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~お姉さんと進むギルド王国~  作者: 二月ふなし
第1章 敵の敵は敵 編
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4.黒い左腕

 ハリスは戦闘態勢を取る。

 イービルも鋭い爪を立て、今にも襲いかかりそうだ。


「ガルァァァァアアア!!!」


 爪を前にかざし、攻撃を仕掛けた。


 ハリスはかわし、背後に回る。

 

 オーブを放つも、少しのけぞる程度であまり効果はない。


 強い。

 敵は頑丈で、分離(リーブ)は通用しない。

 ならばと今度は拳を堅く握り、そこにシュイーンッと光を溜める。


光撃(ハード)!」


 そして、向かってくる爪をかわし、その光る拳を標的に思いっきりぶつけた。


 綺麗に直撃。

 イービルは吹っ飛び、木に凄まじい勢いで激突。

 これはかなり効いたらしくうめき声をあげた。


「おお……」


 アッシュは驚く。

 ハリスは怪我で片手しか使えないというのに、イービルを圧倒していたからだ。

 同時に自分をよく思っていないはずの執事が助けに来てくれたことが意外だった。

 実はいい人ではないのかと。


「これで終わりですか」


 イービルに向かい、ハリスは拳をシュイーンと、ゆっくり近づく。

 もう一度光撃(ハード)を撃ってトドメを差すつもりだ。


「ガルァァァァアアア!!!」


 しかし、突然イービルが叫び声をあげた。

 身体の周りに3つのオーブが出現する。


「ぬっ」


 それが一つずつ、邪魔な執事に向けて発射された。


 ハリスはヒラリとかわすも、オーブが軌道を変え、再び襲いかかる。


「なんだと⁉︎」


 何度避けても、しつこくついてくる。


 イービルというのは大体が物理攻撃。

 たまに分離(リーブ)もどきや、口から光線を吐いたりするくらい。

 こうやってオーブを巧みに使ってくる個体は初めてだ。

 ハリス自身、未知の体験に戸惑っていた。

 

 追尾する3つのオーブで手一杯。

 アッシュを見る余裕がなくなっていた。


 そのスキにイービルがメインディッシュの少年をジロジロ見る。

 アッシュは気がついていない。


「ガルァァァァアアア!!!」


 気がついた時、すでにイービルが目の前で爪を振り上げていた。

 突然のことで足がすくみ、動けそうにない。


「アッシュさん!」


 ハリスがとっさに少年の元に向かう。


「かはっ⁉」


 そのままアッシュを庇い、代わりに鋭い爪の餌食になってしまった。


「ハリスさん⁉」


 やられ際に光撃(ハード)を放ち、イービルを少年の元から遠ざけた。

 しかし、地面に倒れ込んだまま動かない。

 元々怪我をしていたのもあってか、今の攻撃を受けてもう戦えないようだ。


「アッシュさん、逃げてください……そして早く、お嬢様を……」


 そう言い残し、ガクッと意識を失った。


「そんな、ハリスさんが……」


 アッシュが振り向くと、イービルがジッと見ていた。


 ハリスに逃げろと言われた。

 だが、自分を庇って重症となった人をおいて逃げるワケにはいかない。

 第一、逃げたところで逃げられそうにない。

 アッシュはその場から動けない。

 

 3つのオーブが少年に向け、勢いよく発射された。


 もうダメかと思ったその時、


 身体に異変を感じた。

 オーブとはまた別の力。

 身体の中を行き交うような不思議な感覚を。


 左腕に集まるのを感じ、ふと腕を見ると、


「なにさ、これ⁉︎」


 アッシュは驚愕。

 肘から下まで黒く染まっていた。


 禍々しいまでの黒に染まっている。

 爪のように鋭くなった五本の指。

 それは目の前の恐ろしい生き物にそっくりだ。


 戸惑うアッシュだが、前を見ると、すぐそこまでオーブが迫っていた。


「うわっ⁉︎」


 とっさにオーブを弾く。

 左腕が勝手に動いたのだ。


 オーブを一瞬でかき消し、光の跡が辺りに飛散する。


 アッシュは驚いて腕を見る。

 直撃したはずなのに全く痛みがない。

 それどころか傷一つ付いていない。


「ガラァァアア!!」


 再びイービルが獲物に飛びつく。

 今度はその鋭い爪で切り裂こうとした。


「うっ⁉」


 アッシュは左腕でガードするも、相手の力に耐えられない。

 後方へ吹っ飛ばされる。


「い、いてて……」


 そのままコロコロと転がり頭を押さえる。

 あわてて確認すると、またしても傷一つ付いてはいなかった。

 そもそも血なんて出るのだろうか。

 

「この腕は、一体……」


 考えている暇はない。

 イービルが次のオーブを放ってくる。


 アッシュはまた腕を払い、エネルギーを消し飛ばした。


分離(リーブ)!」


 このまま攻撃を凌ぐだけではいずれやられてしまう。

 オーブを出して反撃するが、やはりダメージを与えることができない。

 

 やはり分離(リーブ)では倒せない。

 光撃(ハード)なら通用するらしいが、残念なことにアッシュは使えない。

 このままやられるのも時間の問題だ。


 そんな中、ふとあることを思いつく。


 この腕で分離(リーブ)を撃つと、どうなるのか。


 防ぎ続けるのも限界だった。

 やってみるしかない。

 すかさず腕を構えた。


 もう考えてる時間はない。

 これに全て賭けるしかないと覚悟を決めた。 


「食らえ! 分離(リーブ)!」


 アッシュが叫ぶと、


 腕に光が集まり、直後に黄色の光線が放射された。

 それはまるでビーム状の黒い分離(リーブ)だ。


 光線が直撃。

 その熱量にイービルの身体が溶けだした。


「わっ!?」


 想像よりもすごいモノが出た。

 本人も放出しながらビックリする。


 唸り声をあげるイービル。

 そのまま崩れ落ちるようにあっさり消滅した。


 その場にいるのは少年だけとなる。


「ハア……ハア……」


 一度に大きな力を使ったアッシュはフラフラだ。

 イービルが消滅したのかどうか確認できない。


 この黒い腕は何なのだろうか。

 自分の身体に何が起こったのか。

 意識が朦朧とする中、背後から声がする。


「──アッシュ! 大丈夫なの⁉」 


 プラスだ。

 ようやく駆けつけて来た。


 フラフラのアッシュに駆け寄ろうとしたが、


「あなた、その腕……っ⁉」


 足を止めた。

 少年から不気味に生える黒い腕に戸惑いを見せる。


「プラ、ス……」

 

 身体の力が抜け、アッシュはその場に倒れ込んだ。


「アッシュ⁉ アッシュ!」



 プラスがあわてて駆け寄る。

 黒い腕は消えていた。

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