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~お姉さんと進むギルド王国~  作者: 二月ふなし
第1章 敵の敵は敵 編
25/142

24.神激

 ギリギリのところで助けに来てくれた。

 先ほどまで上で戦っていた2人。

 駆けつけたエリーが割って入り、戦闘を中止させた。


 こっぴどく叱られるゴー。

 それを茫然と見ていたプラス。

 ボロボロの2人を治療している間に、マルトンが慌てた様子でやって来て、アッシュたちが危ないと伝えた。

 

 そして、ゴーが地下を強引に掘り進め、なんとか間に合った。


「アッシュは大丈夫なの?」


 レクスに聞いた。

 先ほどからぐったりしている。


「ああ、オーブの使い過ぎだ」

「そう。ありがとね。アッシュを守ってくれて。もう少し任せてもいいかしら」


 前を向きながら言う。


「やれやれ、とんだ邪魔が入ったわい」


 目先にいるのはザイコール。

 服に着いた汚れを払いながら壁から出てくる。


「よお、最近よく会うじゃねえか」


 ゴーが話しかけた。

 この老人とは前に、アッシュを助けた時に会っていた。

 

「なんじゃ、ワシは会いとうないぞ」

「おいおい、傷つくじゃねえか」

「貴様はガキの頃からそうじゃ。身勝手でワシを困らせる。上で共倒れになっておればよかったモノを」


 何かと迷惑な存在。

 だから色々擦り付けて闇に葬ってあげたのに。


「安心しろ。ソイツも今日でおしまいだ」


 ゴー的には全てどうでもよかった。

 早く目の前の老人をぶん殴りたい。

 そのためにここに来たのだから。


 腕を組んで戦闘態勢に入る。


「解釈の一致じゃな」


 ザイコールも構えた。


「悪いがここは一人でやらせてくれ」


 プラスに申し出る。


「はっ?」

「二対一は性に合わん」

「イヤよ。生憎、わたしにそんなポリシーはないわ」


 と言って、プラスは構える。

 気が済まないのは彼女も同じだ。


「ほう、同時に来るか。流石にワシでも厳しいな」


 2人を相手取るのは少々厳しい局面。

 

 そこでザイコールは懐から丸い球を取り出した。


「これ抜きでの話じゃがな」


 体内に取り込み始める。


「アイツ、何してるのよ」


 怪しい行動。

 プラスが尋ねた。


「あの野郎、クロスオーブを使う気だ」

「クロスオーブ? なにかしら?」


 聞き慣れない単語に首を傾げる。

 説明してほしいようだ。


「ああ、一体どこから拾って来やがった」


 クロスオーブとは神さまの力が宿ったオーブだ。

 自分の体内にあるオーブと重ねることで強大な力を得ることができる。


 その効果は一度使えば、CランクハンターであってもAランク相当の力を発揮出来るようになる。

 世界でたったの2つしか存在しないと言われる超レアな代物だ。

 その内の一つをザイコールが持っていた。


「フッフッフッ」

 

 やがて、終わったようだ。

 身体から神々しい光を放ち、先ほどの老体が若干若返ったように。

 

「ヤバそうね」


 強さの段階が変わったことは明らかだ。

 敵から発せられる、ただならぬ雰囲気を感じ取る。


「俺は一人でやってもいいんだぞ」


 2人はオーブを出す。


「──雷神電来(ライデン)

「──全身丸盾(フルアーマード・ゴー)!」


 初めから全開だ。

 2人の力が急激に増大する。


 鋭い眼光のプラス。

 まだ未完成なため、時おり身体から雷が漏れている。


 ゴーの身体は荒々しいオーブで身を包まれる。


 対して、ザイコールは余裕なのか神々しい笑みを浮かべた。

 それは神さまにでもなったかのように、愚かな民を見降ろすかのように。


「来るがいい」


 神の合図で戦闘が始まった。


「行くぞ!」


 ゴーが突進。


 それに合わせプラスが、仲間を巻き込みオーブを大量連射。


 ザイコールは空中に避難。

 

 ゴーはすかさず破裂(バースト)を出し、タックルの軌道を修正した。


 ザイコールは吹っ飛ばされ、壁の中に埋まってしまう。


「今だ、ぶん殴れ! ガハハハハッ!」


 壁に埋まった神さまを殴りまくる。


 そこにプラスも参戦。


 ゴーの荒々しい拳が地面を深く削っていく。

 プラスのオーブが周囲に放電される。


 しばらく2人がかりでボコボコに殴っていたが、


「なに⁉」


 いない。

 気がつくと敵は消えていた。


「お返しじゃ!」


 近くの地面が盛り上がったかと思うと、そこから出てきた。

 

 背後についたザイコールは、オーブを拡散してぶっ放す。


 プラスはいち早く破裂(バースト)で回避、瞬時にその場を離れる。


「うおっ⁉」


 この中では鈍足なゴー。

 無情にも神のオーブの餌食となる。


「うおおおおおおおお⁉」


 腕を固めてガードするも、その凄まじい火力を前に動くことができない。


 そんな彼を犠牲に、背後を取ったプラスが光撃(ハード)で殴りかかる。


 が、神は全てを見通している。

 と言ったところか。

 ザイコールは瞬時にゴーへの攻撃を中断し、プラスと撃ちあった。

 

