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~お姉さんと進むギルド王国~  作者: 二月ふなし
第1.5章 覚醒アッシュ 編
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31.今時のハンター

 3日後、アッシュは教会を訪れていた。


 目的はオーブスーツを買うためだ。

 赤一択のプラスにバレると面倒なので、レクスと遊んで来るとウソをついて来ていた。


 さっそく受付のお姉さんにスーツが欲しいとお願いする。

 指を差した先にあるのはもちろん、緑のスーツ。


 用意に少し時間が掛かるらしい。

 アッシュは近くの休憩場に座って待つ。


 暇である。


 ふと隣を見てみると、男が目に入る。

 ガッチリとした鎧を着こんでいるが、頭には何も被っていない。

 生え際がかなり危うい中年のおじさんだ。


 このおじさんもハンターなのか。

 しかし今時のハンターにしては服装が少々古臭い。

 この辺りで鎧を着ている人など見たことがない。

 中にスーツを着ているのだろうか。


 アッシュがそんなことを考えていると、おじさんの頭がピクッと反応した。


「おや? どうかされましたか?」

「あっ、なんでもないさ」


 おじさんははて? と不思議そうにする。


 頭を見ていた事がバレたのか。

 アッシュは内心ビクビクする。


「見ない坊やですね。失礼しますがどちらから?」


 子どものアッシュに対しても丁寧な口調。


 質問を受け、アッシュは戸惑う。

 イービルから来ましたとは、とても言えないからだ。

 

 どう答えたモノかと悩んでいると、 


「おや? まだ名乗っていませんでしたね。私はカール=メルメルトと言います。坊やと同じイービルハンターをしている者です」


 やはりこのおじさんもハンターだった。


 頭を見ていたことはバレなかったようだ。

 アッシュはホッとする。


「どうしてオレがハンターって……」

「これは失礼、スーツがチラッと見えたもので」


 アッシュは、この日も一応赤色のスーツを装着していた。

 赤色は目立つ。


「おや? と言うことは、もしや坊やがアッシュさんですか?」

「ヘっ? そうだけど」

「でしたか。プラスさんから聞いていますよ」

「プラスから?」


 プラスとお知り合いのようだ。


「はい。イービルから出てきた坊やだと」

 

 アッシュは固まる。

 

 目の前のおじさん。

 自分がイービルから出てきたことまで知っていた。

 つまりプラスがそこまで信用している相手ということになる。


「例の件でしばらく教会のお世話になっておりましたが、ようやく復帰できまして。今日はその手続きを」

「そっか。オレのせいで……」

「何を言います。お互い大変でしたね」


 同じ被害者だ。

 カールは気にしていない。

 怪我が治ったので最近ハンターに復帰したそう。

 ちなみにランクはBランクとのことだ。


 プラスとは、仕事仲間としてお互いに信頼している。

 ギルド計画の数少ない賛成者でもある。

 彼女から事前にアッシュのことを聞いていたらしく、誤解もなくすんなりと受け入れていた。


「ところで、プラスさんがいないようですが、坊やは一人で教会に?」

「ちょっとスーツがほしくて」

「おや? スーツなら今着ているではありませんか」

「それが……」

 

 これまでの経緯を説明した。


「これは失礼。私はオーブスーツとやらにはどうも疎くて」

「ならカールさんのスーツは?」


 初めから疑問に思っていた。

 今時のハンターがどうしてそんな重そうな鎧を着ているのかと。


「はい。私はこの鎧で十分です」


 下から着ているワケではなかった。


「どうも肌に合わないようでして、これが私のスーツみたいなモノです」


 カールは遠い目をして話を続ける。


「この鎧は私がハンターになる前から愛用していた物です。それなりに愛着もあって手放せないんです」


 このおじさんは変わり者みたいだ。

 長いことをハンターをやるとこんな思考になるのか。

 ゴーやプラスも残念だが、この男はそれ以前の話であった。

 ここにはスーツに無頓着な人しかいないのか。


「プラスさんはどちらに? 近いうちにご挨拶をと」

「あー、プラスはちょっと……」


 プラスはただいま風邪を拗らせている。

 今は自宅でステラが看病している。

 ハリスは全く役に経っていないのだが、一応お嬢様のそばにいる。


「伺おうかと思ってたのですが、今回はやめておきましょう」

「うちのプラスが申し訳ないさ」

「構いません。挨拶ならいつでもできますから」

「プラスにもよく言っておくさ」

「はい。よろしくと伝えておいてください」


 目的のブツも手に入ったことだし、帰ることにした。

 カールも用事を済ませたらしい。

 2人で教会を出る。

 

 ここでお別れだ。

 笑顔でおじさんに手を振っていると、


 ──カーン、カーン。


 大きく鳴り響いてしまう。


「おや? これはイービルの音ですね」


 街にイービルが現れた。


「こんな時に、なんでさ」


 街のエースであるプラスが寝込んでいる。

 ハリスもお嬢様から離れることはないだろう。


「私が行くしかないようですね」

「オレも行く」

「おや? 坊やはまだCランクではありませんか」


 見習いに無理はさせられない。

 カールは静止する。


 ちなみにレクスも風邪を移されて寝込んでいる。

 アッシュの部屋で遊んだ時に、プラスと話したのが原因だ。


「でもカールさんだって病み上がりだし」

「それはたしかに……勘が鈍っているやもしれません。お願いしましょうか」


 アッシュのことは予め聞いていた。

 問題ないだろうとカールは判断した。


「では、行きましょう」


 

 教会を後にした。

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