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~お姉さんと進むギルド王国~  作者: 二月ふなし
第2章 ヴァリアード強襲 編
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66.敵主力の案内

 翌日、ここはギルド長のお部屋。

 プラスは自分専用の椅子にゆっくりと腰をかけていた。

 誰かを待っているようだ。


 ゴンゴンッ!


 ガサツなノックがされ、ガチャリ。

 大きな男が部長室に入ってきた。

 第二教区支部長のゴーだ。

 お話があるらしく、プラスがここに呼んだのだった


「やっと来たわね、遅いじゃない」


 プラスが遅刻した相手に悪態をつく。

 日頃から忙しい彼女は、時間にすっかりルーズになっていた。


「あん? 間に合ってるじゃねえか」

「わたしのギルドは15分前行動よ、覚えておきなさい」

「俺はギルドの人間じゃねえ。何度も言ってるだろ」


 ドスンッ ゴーがソファに座る音。

      許可もなく腰をかけた音だ。

 

 どうせ、今日もギルドを作れだの何とか言うために、自分を呼んだのだろう。

 面倒だし、早く帰りたい。

 ゴーはさっそく本題を切り出した。


「ギルドは作らねえからな」

「残念だけど今日はその話じゃないわ。ギルドは作ってもらうけどね」

「じゃあ、何の話だよ? 絶対作らねえぞ」

「ええ、アンタをこの教区に呼んだ理由を話すわ。絶対作りなさい」


 会うたびにこんな会話をしている。この2人は。

 3年前にゴーが第二教区の支部長に就任してからずっとだ。


 ゴーとしては、教王とコッティルに土下座をされ、仕方なく支部長になってあげただけ。

 もう面倒ごとに巻き込まれるのはごめんだ。

 なので、プラスの要求をずっと拒んでいた。


「さっさとしろ、こっちは帰って早く寝てえんだ」

「支部長のくせに、昼間から寝るなんて良いご身分ね。やっぱりクマさんには過ぎた役職かしら?」

「問題ねえ、エリーが全部やってくれるからな」


 飼い主が全部やってくれる。

 第一教区の時だってそうしてきた。

 だから誰でもできる。クマさんにだってできる。


「フンッ、まあいいわ。そんなアンタのためにお仕事を用意しておいたの。このわたしがね」

「お仕事? なんだそりゃ?」

「ええ、まずは敵勢力について説明するわ。ありがたく思いなさい」

「ヴァリアードのことか? そいつはこの前聞いたが……」


 プラスが説明を始めた。


「まず敵はザイコール一派とゲリードマン一派に分かれてるって前回説明したわよね? 忘れたとは言わせないわ」

「ああ、んでゲリードマンの方が攻めて来たんだろ」


 敵勢力であるヴァリアードは、3名のAランクハンター中心にその他数十名のB、Cランクで構成されるならず者たちの集団だ。

 それが二手に分かれ、このユースタント教国に攻めてきている。


「戦力的にはこっちが大きい。でもジャックおじさんを抜けたらAランクの数は同じよ」

「俺とお前と、あとはコッティルだな。なるほど、一筋縄じゃ行かなそうだ」

「そうよ、だからAランク同士がぶつかるのは必然だわ。お分かりかしら?」

「……グレンとザイコールってのは分かるが、他にもう1人いるのか?」

「ええ。今回は敵の要注意人物について教えるわ」


 この戦いの鍵を握るのはAランクだ。

 如何にして相手のAランクを削るかに掛かっていると言っても過言ではない。

 それほどまでに、Aランクというのはどちらにとっても重要だ。


 その話を、同じAランクであるゴーに話すために、プラスは呼んだのだ。


「まずはザーク=ザイコール。間抜けな爺でヴァリアードの主導者よ」

「ああ、あの時抹殺しておくべきだったな」

「そうね、とても悔やまれるわ」


 ザーク=ザイコール。

 現ヴァリアードの主導者で、今は亡きハンドレット=ヴァリアードの意思と継ぎ、かたき討ちのため教王ジャック=ダイアスの命を狙う。

 

 もう老人なので全盛期ほどの力はない。

 だが、クロスオーブを所持するため、敵の中ではもっとも脅威となる存在だ。


「もう1人はグレン=レオストレイト。ヴァリアードの参謀役ね」

「グレンか、アイツは昔から頭だけは良いからな」

「そうかしら? あれも馬鹿だと思うけど」


 グレン=レオストレイト。

 元第二教区の支部長で、ヴァリアードの中ではザイコールをのぞき、最も戦闘力の高いハンターだ。

 打倒教王以外に頭を使わないザイコールに代わり、彼が組織を統率している。

 

