表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
~お姉さんと進むギルド王国~  作者: 二月ふなし
第2章 ヴァリアード強襲 編
79/142

74.激突! メスガキ 対 変態おじさん

 この時が来るのをずっと待ちわびていた変態おじさん。

 そんな彼をあろうことかストーカー呼ばわりするメスガキ。

 2人の戦いが今、始まる。


「オラッ!」


 先行は変態おじさん、その巨体でド迫力なタックルを繰り出した。


「おっそーい☆」


 しかし、メスガキは破裂(バースト)を使って悠々と躱す。


「アハッ! ダメダメ~! そんなじゃファーマを捕まえらないよ~だ!」

「チッ、めんどくせえ!」


 変態おじさんは舌打ちした。

 何度も飛びかかるも、標的のスピードを捉えることはできない。


 このメスガキは破裂(バースト)を得意とするメスガキで、長所を伸ばすために青のオーブスーツを装着している。

 おまけにゲリードマンが開発したブーツで、その能力をさらに高めている。

 よって、とんでもない速さで移動することができ、なんと空も飛ぶことも可能だ


 そんなメスガキをどうやって分からせるか。

 この変態おじさんはとても興奮していた。


「今度はファーマの番!」


 と言ってメスガキが両手を広げた。

 

「逝っちゃえ! 爆撃分離(ファーマ☆スペシャル)!」


 そして、大量のオーブが連射された。


「うおっ⁉」


 変態おじさんは急いでその場を離れ、木を遮蔽物にしながら躱す。

 

 周りが焼き払われ、森が瞬く間に炎に包まれた。

 

 メスガキを中心とし、炎が円状に広がっていく。


「ちょっと! なんで避けちゃうの⁉ 森さんが可哀そうでしょ⁉」


 メスガキが大自然にスペシャルをぶちかました。


 自分は可愛いから何をやっても許される。

 このメスガキは本気でそう思っている。

 そのようないけない思考は、一刻も早く良い大人が正してあげなくては。


「チッ、なんて分離(リーブ)だ」


 変態おじさんはそう思う。


 ──爆撃分離(ファーマ☆スペシャル)と言えば聞こえはいい。

 だが、これはオーブを普通に連射しているだけ。

 いわばただのメスガキリーブに過ぎない。

 それでも本人が必殺技と言えば必殺技になるし、ウィークオーブだと言い張れば立派なウィークオーブにだってなる。そういうものだ。


「もう! どうして当たらないの⁉ ダメでしょ!」


 やがてメスガキが痺れを切らし、スペシャルを中断した。


「こうなったらお空から爆撃してあ・げ・る☆」


 今度は空高くジャンプ。

 足裏と両手からオーブを噴射させ、巧みに空を旋回し始めた。


「すげえなおい! マジで飛んでやがる!」


 メスガキワイバーンをこの目に納めることできて、変態おじさんは大感激だ。


「アハッ! 爆撃分離(ファーマ☆スペシャル)!」


 メスガキが上空から無差別にオーブを投下した。


「っ⁉」


 広範囲に拡散され、全て避けるの至難の業だ。


 そのまま変態おじさんは森と共に、爆撃をモロに受けてしまう。


「やった~! おじさん逝っちゃったねえ~! ファーマの勝っちぃ~☆」


 キャピるメスガキ。しかし、


「──全身丸盾(フルアーマード・ゴー)


 煙の中から変態おじさんが姿を出した。

 それは先程と違って、全身に荒々しいオーブを纏い、不敵に笑っている。

 大人が本気を出したのだ。


「なんで生きてるの⁉ いけないでしょ⁉」


 敵がスペシャルから生還した。

 メスガキは目を大きくして驚く。

 また、この時の変態おじさんに対して、言いようのない危機感を覚えていた。


「もう! 次は外さないから!」


 メスガキは一旦空から急降下し、対象の元まで向かう。


 一瞬で変態おじさんのそばまで降り立った。


「これなら躱せないよ!」

「あん?」

「逝っちゃえ! 爆撃分離(ファーマ☆スペシャル)!」


 そして、至近距離でオーブを連射した。


 変態おじさんの身体に全弾命中、全身が爆炎で見えなくなる。


「アハッ! 黒焦げだねえ~!」


 ざーこ♡ざーこ♡、と言わんばかりのメスガキ。

 握りしたくなるような満面の笑みで喜んでいる。


「──どうした? 全然効いてねえぞ」

「っ⁉」


 しかし、変態おじさんは逝かなかった。

 それどころかダメージが全く入っていない。


「ちょっと⁉ なんで効いてないの⁉ ダメでしょ⁉」」


 本気を出した大人の前に、メスガキの攻撃など通用するはずがない。


「わざわざ降りてくるとはな! オラッ!」

「きゃあっ⁉」


 変態おじさんのフルスイング。


 メスガキは攻撃を中断してギリギリ躱す。


「オラオラ!」

「ッ⁉ うわっ⁉ ちょっと⁉」


 おじさんの猛攻を破裂(バースト)で回避し、なんとか上空に避難した。


「チッ! 逃がしたか」

「残念でした~! ここに入ればファーマ安全だね☆ アハッ!」

「なめやがって! ガキがよ!」

「ベロベロばあ~、ここまでおいで~!」

 

