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~お姉さんと進むギルド王国~  作者: 二月ふなし
第1.5章 覚醒アッシュ 編
46/142

44.魔王 対 大魔王

 アッシュとベルル。

 2人の統合により、謎の少年が爆誕する。


 まずはこの空間が気に入らない。

 手の平からボッと黒いオーブを出した。


 巨大化させるにつれて、輝きも増加する。

 ある程度大きくなると、今度は収縮させて密度を高めていく。


 やがて、上空にバッと掲げ、


「──大魔王分離ロイヤルディモンリーブ!」


 黒い光線が放たれた。


 一直線に伸びた閃光が、空間の天井をガラスのように突き破る。


「だっしゅーつ! とうッ!」


 開いた穴めがけ、破裂(バースト)で駆け上がる。

 一気に空間の外に出た。


「うーん? どこさ、ここ」


 新たなる空間が広がっている。

 何もなかった先ほどとは違う。

 周りにいくつかの柱が建っており、まるで古い遺跡みたいだ。

 ジメジメしていてちょっと暗い。


 これがアッシュの精神世界なのだろうか。

 少年は暗いのが苦手なため怖がっている。


 早くここから出たい。

 出口はないのか。

 考えていると、何か閃いたようで顔を上げた。


「なるほど、ここも破壊するのか! やっぱりオレって天才⁉」


 顔の前で手を組み、目を輝かせる。


 しばらくキラキラしていたが、再びオーブを上に掲げた。


「よし! 大魔王ロイヤル……」

「──よせ。自滅する気か」 


 何者かがシュッと現れた。


「うーん?」


 それは自らを魔王と呼ぶ子ども。

 アッシュと同じ顔の少年だった。

 

 顔が同じ。

 しかし髪色の違う2人の少年が、互いを見ている。

 何とも奇妙な光景であった。


「貴様、何者だ」


 魔王が聞いた。


「えっ、オレ? オレは……あれ?」


 名乗ろうとしたが、ふと、ほっぺに手を当てた。

 そう言えば考えていなかった。


「オレか? オレはベッシュ! いや違う……アルル! あっ、待った。今のは無し」


 ピッタリのカッコいい名前を探る。


「いや、分かってる。分かってるさ。ただちょっと待ってほしい」


 中々見つからないようだ。

 少年は頭をグルグルさせている。


「……おっ!」


 どうやら決まったらしい。

 両手に腰を当て、自身の名を元気よく宣言した。


「いいかよく聞け! オレはアシュベル、大魔王アシュベルさ!」


 と言って、シャキーンッ、変なポーズを取る。

 これは最高に決まってしまった。

 アシュベルは余韻に浸っている。


 一方、魔王。

 先ほどと違って相手を睨んでいる。


「貴様、魔王だと」


 逆鱗に触れたみたいだ。


「うーん? そっちも魔王なのか。でも残念! オレの方が上位ッ!」


 と言って、中指をビシッと立てた。

 ちなみにどちらも魔王ではない。

 ただ悪魔という生き物は、自らを魔王と名乗る傾向があるだけだ。


「いいだろう。先に始末してやる」

「おっ、やるか? 見せてやるさ! 大魔王の実力を!」


 首をパキッと鳴らし、ポンポン飛び跳ねる。

 

 二匹の自称魔王が、手の平から黒いオーブを出す。

 片方は紫炎を禍々しく纏う。

 もう片方は緑の輝きを放つ。


 先手は魔王から。

 破裂(バースト)で急接近。


「うおっ⁉︎」


 さっそく不意を突かれたアシュベル。

 無抵抗に攻撃を受け、後方に飛ばされた。


「うわああああ!」


 悪魔の戦いが始まった。


 魔王が追撃し、壁まで叩きつける。

 