 このグレンを排除すれば、相手はかなりの痛手を食らうことだろう。


「あとAランクじゃないけど、レクス=レオストレイト。あの子も要注意だそうよ」

「ほう、あのお嬢ちゃんか。そんなに強くなったのか?」

「ええ、報告によるとAランククラスの実力者らしいわ」


 レクス=レオストレイト。グレンの一人娘だ。

 Bランクとされてはいるが、その実力はAランクハンターにも引けを取らない。

 同じランクの者でも歯が立たなかったと、中央教区から連絡が入っている。


 なので、彼女も実質Aランクという扱いで対応するそうだ。

 お相手の実力はAランク相当。

 どこかの誰かさんは大変である。


「この3人を中心とするザイコール一派が中央教区に攻撃したの」

「ザイコールの野郎がいんなら俺も中央に行きてえんだが」

「気持ちは分かるわよ。でもその前に、こっちに来たゲリードマンたちを何とかしてほしいの」

「ほう、そっちもヤバいのか?」

「ええ、ちょっと厄介な子がいるのよね」


 ザイコールとは別の勢力であるゲリードマン一派。

 それがなぜか第一教区に攻めて来た。

 敵の数はザイコールたちほどではない。


 それでもAランククラスの者が2名いるため、大変手ごわいそうだ。

 前回はプラス率いるハンターズギルドがなんとか撃退したが、次はどうなるかわからない。


 本題はこっちの方で、今からそのAランク相当の2人について説明する。


「1人はリーダーのゲイリー=ゲリードマン。第四教区の裏切り者よ」

「ああ、あのうさん臭い研究者か。まだ生きてたんだな」


 ゲイリー=ゲリードマン。

 元々は教会研究員の開発長で、あのオーブスーツを発明した張本人。

 また、ハンターとしての実力も高く、その実力を教王に買われ、第四教区の新しい支部長に就任した。

 しかし、光の速さで手のひらを返し、ザイコールに加担した裏切り者だ。


「なるほど、そいつの相手を俺にやって欲しいわけだな。そんなに強かったのか?」

「いいえ、アイツは大したことないわ」

「あん?」

「問題はもう1人の方よ」


 プラスは腕を組んで何やら難しい顔をしている。


「ファーマ=ダストリラ。この子が一番厄介だわ」

「あん? 誰だそりゃ? 聞いたことねえぞ」

「第四教区のBランクハンターよ」

「あん? なんだよ、Bランクじゃねえか」

「でも実力はAランク相当になるわ、知らなかったの?」

「ああ、初耳だな」


 ファーマ=ダストリラ。

 アッシュの1つ上の15歳にもかかわらず、Aランク相当の実力者だ。

 Aランク試験に合格したわけではないが、その戦闘力の高さからレクス同様にAランクに仮指定された異例の少女である。

 生粋の第四教区の住民で、上司であるゲリードマンと同じくヴァリアード軍に参加した。


「ファーマは破裂(バースト)を得意とする遠距離タイプハンターよ」

破裂(バースト)だと? 遠距離でか?」

「わたしも初めはそう思ったわよ、でもあれは次元が違う」

「ほう、一体どう違えんだ?」


 プラスは少し間をおいて、


「……飛ぶのよ」

「飛ぶ? 飛ぶって空をか?」

「ええ、わたしだって初めて見た時はこの目を疑ったわよ」


 プラスが言うに、ファーマは破裂(バースト)に精通した遠距離タイプで、その破裂(バースト)を使いなんと空を飛ぶことができる。

 空を縦横無尽に駆け回り、空中から分離(リーブ)で地上を爆撃して制圧するそうだ


 プラスも一応は破裂(バースト)で空を移動するくらいのことはできる。

 だが、飛ぶとなるとまた話は違ってくる。


「またの名を”ワイバーン”=ダストリラ。ギルドの子たちはそう呼んでたわ」

「ワイバーン? なんだそりゃ?」

「知らないの? 本に出てくるじゃない。ホント物を知らないクマさんだこと、呆れものね」


 ワイバーンというのは本の中に出てくる空想上の生き物だ。

 この国では想像豊かな民が多く、バラエティにとんだ本が色々ある。

 ドラゴン、魔法使い、妖精さんなど様々だ。

 大体は子供の頃に読んだり、読み聞かせをしてもらったりが一般的なのだが、その習慣がなかったゴーには無縁のお話であった。


「ちょっとわたしと相性が良くないわね、アレは」


 プラスが険しめな顔でそう言った。


「なんだ? まさか格下のBランクに負けたのか?」

「そんなわけないじゃない。あの子ったら全然降りてこないのよ、遠くからオーブを撃ってくるだけ。ホント嫌になっちゃうわ」


 プラスの雷神電来(ライデン)を以てしても追い付けないほどその機動力が高い。

 前回ファーマと交戦したが何もできず、追いかけっこの果て逃げられたそうだ。

 

 空中のファーマはまさに無敵と言わざるを得ない。

 今度彼女の街への侵入を許すとなると、被害はとんでもないことになってしまう


「だからファーマの相手をアンタにお願いしたいの」

「おいおい、流石に俺だって空は飛べねえぞ」

「大丈夫よ、アンタならきっとファーマを撃墜できるわ。狩りは得意なんでしょ? ちょっとすばしっこい小鳥さんだと思えば問題ないわよ」

「なんだそりゃ? まあいいけどよ」

「そう、ならお願いするわね」

「ああ、それにバードならこっちも大歓迎だ」

「…………」


 今度敵が攻めてきた時、プラスはゲリードマン、ゴーはファーマの相手をする。

 その方が相性的に良いらしい。

 と言うより、このクマさんならなんとかやってくれるだろうと、面倒な相手を丸投げしたのだ。


「フッ、いいだろう。面白えじゃねえか。ワイバーン=ダストリラ」


 プラスが何も出来なかったと聞き、ゴーは俄然やる気になる。

 久しぶりに暴れられそうだと思い、快く引き受けた。

 狙いを定めたようだ。

 今回の標的は、ファーマだ。


「その勢よ。コテンパンにやっつけて頂戴」

「おっ? 負けたのを根に持ってるのか?」

「違うわよ! それにあの子に会ったら、きっとムカついちゃうと思うから気をつけなさい」

「あん?」

「二度と見たくないわ、あの憎たらしい顔!」



 プラスもイラついていた。アッシュと同じだ。

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