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~お姉さんと進むギルド王国~  作者: 二月ふなし
第1.5章 覚醒アッシュ 編
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49.告白

 夕暮れまで遊んだ。

 その後、レクスは夕食に及ばれしていたのでプラス宅へ。

 現在、メイドのステラを入れた3人で晩御飯を食べている。


「やはりうまいな」

「フフフ、ありがとうございます」


 レクスの素直な感想。

 ステラも嬉しそうに返す。


「お前はいいな。毎日食えて」


 レクスの横に座ってアッシュは食べている。


 それに向かい合う形でステラがいる。

 おいしそうに食べる子どもを見て、ニコニコしていた。


「最近はアッシュさんも手伝ってくれるんですよ」

「ほう、コイツがか?」

「なにさ、その反応」


 子どもだってお手伝いくらいする。

 別に驚くべきことでもなんでもない。


「そうか。なら今度なにか作ってくれ」

「そういうのって普通逆な気がするんだけど」

「どういうことだ?」


 分からないならいい。

 アッシュは食べ進めた。


 そんな話をしながら進めていると、ふとステラがニコニコして言った。


「あっ、そういえば、お二人ともお昼のようにはされないんですか?」


 アッシュが少しむせる。


「昼? なんのことだ」

「仲良くお食べになっていましたよね? あーんって」

 