 埋まったところをさらに殴りつけ、丁寧に埋めていく。


「ちょっ、ちょっと待って! こっちはまだ身体が!」


 アシュベルは抵抗を見せる。

 だが、相手の容赦のない猛攻により、ただ埋まり続けるだけだった。


丸盾シェル! アンド分離リーブ!」


 殴られながらも、一瞬のスキを見極め盾を張る。


 その間にオーブを放ち、対象を遠ざけ、脱出を図る。


 十分に距離を置いたところで、オーブを連続で撃ちまくった。


 魔王に全て弾かれた。


「無駄だ」


 お返しとばかりに。

 魔王が大量のオーブをお見舞いした。


「ぎゃあああ!!!」


 アシュベルも同じように弾こうとした。

 が、一つも返すことができず、全弾命中。


 煙に埋もれた。


「ど、どこに行ったのさ⁉︎」


 ひょっこり顔を出すと、敵の姿がない。

 取り乱してオロオロしている。


 すると、背後から魔王が現れ、その後ろ頭を殴り抜いた。


「うがっ⁉」


 頭に激痛が走り、前方に飛ばされた。


 魔王が追いかける。


 アシュベルは体勢をくるりと変えて迎え撃つ。


 そのまま接近戦に移行した。


「ぶはっ⁉︎ べぶっ⁉︎」


 魔王が圧倒。

 アシュベルは何度も被弾する。

 はたから見ると、一方的に暴力を受けているだけに見える。

 同じ顔の子どもが、同じ顔の子どもを苛めるといった不思議な光景だ。


 完膚なきまでにボコボコにしていた。

 突然、弱すぎる相手に呆れたのか、接近戦をやめて空高く飛び上がる。    


 巨大なオーブを出し、それを圧縮した。


「へっ、面白い!」


 アシュベルはニヤッと笑う。

 左腕を上空にかかげ、オーブを出す。


 同じようにエネルギーを凝縮させていく。


 やがて、発射する準備が完了した。


 アシュベルの目が、キラーン☆


「──奥義! 大魔王分離ロイヤルディモンリーブ!」


 互いに発射した黒い光線が、凄まじい勢いで衝突。

 衝撃の余波が飛散し、周りの石柱を破壊した。


「あれ?」

 

 初めの3秒くらいは良い感じに競り合っていた。


「うわああああああ!!!」


 が、一瞬でアシュベルが押し負け、そのまま光線に吞み込まれた。


 オーブが消えると、こんがり焼けたアシュベルが。

 プスプスと煙が上がっている。

 仰向けで倒れ、もうピクリとも動かない。


 魔王がゆっくり近づく。

 念のためトドメを刺しておこう。

 オーブを構えた。


 が、


「かかったな!」


 死んだふり。

 アシュベルが、不意に起き上がり、


「秘技! 生ゴミアタック!」


 手に握っていた瓦礫を代用して、思いっきり投げつけた。


 魔王の視界が一瞬奪われた。


 そのスキに、アシュベルが破裂バーストで背後に取る。

 拳にオーブを乗せ、後ろ頭を狙う。


「死ねえ! ロイヤルパンチ──ぶへっ⁉︎」


 しかし、逆に振り返った魔王の光撃(ハード)がカウンターで入る。


 すごい勢いで回転し、壁まで吹っ飛んでいく。


 激突したアシュベルはまたも動かなくなった。


 魔王がそれを見下した。


「な、なに見てるのさ……」


 見世物じゃないと訴える。


「貴様に魔王を名乗る資格はない」


 戦い方が下品すぎるとの指摘が入る。

 魔王なら魔王らしく、もっと高貴に戦わなければ。


「うるさい、大魔王だって言ってるだろ……そっちはいいさ、ちょっと強いくらいで図に乗れて……こっちがどれだけ必死にやってると──」

「ほざけ」

 

 今度こそ、息の根を止めるべくオーブを出した。


「あ、足が……ひいぃ、来こないで!」


 アシュベルが命乞いを始めた。

 目には涙を流し、命の大切さを訴えている。

 これは、わざと足を取られたフリをして、相手を油断させるという、アシュベルの天才的な作戦だ。


「ひええええ! 助けてえええ!」


 しかし、近づいてこない。

 無表情で見下ろしていた。


 アシュベルの演技がバレバレであった。

 バレてもなお続けようとする彼に対して、憐れみすら覚えようとしたが、


 ──バンッ!


「おっ?」


 突然、辺りに衝撃が。

 2人の立つ地面が大きく揺れた。


 あまりに激しい揺れのため、魔王がバランスを崩す。


「今だ!」


 アシュベルは瓦礫から抜け出し、相手の顎を蹴り上げた。


 クリーンヒット。

 魔王がグラつき膝をつく。


「へへんっ! どうよ!」


 初めて攻撃が当たった。

 大魔王も嬉しそうだ。

 

「おー、向こうもやっていますねえ。お隣さん」


 上の方を見ながら、何やら感心な様子。

 

 ニヤッとし、まっすぐ指を差して言い放つ。


「やっぱ同時に相手するのはキツイらしいな!」



 激しく揺れた。

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