74.激突! メスガキ 対 変態おじさん
この時が来るのをずっと待ちわびていた変態おじさん。
そんな彼をあろうことかストーカー呼ばわりするメスガキ。
2人の戦いが今、始まる。
「オラッ!」
先行は変態おじさん、その巨体でド迫力なタックルを繰り出した。
「おっそーい☆」
しかし、メスガキは破裂を使って悠々と躱す。
「アハッ! ダメダメ~! そんなじゃファーマを捕まえらないよ~だ!」
「チッ、めんどくせえ!」
変態おじさんは舌打ちした。
何度も飛びかかるも、標的のスピードを捉えることはできない。
このメスガキは破裂を得意とするメスガキで、長所を伸ばすために青のオーブスーツを装着している。
おまけにゲリードマンが開発したブーツで、その能力をさらに高めている。
よって、とんでもない速さで移動することができ、なんと空も飛ぶことも可能だ
そんなメスガキをどうやって分からせるか。
この変態おじさんはとても興奮していた。
「今度はファーマの番!」
と言ってメスガキが両手を広げた。
「逝っちゃえ! 爆撃分離!」
そして、大量のオーブが連射された。
「うおっ⁉」
変態おじさんは急いでその場を離れ、木を遮蔽物にしながら躱す。
周りが焼き払われ、森が瞬く間に炎に包まれた。
メスガキを中心とし、炎が円状に広がっていく。
「ちょっと! なんで避けちゃうの⁉ 森さんが可哀そうでしょ⁉」
メスガキが大自然にスペシャルをぶちかました。
自分は可愛いから何をやっても許される。
このメスガキは本気でそう思っている。
そのようないけない思考は、一刻も早く良い大人が正してあげなくては。
「チッ、なんて分離だ」
変態おじさんはそう思う。
──爆撃分離と言えば聞こえはいい。
だが、これはオーブを普通に連射しているだけ。
いわばただのメスガキリーブに過ぎない。
それでも本人が必殺技と言えば必殺技になるし、ウィークオーブだと言い張れば立派なウィークオーブにだってなる。そういうものだ。
「もう! どうして当たらないの⁉ ダメでしょ!」
やがてメスガキが痺れを切らし、スペシャルを中断した。
「こうなったらお空から爆撃してあ・げ・る☆」
今度は空高くジャンプ。
足裏と両手からオーブを噴射させ、巧みに空を旋回し始めた。
「すげえなおい! マジで飛んでやがる!」
メスガキワイバーンをこの目に納めることできて、変態おじさんは大感激だ。
「アハッ! 爆撃分離!」
メスガキが上空から無差別にオーブを投下した。
「っ⁉」
広範囲に拡散され、全て避けるの至難の業だ。
そのまま変態おじさんは森と共に、爆撃をモロに受けてしまう。
「やった~! おじさん逝っちゃったねえ~! ファーマの勝っちぃ~☆」
キャピるメスガキ。しかし、
「──全身丸盾」
煙の中から変態おじさんが姿を出した。
それは先程と違って、全身に荒々しいオーブを纏い、不敵に笑っている。
大人が本気を出したのだ。
「なんで生きてるの⁉ いけないでしょ⁉」
敵がスペシャルから生還した。
メスガキは目を大きくして驚く。
また、この時の変態おじさんに対して、言いようのない危機感を覚えていた。
「もう! 次は外さないから!」
メスガキは一旦空から急降下し、対象の元まで向かう。
一瞬で変態おじさんのそばまで降り立った。
「これなら躱せないよ!」
「あん?」
「逝っちゃえ! 爆撃分離!」
そして、至近距離でオーブを連射した。
変態おじさんの身体に全弾命中、全身が爆炎で見えなくなる。
「アハッ! 黒焦げだねえ~!」
ざーこ♡ざーこ♡、と言わんばかりのメスガキ。
握りしたくなるような満面の笑みで喜んでいる。
「──どうした? 全然効いてねえぞ」
「っ⁉」
しかし、変態おじさんは逝かなかった。
それどころかダメージが全く入っていない。
「ちょっと⁉ なんで効いてないの⁉ ダメでしょ⁉」」
本気を出した大人の前に、メスガキの攻撃など通用するはずがない。
「わざわざ降りてくるとはな! オラッ!」
「きゃあっ⁉」
変態おじさんのフルスイング。
メスガキは攻撃を中断してギリギリ躱す。
「オラオラ!」
「ッ⁉ うわっ⁉ ちょっと⁉」
おじさんの猛攻を破裂で回避し、なんとか上空に避難した。
「チッ! 逃がしたか」
「残念でした~! ここに入ればファーマ安全だね☆ アハッ!」
「なめやがって! ガキがよ!」
「ベロベロばあ~、ここまでおいで~!」
メスガキが空から挑発した。
その生意気な姿に感化され、変態おじさんはさらに興奮してしまう。
絶対に分からせてやる。そう思ってしまう。
「おじさんじゃここまで来れないね! ごめんねえ~……はっ⁉」
突如、メスガキに向けて小石が飛ばされた。
変態おじさんが地上から石を拾っては、相手に投げまくっていたのだ。
「アハハハ! おじさん何してるの! 小石なんか投げちゃってダッサ~い☆」
相手のみっともない悪あがきに、メスガキはなんとも憎たらしい顔で笑いこけている。
「オラオラァ!」
「そんなの意味ないよ~だ! 小石なんかでファーマが──」
ブシュン!
