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~お姉さんと進むギルド王国~  作者: 二月ふなし
第2章 ヴァリアード強襲 編
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63.新たな仲間

 プラスが紹介したギルド最高の逸材というのは、とても不快なあの青年だった。

 2度と会わないつもりだったアッシュ。

 しかし、最悪の形で再会を果たしてしまう。


「知り合いなら話は早いわね!」

「違う! 誰さそいつ!」

「この子はティゼット、ティゼット=アールシー。アンタの一つ下、後輩ね」

「えぇっ⁉ コイツ、オレより年下なのか⁉」


 年下と聞いてえらくビックリするアッシュ。

 自分より背が高い、雰囲気からしてもてっきり年上だとばかり。

 

 ティゼットは無言でコクッと頷く。

 何を考えているのかさっぱり分からない。


「ちょっと無口だけど悪い子じゃないわよ、むしろかなりいい子ね」

「ホントかよ、昨日殺されかけたんだけど……」


 アッシュはそう言って相手を睨みつけた。

 昨日色々あったのだから当然だ。


 ティゼットはいつものように顔をそらす。


 プラスが言うに、ティゼットはギルドが育成したハンターの中で、最も優秀な成績を持っているそうだ。

 今はBランクだが、いずれはAランク、支部長になれる秀才だという。


「フン、どうだか」


 こんな奴が支部長の教区なんて絶対に嫌だ。

 そんなのお断り。

 アッシュは心底そう思う。


「とにかく! ティゼットはこれからアンタの部下よ!」

「はあ⁉ どうしてそうなるのさ⁉」

「そう言うことだから頼んだわよ」

「聞けよ!」


 いきなり部下だと言われても納得できるわけがない

 アッシュはお姉さんに食ってかかる。

 

 ティゼットの方は相変わらずコクコクと黙ってうなづくだけだ。

 まるで意思を感じられない。


「なんでオレがこんな奴の……それに部下とか欲しくない!」

「だってその方がアンタは力を発揮できるんでしょ? 知らないけど」

「マルトンでいいさ! 今回だって持ってきたし!」

「ダメよ! あれはハンターじゃないから認めないわ!」

「なにさ! じゃあ今から登録させに行くさ!」

 

 多感な時期のアッシュは、なるべく一人で行動したいところ。

 なので、部下はいらないと言い張っている。


 ティゼットは向きを変え、2人を交互に確認している。

 不思議と困ってるように見える。


「それにティゼットはアンタとタイプが似てるのよ」

「似てる? どこがさ?」

「ティゼットもアンタ同じで得意なオーブがないの」

「えっ?」

「苦手もないけどね」

「…………」


 ティゼットはいわゆる、万能型と言われるタイプ。

 基本的にどれも卒なくできるが、得意もなく苦手もない。


「はあ……」


 アッシュはそれを聞いて、一瞬僅かな親近感が生まれるも、光撃(ハード)が苦手な自分より性能が一つ上だと知りガックリ来る。


 オーブのタイプは大体が、分離(リーブ)が得意な遠距離型、光撃(ハード)が得意な近接型、そして、ティゼットのように苦手のない万能型に分けることが出来る。


 逆にアッシュのように秀でた物がなく、尚且つ苦手があるのは大変珍しい。

 滅多にお目にかかれない希少種だ。

 見ての通り、アッシュはそのことをとても気にしていた。


「今までわたしが鍛えてあげてたんだけど、アンタと行動させた方がいいってゴーが言うのよ」

「アイツ……また余計な事を」

「こういうのだけは信用できるわ、だからこれから一緒に特訓しなさい!」

「はあ……」


 コイツと特訓なんてしても怪我するだけだ。

 何より集中できない。

 昨日嫌と言うほどそれを味わったのだから。


「はい! と言う訳で仲良くしなさい!」

「断るさ」

「まずは宜しくの握手からね」

「聞けよ……ん?」


 アッシュが隣を見ると、白っぽい手が。


 ティゼットが手を差し伸べていた。


「…………」


 よろしくお願いしますと言っている。


「…………」

 

 アッシュはその手をじっと見るが、


「フンッ」


 差し出された手をパシッと払いのけた。


「あっ、こらアッシュ! だめじゃない!」


 プラスが注意するも、アッシュは効く耳を持たずそっぽを向く。


「…………」


 ティゼットは払われた右手を見ている。

 心なしか少し悲しそうだ。


「う~ん、どうしようかしら?」


 そんな2人を見て困りものなお姉さん。

 

 少し考えて、


 ポンッ!


「そうだわ! 今から模擬戦なんてどうかしら?」

「は? 模擬戦?」

「そう! どうせならお互いの実力を確認した方がいいでしょ?」


 プラスは考えた。

 レクスの時も最初は仲が悪かったが、戦った後すっかり仲良しになっていた。

 一度拳を交えればもうお友達。

 なので2人を戦わせることにしたのだ。


 アッシュは模擬戦と聞いて顔をしかめる。

 対戦相手は自分より少し背が高い。

 何より自分の上位互換なのでビビっていた。

 しかも、見るからに強者の風格が漂っており、また秀才ということもあってか普通に強そうだ。


 ティゼットの方も今度は頷かずに、焦った様子でギルド長を見ている。

 同じく戦いたくないようだ。


「そうと決まればさっそく行くわよ! いざ! わたしの特訓施設に!」

「放せよ! って痛い痛い痛い⁉」

「……ッ⁉」

「ふんふ~ん」


 プラスがアッシュの腕をガッチリ掴んで無理やり部屋を出た。

 その腕力がとても強く、振り払うことができない。


 ティゼットはそんな2人の後を黙ってついて行くが、少しアタフタしているように見える。

 きっと新しい上司が心配なのだろう、よくわからない。







 ──3人はギルドの訓練施設にやって来た。

 中にはまだ訓練中の者も多くいる。

 しかし、ギルド部長であるプラスが権力を行使し、模擬戦を始めると言って貸切にした。


 また、これからBランク同士の試合あると周囲に言いふらし、観客も集めて戦いのお膳立てもバッチリだ。

 ギルドの者だけなく修道女や悩める子羊まで、軽く見世物状態であった。


光撃ハードの使用は禁止よ!」

「なんでさ?」

光撃ハードは危ないわ。でもそれ意外なら何をしてもいいわよ」

「ウィークオーブはいいのかよ?」

「う〜ん、いいんじゃない? ティゼットもそれで良いかしら?」


 ティゼットはコクッと頷く。

 OKだと言っている。


 それ見たアッシュは、相手もやはりウィークオーブを持っているのかと無駄に警戒した。


「それに光撃ハードがない方がアンタは良いでしょ?」


 舌打ちをするアッシュ。

 だがプラスの言う通り、これで持ち物は5部になる

 これなら勝てるかもしれないと期待に胸を膨らませた。なので、


「オレが勝ったら部下になる話は無しだからな」

「……⁉︎」


 その発言に驚いて、言葉の出ないティゼットの代わりに、プラスが、


「いいわよ、勝てるならね。まあ無理だと思うけど」

「フンッ、やってやるさ!」


 昨日は散々な目に遭わされたアッシュ。

 仕返しするには良い機会、やる気だ。


「じゃあティゼット! 手加減は無用よ! やっちゃいなさい!」


 一方、話が勝手に進み、2人を交互に世話しなく見るティゼット。

 明らかにオロオロしている。


「じゃあいくわよ! スタート!」



 オーブを出した。

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