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~お姉さんと進むギルド王国~  作者: 二月ふなし
第2章 ヴァリアード強襲 編
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80.歪んだ二人

 仲間を先に行かせたアッシュ。

 やっと会えて嬉しいのか、ビクビクしている。

 レクスの方もクロスオーブを逃したせいか、それとも何か別の要因があるのか、ご機嫌斜めであった。


 ようやく再開した2人。

 しかし、その空気はとても重いものだった。

 

「ひ、久しぶり……」


 アッシュはとりあえず挨拶した。


「ああ、久しぶりだな」


 少し間をおいてレクスも返す。


「あ、その……」


 やっと2人きりになれたというに、アッシュのドモりが発動してしまう。

 言いたい事だってたくさんあったはずだ。

 でも、実際に目にすると何を話したらいいのか分からなくなる。


 それと、しばらく見ないうちに大人っぽくなった少女を見て、気持ちが勝手にときめてしまう。

 上手く言葉が出ずに悩んでいると、


「お前のところは相変わらず、賑やかだな」


 女性であるレクスの方から先に話題を振る。


「えっ、ま、まあ」


 男のくせにアッシュはたどたどしく返す。


「昔からそうだ、少し羨ましい。いや、そうでもないな」

「どっちなのさ」

「元気だったか?」

「えっ……あ、元気さ」

「そうか」


 なんだかぎこちない。

 中々話が広がらず、気まずい雰囲気が流れている。

 レクスも自分と同じで緊張しているのだろうか。

 そう思い、アッシュは勝手に安心感を覚えるが、


「で、あの女なんだ?」


 どうやら違ったみたいだ。

 レクスが先ほどの真意を問いただす。

 アッシュには分かる。これは怒っている時の顔だ。


「随分と仲が良いんだな、お前の女か?」

「いや、アイツは……」


 やはりそうなる。

 アッシュは誤解を解こうとしたが、


「フンッ、お前が誰と何をしようとワタシには関係ない」

「なっ⁉ そんな言い方はないさ! ヘルナとはそんなんじゃない!」

「呼び捨てか? 結構なことだな!」

「あ、いや違う! アイツとは今日会ったばかりで」

「そんなに早く引っかけたのか? まだ昼間だぞ」

「勝手について来ただけさ!」


 話がややこしくなるため、アッシュは上手く説明できないでいる。

 それにこんな話をしたいわけじゃない。

 そう思い、悲しさが押し寄せてくる。


 だんだんヒートアップする2人。

 

「目を放すとすぐこれだ! お前は昔からそうやって、すぐ女の後ろをついて行く!」

「あれはお菓子に釣られてただけさ!」

「それにあの女はなんだ。あんな不埒な……お前はああいうのが良いのか!」

「そ、そんなわけないさ!」

「っ⁉ なんだ! 今の間は一体なんだ!」

「な、なんでもないさ」


 2人は森の中でワーワーと騒いでいる。

 4年ぶりの再会だというのに仲が良いのか悪いのか良く分からない。


「ハア……ハア……」


 しばらく言い合っていたが、ラチが明かない。

 2人は息を切らす。


「もういい、これ以上お前を放っておくわけにいかん」

「ん? なら戻ってくるのか?」


 一瞬期待するも、


「違う、殺す」


 アッシュはギョッとした。


「こ、ここ殺す⁉」

「ああ、今から殺す」


 確かに次会ったら殺すとは警告されていた。

 しかし、ここまで面と向かってハッキリ言われては、来るモノがある。

 

「スターバードの宿命……とは言わん。家のことなんて興味ないからな、それとは関係なくお前を殺す」

「そんな物騒な……」

「黙れ、言っておくがお前に選択権はない。あの時みたいにイヤだイヤだと喚いても無駄だ」

「……分かってるさ、それくらい」

 