「うっ⁉」
突然、飛んできた小石がメスガキの生意気な頬をかすめた。
それは高速で回転し、凄まじい風圧と轟音が後ろへと過ぎていく。
「……っ⁉」
もしかしてこれ……。
メスガキはゾッとした。
これに直撃すると一溜まりもない。
そう思い、今度は必死に避け始めた。
「ちょっと待っておじさん! それやめて! ねっ!」
「オラオラー!」
「可愛いファーマがこんなにお願いしてるのに⁉ ダメでしょ⁉」
「オラオラー!」
標的に向かって全力投球する変態おじさん。
それを死に物狂いでよけるメスガキ。
遠目で見ると、心なしか楽しく遊んでいるようにも見える。
「おっ! 良いもんがあんじゃねえか!」
やがて、おじさんがそばにあった木を引っこ抜き、
「食らえ!」
それを思いっきりぶん投げた。
「っ⁉」
木がまるで螺旋状にグルグル回転し、メスガキに向かって飛んでいく。
メスガキは間一髪で躱したが、
「ッ⁉ 嘘でしょ⁉」」
次々と木を引っこ抜き、メスガキめがけぶん投げた。
どこから持ってきているのか分からないほどの大量の木が、ドリルのように襲いかかってくる。
「うわっ⁉ きゃっ⁉…………ん?」
メスガキは必死に避けている中、ふと地上の景色が目に映る。
「あれは……」
そこは元々、多くの木々が生い茂っていた森。
だが、今は戦闘で焼け野原となり、見る影もない悲しい大地と化していた。
まるで自分に何かを訴えかけているよう。
その光景に、メスガキは不思議と怒りを覚えた。
メスガキの生意気顔が急に引き締まる。
「森さんが……許せない! 森さんはファーマが守る!」
両手から二つの巨大なオーブを出し、それを一つに合体させた。
「森さんをいじめる悪いおじさん! このファーマがやっつけるからね☆」
やげて光を収縮させ、エネルギーに密度を高めていく。
そして、発射準備が整った。
「逝っちゃえええ! 超・爆撃分離!」
メスガキが渾身の一撃を放つ。
ピンクの輝きが直線状に発射されたビーム状のオーブだ。
ちなみにこれもただの分離に分類される。
「ぐおっ⁉」
それが空を突っ切って地上へと着弾。
おじさんどころか、周囲の森まで巻き添えを食らってしまう。
その爆炎が8方向に拡散し、全体へ広がっていく。
これには流石の変態おじさんも逝くしかない。
と思った矢先、
「──誰が逝くかよ!」
光の中からぬるりと太い腕が現れ、
「えっ……」
ビームを斜め後ろに弾き飛ばした。
メスガキのオーブがあさっての方角へ飛んで行き、やがて見えなくなる。
「そ、そんな……爆撃分離が、スーパーなのに……」
自分の奥義が容易く弾かれ、驚きを隠せないメスガキ。
空中でへこたれるように崩れ落ちた。
それは、この変態おじさんには、自分の攻撃が一切通じないと宣告されたようなものだった。
本気を出した大人には敵わないのだ。
「冗談じゃないでしょ⁉ ファーマもうやってらんない!」
このおじさんには勝てない。
このままだと本当に分からされてしまう。
そう判断したメスガキがプンプンしながら逃亡を開始した。
「逃がすかよ!」
だが変態おじさんは逃がさない。
分からせるまでは、例え何があっても逃がさないのだ。
逃亡するメスガキの下から木やら小石やら色々投げまくる。
「おっ! 良いもんがあんじゃねえか!」
どこから持ってきたのか不明だが、巨大な大岩を持ち上げた。
「ちょっとおじさん⁉ なにそれ⁉」