「ワシに勝てると思うてか!」


 神の力は強力だ。

 プラスが徐々に押され始めた。


「俺を忘れるなよ、ザイコール!」


 しかし、そこにゴーも参戦。

 さすがに分が悪くなる。


 2人の猛攻を凌ぐことができず、たまに被弾してしまう。


 スキをついたプラス。

 怯んだところにアッパーを繰り出し、空中に跳ね飛ばした。

 神さまはそのままクルクルと回転し、天に昇っていく。


 しかし、プラスは分離(リーブ)で追撃し、還るのを許さない。


「チイッ!」


 ザイコールはすぐに体制を立て直し、破裂(バースト)で空中に飛んでかわすが、


「捕まえたぜ!」


 ガシッ! 先回りしていたゴーに捕まってしまう。


「俺ごとやれ!」


 言い放つ。

 

 ザイコールはゾッとし、振り払おうとするも、ガッチリ掴まれてどうにもできない。


「ええい! 気色わるい! 放せい!」

「誰が放すかよ! じっとしやがれ!」


 モガモガしている。


 プラスが両手をかかげ、オーブを収集。

 雷が混ぜながら徐々に大きくしていく。

 周囲にその余波が流れ出る。


「──超・雷電分離(レイジングボルト)


 青い光がバチッと弾ける、轟音の鳴る巨大なオーブを作り上げた。


 それを忌まわしい男ども2人に叩きつけた。全力で。


 本当に仲間なのか。

 ザイコールは一瞬、自分を拘束している男を見た。


 しかし、


「すうううううう!」


 急に大きく、息を吸う。


「ハアアアアアア!!!」


 口を大きく開け、凄まじい勢いでビーム状のオーブが放射された。


 それがプラスの奥義を打ち消した。


「わっはっは! これが神の力じゃ!」


 なんて下品なオーブなのか。

 プラスは驚きよりもドン引きの方が強い。


「いつまでくっついておるんじゃ、離れい!」


 ゴーが吹っ飛ばされ、再び戦闘が始まった。





 


 ──アッシュとレクス。

 2人は大人たちの戦いをポカンと見ていた。

 あまりにも次元が違うために言葉が出ず、ただ見ることしかできなかった。


「プラスってあんなに強かったのか」


 アッシュは本気のプラスを見て驚く。

 マルトンの話を聞くにそれなりに強いのだろうとは思っていた。

 だが予想を遥かに超えていた。

 彼の言う通りあれはまさしく雷神だ。


 これからはちゃんと朝早く起きることを心に誓った。

 

「いや、ワタシも初めてみる」


 レクスは疑問に思っていた。

 たしかBランクのはず。

 だが今の彼女は、Aランク2人に対して全く遅れを取っていない。

 あれは完全にAランクの実力だ。 


 もう2度とケンカをふっかけないことを心に誓った。



 




 ──戦いは終わりを迎えようとしていた。


「うがっ⁉」


 ザイコールとしては、いくら二対一とはいえ、クロスオーブを使用した自分がここまで追い込まれるとは思いもしなかった。

 ゴーならまだ分かる。

 だがプラスがここまで強いのは誤算だった。


 やがて、壁に叩きつけられて動かなくなった。

 クロスオーブも解除され、ただの萎れた老人に戻ってしまう。


「終わりだな、ザイコール」


 ゴーは腕を組んだ。


 プラスも巨大なオーブを作る。


「少しは年寄りを労わったらどうじゃ……」


 その壮大な光景に、ザイコールが泣き言を漏らす。

 完全に戦意を喪失していた。


 2人は許さない。

 大事なアッシュを傷つけた。

 仲間を殺された挙句に犯罪者にされ、間抜けを晒した。


 怒りを目の前の老人にぶつけるべく、容赦なく奥義を発動する。


「──超・雷電分離(レイジングボルト)

「──全身丸盾(フルアーマード・ゴー)!」


 と、その時、


「──偽りの聖剣(エックスカリバー)


 もの凄い振動音が。


 突如として、強烈な殺気。

 2人の頭上から塔のような巨大な光が差し迫る。


 垂直に振り下ろされた。


 ザイコール含め3人が、その爆風に巻き込まれていく。


 爆心地から衝撃がほとばしり、周囲のモノを空気ごと吹き飛ばす。


 今度は一体なんだ。

 ギリギリの所で難を逃れた。

 突然の襲撃に、プラスは動揺を隠せない。


「コイツは……いや、このオーブはまさか」


 ゴーも同じく。


 やがて煙が晴れ、その人物が姿を出す。


 青い髪をした長身の男。

 瀕死のザイコールを片手に持つ。

 冷酷な雰囲気を身に纏う。


「グレン=レオストレイトだと⁉」


 

 目を見開いた。

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