 メスガキが空から挑発した。

 その生意気な姿に感化され、変態おじさんはさらに興奮してしまう。

 絶対に分からせてやる。そう思ってしまう。


「おじさんじゃここまで来れないね! ごめんねえ~……はっ⁉」


 突如、メスガキに向けて小石が飛ばされた。

 変態おじさんが地上から石を拾っては、相手に投げまくっていたのだ。


「アハハハ! おじさん何してるの! 小石なんか投げちゃってダッサ~い☆」


 相手のみっともない悪あがきに、メスガキはなんとも憎たらしい顔で笑いこけている。


「オラオラァ!」

「そんなの意味ないよ~だ! 小石なんかでファーマが──」


 ブシュン!


「うっ⁉」


 突然、飛んできた小石がメスガキの生意気な頬をかすめた。


 それは高速で回転し、凄まじい風圧と轟音が後ろへと過ぎていく。


「……っ⁉」


 もしかしてこれ……。

 メスガキはゾッとした。

 これに直撃すると一溜まりもない。

 そう思い、今度は必死に避け始めた。


「ちょっと待っておじさん! それやめて! ねっ!」

「オラオラー!」

「可愛いファーマがこんなにお願いしてるのに⁉ ダメでしょ⁉」

「オラオラー!」


 標的に向かって全力投球する変態おじさん。

 それを死に物狂いでよけるメスガキ。

 遠目で見ると、心なしか楽しく遊んでいるようにも見える。

 

「おっ! 良いもんがあんじゃねえか!」


 やがて、おじさんがそばにあった木を引っこ抜き、


「食らえ!」


 それを思いっきりぶん投げた。


「っ⁉」


 木がまるで螺旋状にグルグル回転し、メスガキに向かって飛んでいく。

 

 メスガキは間一髪で躱したが、


「ッ⁉ 嘘でしょ⁉」」


 次々と木を引っこ抜き、メスガキめがけぶん投げた。

 どこから持ってきているのか分からないほどの大量の木が、ドリルのように襲いかかってくる。


「うわっ⁉ きゃっ⁉…………ん?」


 メスガキは必死に避けている中、ふと地上の景色が目に映る。


「あれは……」


 そこは元々、多くの木々が生い茂っていた森。

 だが、今は戦闘で焼け野原となり、見る影もない悲しい大地と化していた。

 まるで自分に何かを訴えかけているよう。


 その光景に、メスガキは不思議と怒りを覚えた。

 メスガキの生意気顔が急に引き締まる。


「森さんが……許せない! 森さんはファーマが守る!」


 両手から二つの巨大なオーブを出し、それを一つに合体させた。


「森さんをいじめる悪いおじさん! このファーマがやっつけるからね☆」


 やげて光を収縮させ、エネルギーに密度を高めていく。

 

 そして、発射準備が整った。


「逝っちゃえええ! (スーパー)爆撃分離(ファーマ☆スペシャル)!」


 メスガキが渾身の一撃を放つ。

 ピンクの輝きが直線状に発射されたビーム状のオーブだ。

 ちなみにこれもただの分離(リーブ)に分類される。


「ぐおっ⁉」


 それが空を突っ切って地上へと着弾。


 おじさんどころか、周囲の森まで巻き添えを食らってしまう。


 その爆炎が8方向に拡散し、全体へ広がっていく。

 

 これには流石の変態おじさんも逝くしかない。


 と思った矢先、


「──誰が逝くかよ!」

 