「可愛いお嬢ちゃんには俺からプレゼントだ、嬉しいだろ?」
「それをファーマにぶつける気⁉ ありえないでしょ⁉」
「こういうのは有難く受け取るもんだ! さっさと逝けよオラァ!」
おじさんが全力で空にいる標的にぶん投げた。
「っ⁉」
メスガキが破裂を噴射して、躱そうとしたが、
「オラッ!」
変態おじさんがそばにあった小さな岩を掴み、大岩にぶつけた。
すると、大岩が粉々に砕け散り、そのまま拡散されてメスガキへと飛んでいく。
「えっ⁉」
これには流石のメスガキも不意を突かれてしまう。
避けることができず、右足のブーツに岩の破片が直撃する。
「あっ⁉ ファーマのブーツが⁉」
片方のブーツが破壊され、空中制御が困難となったメスガキは、上手くバランスを取ることができない。
まるで翼を片方失った鳥のよう。
その哀れなメスガキに向かって、変態おじさんが再び木をジャイロ回転させながら全力投球した。
「うわっ⁉」
メスガキはとっさに手からオーブを出し、それをオーブを破裂させた。
その推進力を利用し、間一髪のところで緊急回避。
しかし、そのせいでさらにバランスを崩し、空中を回転クルクル、お目めが回ってしまう。
「おじさんがいない⁉」
なんとか体勢を戻したメスガキが地上に目を向けると、そこに変態おじさんの姿はない。
アワアワしながら探していると、
「──上だぜ! お嬢ちゃん!」
上空から声がした。
慌てて上を向くとそこにいたのは、
「っ⁉」
なんと変態おじさんだった。
自分の投げた木に乗り上げて、空を登っていたのだ
「なんでお空いるの⁉ おかしいでしょ⁉」
自分より高い所にいるなんてあり得ない。
プライドを傷つけられ、メスガキはプンプンする。
「捕まえたぜ! ファーマ=ダストリラ!」
変態おじさんの全身から荒々しいオーブが放たれた
「逝っちまえ!」
空中で腕を組み、
「全身丸盾!」
全力の一撃を叩き込んだ。
「ッ⁉ 丸盾!」
メスガキがとっさに盾を張るも、
「ッ⁉ かはっ⁉」
メスガキシェル、粉☆砕!
ガラスのように粉々に割られ、奥義がモロに直撃してしまう。
「うぎゃああああ!!!」
ズッドーン☆ ブチッ!
地面に一直線、もの凄い速度で墜落。
その衝撃が大地へ伝わり、周囲が一瞬大きく揺れた
辺り一面の土砂が噴水のように空高く跳ね上がる。
「ハア……ハア……ファーマが、こんな……」
ボロボロだがメスガキは生きていた。
死ななように変態おじさんが手加減していたのだ。
「──おう! まだ生きてんのか!」
背後から白々しい声が響く。
「ファ、ファーマの負けでいいから、もう許して……」
「あん? 何言ってんだお前?」
「もうわかった……ファーマわかったから……」
弱々しい声で必死に命乞いをする。
だが、変態おじさんには無意味。むしろ逆効果だ。
「お願い……もうやめて……ファーマ死んじゃう」
「…………」
この時、変態おじさんは奇妙な感覚を覚えた。
全身がゾクゾクする。これは一体なんだ。
目の前のメスガキはもう戦闘不能だ。
本来ならこのままトドメを差すのだがいつもと違う。
まだ何か足りない。満足できない。
そして、
「……そうだな、確かに殺すのは良くなえな」
「っ! それじゃ!」
「ああ! このまま殺すのは勿体ねえよなあ!」
「っ⁉」
「うおおおお! 全身丸盾⭐︎理解!!!」
「い、いやあああああ!!!」
わからされた。




