陥没が発見されていた。ようは、他者がこの事件に加わっていたのは自明の理。道浦公さんは後頭部を鈍器で殴られていた。ここに真実を語り、医師の職を辞する覚悟であります。どうか、この事実を当社によって、世間に知らしめて頂きたい。」


なんだこれ!

いったいなんなんだこれは!

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