 光の中からぬるりと太い腕が現れ、


「えっ……」


 ビームを斜め後ろに弾き飛ばした。


 メスガキのオーブがあさっての方角へ飛んで行き、やがて見えなくなる。


「そ、そんな……爆撃分離(ファーマ☆スペシャル)が、スーパーなのに……」


 自分の奥義が容易く弾かれ、驚きを隠せないメスガキ。

 空中でへこたれるように崩れ落ちた。

 それは、この変態おじさんには、自分の攻撃が一切通じないと宣告されたようなものだった。

 本気を出した大人には敵わないのだ。


「冗談じゃないでしょ⁉ ファーマもうやってらんない!」


 このおじさんには勝てない。

 このままだと本当に分からされてしまう。

 そう判断したメスガキがプンプンしながら逃亡を開始した。


「逃がすかよ!」


 だが変態おじさんは逃がさない。

 分からせるまでは、例え何があっても逃がさないのだ。

 逃亡するメスガキの下から木やら小石やら色々投げまくる。


「おっ! 良いもんがあんじゃねえか!」


 どこから持ってきたのか不明だが、巨大な大岩を持ち上げた。


「ちょっとおじさん⁉ なにそれ⁉」

「可愛いお嬢ちゃんには俺からプレゼントだ、嬉しいだろ?」

「それをファーマにぶつける気⁉ ありえないでしょ⁉」

「こういうのは有難く受け取るもんだ! さっさと逝けよオラァ!」


 おじさんが全力で空にいる標的にぶん投げた。


「っ⁉」


 メスガキが破裂(バースト)を噴射して、躱そうとしたが、


「オラッ!」


 変態おじさんがそばにあった小さな岩を掴み、大岩にぶつけた。


 すると、大岩が粉々に砕け散り、そのまま拡散されてメスガキへと飛んでいく。


「えっ⁉」


 これには流石のメスガキも不意を突かれてしまう。

 避けることができず、右足のブーツに岩の破片が直撃する。


「あっ⁉ ファーマのブーツが⁉」


 片方のブーツが破壊され、空中制御が困難となったメスガキは、上手くバランスを取ることができない。

 まるで翼を片方失った鳥のよう。


 その哀れなメスガキに向かって、変態おじさんが再び木をジャイロ回転させながら全力投球した。


「うわっ⁉」 


 メスガキはとっさに手からオーブを出し、それをオーブを破裂させた。


 その推進力を利用し、間一髪のところで緊急回避。


 しかし、そのせいでさらにバランスを崩し、空中を回転クルクル、お目めが回ってしまう。


「おじさんがいない⁉」


 なんとか体勢を戻したメスガキが地上に目を向けると、そこに変態おじさんの姿はない。

 

 アワアワしながら探していると、


「──上だぜ! お嬢ちゃん!」


 上空から声がした。

 慌てて上を向くとそこにいたのは、


「っ⁉」


 なんと変態おじさんだった。

 自分の投げた木に乗り上げて、空を登っていたのだ

 

「なんでお空いるの⁉ おかしいでしょ⁉」


 自分より高い所にいるなんてあり得ない。

 プライドを傷つけられ、メスガキはプンプンする。


「捕まえたぜ! ファーマ=ダストリラ!」


 変態おじさんの全身から荒々しいオーブが放たれた


「逝っちまえ!」


 空中で腕を組み、


全身丸盾(フルアーマード・ゴー)!」


 全力の一撃を叩き込んだ。


「ッ⁉ 丸盾(シェル)!」


 メスガキがとっさに盾を張るも、


「ッ⁉ かはっ⁉」


 メスガキシェル、粉☆砕!


 ガラスのように粉々に割られ、奥義がモロに直撃してしまう。


「うぎゃああああ!!!」


 ズッドーン☆ ブチッ!


 地面に一直線、もの凄い速度で墜落。


 その衝撃が大地へ伝わり、周囲が一瞬大きく揺れた


 辺り一面の土砂が噴水のように空高く跳ね上がる。


「ハア……ハア……ファーマが、こんな……」


 ボロボロだがメスガキは生きていた。

 死ななように変態おじさんが手加減していたのだ。


「──おう! まだ生きてんのか!」


 背後から白々しい声が響く。


「ファ、ファーマの負けでいいから、もう許して……」

「あん? 何言ってんだお前?」

「もうわかった……ファーマわかったから……」


 弱々しい声で必死に命乞いをする。

 だが、変態おじさんには無意味。むしろ逆効果だ。


「お願い……もうやめて……ファーマ死んじゃう」

「…………」


 この時、変態おじさんは奇妙な感覚を覚えた。

 全身がゾクゾクする。これは一体なんだ。

 目の前のメスガキはもう戦闘不能だ。

 本来ならこのままトドメを差すのだがいつもと違う。

 まだ何か足りない。満足できない。


 そして、


「……そうだな、確かに殺すのは良くなえな」

「っ! それじゃ!」

「ああ! このまま殺すのは勿体ねえよなあ!」

「っ⁉」

「うおおおお! 全身丸盾(フルアーマードゴー)⭐︎理解スペシャル!!!」

「い、いやあああああ!!!」



 わからされた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