 あの時はただ恐くて何も出来なかった。

 けど今は違う。あの時とは違う。

 この日のために4年も頑張って来たんだ。

 アッシュはまっすぐな目を向けた。


「やってやるさ、今度は逃がさない」

「フッ、そうか。だが捕まえてどうする? ワタシはヴァリアードだ、すでに何人もお前の仲間を葬ってきた。お前の所に居場所なんてない」


 そんなことは分かっている。

 だが、これはあの時から決めたことだ。

 今更曲げるつもりは毛頭ない。


「関係ないさ、絶対連れ戻す」

「フンッ、仮にそうしてどうするつもりなんだ?」


 その問いに、アッシュは少し間をおいて、


「監禁するさ」


 と、堂々と答えて見せた。


「そうか……はっ? なんだ? 今なんて……」


 今サラッと、とんでもないことを聞いてしまったような。

 レクスは一瞬耳は疑うも、


「逃げないように監禁する、そしてずっとオレのそばにいてもらう」


 恥じらいもなくハッキリ言い切った。


「なっ⁉」


 全く予想外の返答にレクスは驚愕した。

 同時に迷いが一切ない少年の目に、不覚にもドキッとなる。


「気でも触れたか⁉ ヴァリアードならともかく監禁は重罪だぞ⁉」


 この国で監禁という行為は結構な犯罪だ。

 それを悪びれもなく言うアッシュ。

 これにはヴァリアードであるレクスもビックリだ。


「バレなければ問題ないさ、いざとなったらプラスに揉み消してもらう。それに部屋はもう用意してるさ」


 ご丁寧なことに、エリーの借家の地下に、レクス専用監禁室を作ったそうだ。手作りだ。


「そういう問題じゃない! バカなのかお前は!」

「うるさい! 言っとくけどレクスに拒否権はないからな! 問答無用で監禁するさ!」

「なっ⁉」


 アッシュの真剣なお顔に、レクスはまたも身体が熱くなる。

 どうやら本当にやるつもりのようだ。

 自分がいない間に何があったというのか。

 何がこの男はここまでさせてしまったのか。

 レクスには分からない。


「チッ、やはりあの時殺しておくべきだったな」

「そうだな、監禁するべきだったさ!」

「ッ⁉ ホントにどうしたんだお前……」


 あの時殴りすぎて頭がおかしくなってしまったのか

 この男は狂っている。

 レクスは本気で心配になってきた。


「なにさ! そっちからいなくなったくせに! あんなに頼んだのに置いて行ったのはどこの誰さ! こっちの気も知らないで! クソッ! こうなったら絶対監禁してやる!」


 少年の溜まっていた思いが、色々と溢れ出している


「黙れ! もう喋るな! 口を開くな! 大体、ワタシを監禁してどうするつもりなんだ⁉」

「……えっ?」


 しかし、アッシュの勢いが止まり、森が静寂した。


「ど、どうするって……」

「なんだ、もしかして何も考えてなかったのか?」

「そ、そんなわけないさ!」


 図星であった。確かにその先のことなんて考えていなかった。

 どう答えたらいいものか。


「……ん?」


 アッシュは悩んでいると、ふと少女の胸元に目が行った。


「う~ん……」


 考えるフリをして見続ける。

 年相応ではあるが、どこぞのギルド長より大きい。

 また整ったキレイな形をしており、こういうのもまたアッシュのこの──


「おいアッシュ、お前どこを見ている?」


 レクスが静かに言った。キツく睨んでいる。

 これはダメなヤツだ。アッシュにはよく分かる。


「あっ、いや、良いむ──目だと思ってさ……ハハッ、ハハハハ」


 なんとか誤魔化そうとしたが、


「とぼけるな! 今ワタシの胸を見てただろ!」

「みっ、見てない!」

「昔から見てたくせに! 気づいてないと思ったか!」

「なっ⁉ 違うさ! あれはペンダントを!」

 

 2人の騒がしい声がまた森の中を反響する。


「殺す! 絶対殺す! お前はもうダメだ!」


 コイツは色々と手遅れだ。

 アッシュがすっかりスケベになってしまい──いや、元からこうだったか。

 レクスは心底呆れ返る。


「話すだけ時間の無駄だ! 勝負しろアッシュ!」

「ああ、続きは監禁したあとさ!」

「っ⁉︎ 黙れ! もう死ね!」


 

 2人はオーブを構えた。

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