 レクスもむせた。

 昼間のこと思い出したのか、2人は同時に顔をそらす。


「フフフ、すいません。可愛らしかったのでつい」


 知り合いに見られると恥ずかしいようだ。

 2人は顔を上げられない。


「どうぞ、私のことはお気になさらず」


 メイドさんはニコニコしていた。







 ──食事を終えて。

 あと片付けを終え、その他もろもろも済ませ、寝る時間となった。


「そろそろ寝る時間ですよ」


 ステラが本を閉じた。


「そうだな。行くぞアッシュ」


 レクスも本を閉じた。


「わかったさ」


 2人は寝室へと向かおうとしたが、


「あっ、レクスさん。すみません。今日は私と寝てください」

「なんだ、一人じゃ寝れないのか?」


 レクスはいつも使用人と寝るという。

 よって、この日も当たり前のようにアッシュと寝るつもりであった。


「いえ、プラス様にキツく言われまして、すみません」


 前回の反省を踏まえ、プラスは策を用意していた。

 ドヤ顔をするプラスの顔が浮かんできて、レクスは少々ムッとなる。


「なら仕方がない。今日はステラと寝る」

「なんかあっさりだな」

「悪いな。今日はステラと寝る」

「なんで2回言うのさ」


 班分けは決まったようだ。

 レクスはメイドさんの後ろをついて行く。


「はあ、寝るか」


 少しの残念そうなアッシュの背中であったが、


「おいアッシュ」


 レクスが部屋に入ろうした時、軽くウィンクを。


 そのまま上機嫌に部屋の中へと入っていく。


 アッシュはしばらく部屋の前で立ちすくんでいたが、


「……なにさ」


 布団の中に入る。







 ──時間が経ち、ここはアッシュの部屋。

 カーテンから月明かりがうっすら照らされる。


 アッシュはドアに背を向ける形で横になっている。


 しかし、部屋の中にはもう一人。

 丸くなったその背中をじっと見る少女が立っていた。

 なにやら腕に枕を抱えている。


「少しずれろ。ワタシの場所がないぞ」


 レクスだ。

 部屋からこっそり抜け出したレクスが、枕を持ってきてアッシュのところにやって来た。

 ベッドはただいまアッシュが占拠していて、自分の入るスペースがないと訴えている。


 アッシュが無言のまま横にズレてあげた。


「フンッ、初めからそうしておけ」


 レクスが枕をボンッと投げ込みベッドに入り込む。


 相手に背を向ける形で寝ているアッシュ。

 レクスはその背中に身体をよせた。


「……音がするな」

「寝ずらいんだけど」

「いや、このままでいい」


 アッシュの背中に顔を埋めて、心臓の音を聞いてる。

 その音から察するに、冷静を装っているだけのようだ。


「話があるんだろ」

「そうだったな」


 昼間に言っていた話、というのがずっと気になっていた。


 もちろんレクスはそれを言うためにここに来た。

 だが今はこのままでいたいのか、口を開こうとしない。


 そうしている間にも、背中に深く顔を埋めようとする。


 しばらく身体をよせ合っていたが、


「こっちを向け」

「……むり」


 アッシュの拒否。


「誰も見てないぞ。ワタシとお前だけだ」


 そうレクスが耳元でささやいた。


「フッ、正直なやつだ」


 ベッドが月明かりで照らされた。

 お互いの顔はよく見えない。

 だが見つめ合っている、ということは分かる。


 暗いと言えど、アッシュはこうやって見つめられるのが苦手だ。

 その紅色の瞳が自分の目を釘付けにするからだ。

 今だってそうだ。

 秘めた思いが強くなり、少女のことしか見れなくなってしまう。


 分かっていてわざとやっているのか。

 それとも同じような心情なのか。

 レクスも相手を目を見て離さない。


「案外、可愛い顔をしているな」


 レクスが小さく笑った。


「プラスに似てるって言われた」

「全然似てないぞ」

「レクスは目が綺麗だ」

「そうか」


 また無言になる。


 しかし、それはさっきとは違う。

 次が分かっているかのような、何かの前触れのような。

 

 お互いに、顔をゆっくり近づける。


 かすかな息がかかるほどに、そして目を閉じた。


 すると、


「おりゃ!」


 突然、レクスがほっぺをつねった。


「ふぇ⁉」


 アッシュから変な声が出る。


「おお、思ったより柔らかいな」

「はひふんふぁ」

「前から触ってみたかったんだ」


 レクスは両手で柔らかいほっぺをつねり、伸ばしたりぐるぐるしたりしてその感触に関心している。


「ほう、これは癖になるな」

「はふぁへ!」


 早くやめて欲しい。

 だが上手く言葉が使えない。

 なにより、良い雰囲気をぶち壊されたことにアッシュはとても怒っている。

 

「どうした? 何言ってるか分からないぞ?」


 レクスが煽る。


「怒ってるのか? 全然恐くないな」


 怒りが届かない。


「悪いのはお前だ。こんな──」

「ふぁい!?」


 耐えかねたアッシュがやり返し、レクスからも変な声がもれた。

 

 思ったより柔らかい。

 確かにクセになるかもしれない。

 アッシュも夢中になって触っている。


 その扱いに、当然レクスも怒り出す。


「へふふゅふぁはふぁへ!」

 

 何を言っているのか分からない。

 何を言っているの分からないが、しばらく2人はお互いのほっぺを仲良くつねっていた。


 やがて、


「……もういい?」

「ああ」


 バカらしくなった。

 2人は手を離した。


「いてて……」


 ほっぺがヒリヒリする。

 アッシュは涙を浮かべながらさすっている。

 

 やり返されるとは思わなかったらしい。

 レクスも頬の無事を確認している。


 どうしてこうなってしまったのか。

 おかげでムードもすっかり冷めてしまった。


「話がある。外に出るぞ」


 レクスが提案した。


「えっ、別にここでも」

「それでは意味がない。さっさと着替えろ」

「どういう意味さ」


 今は深夜真っ只中。

 当然外は真っ暗で、子どもが出て良いような時間ではない。


「怖いのか?」


 2人は着替え始めた。







 ──外に出ると、レクスに連れられる。


「ここでいい」


 やがて第一教区の入り口までやってきた。

 あまり閉まることのない見せかけの門が2人を出迎える。


「うっ、寒い。どうしてこんなところまで……」


 アッシュは肌寒さに愚痴をもらす。

 別に部屋でもよかったのではないか。

 どうしてこんな所まで連れて来たのか疑問に思う。


 レクスの方はと言えば、どこか凛々しい顔つきで遠くを見据えている。

 その風で揺れる青髪が、アッシュには少し恐く感じた。


「で、話ってなにさ?」


 ここまで来てどうでもいい話だったら怒る。

 と言うか、すでに怒っている。


「一度しか言わん」


 レクスが振り返り、右手を前に広げた。


「これから父さんの元へ向かう。アッシュ、お前も来い」

「えっ……」



 耳を疑った。

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