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~お姉さんと進むギルド王国~  作者: 二月ふなし
第1章 敵の敵は敵 編
24/142

23.絶体絶命

 引き続き逃亡する2人。


「レクス、もういいからさ」

「ダメだ! 今のお前はただの足手まといだ!」


 様子がおかしい。


「でもさ、これはちょっと思うところが」

「それどころではないだろ!」


 ザイコールから逃げている。

 もう遊びは終わりと言わんばかりに、本気で息の根を止めにかかっていた。

 全力で逃げるしかない。


「いい加減オーブは使えないのか! そろそろ限界だぞ!」


 おんぶしていた。

 レクスがアッシュをおんぶしながら、破裂(バースト)で移動していた。


 アッシュは技の反動でしばらくオーブが使えない。

 丸腰なためこうするしかなかった。


「──逃がさんぞ!」


 ザイコールの声。


「後ろ! すぐ後ろまで来てる!」

「分かっている! もうしゃべるな! 余計な体力を使わせるな!!!」


 かなり近いところまでザイコールが迫っていた。

 

 さらに加速して距離を縮めてくる。

 

分離(リーブ)!」


 アッシュがようやく回復。


 敵の脚部を狙ってオーブを放つ。


 運よく命中。

 ザイコールがバランスを崩し転げまわる。


「今さ! レクス逃げろ!」


 しばらく行くと、また広い空間に出た。


「行き止まりだと⁉」


 周りを見渡しても、出口は見当たらない。


 引き返そうとしたが、後からきたザイコールに入口を破壊されてしまった。


 3人とも閉じ込められて出られなくなる。


「鬼ごっこは終わりじゃな」


 とうとう追い詰められてしまった。


「あのさ」

「なんだこんなときに!」

「そろそろ下ろしてほしいんだけど」


 丁寧に下ろしてあげた。


 2人はオーブを出し、戦闘態勢に入る。


「このワシに勝てると思うてか?」


 ザイコールも合わせて構えた。


「行くぞ!」


 2人は破裂(バースト)で突っ込む。

 アッシュは光撃(ハード)、レクスは爆殺光撃(バーニングクラッシュ)で攻撃。

 同時に仕掛けた。


 ザイコールは2人の猛攻を軽々とかわす。


「まだ子どもじゃな。動きが直線的すぎるわい」

 

 しばらくは子どもの遊びに付き合っていたが、


「捕まえたぞ」

「なっ⁉︎」


 ザイコールがレクスの足首を掴む。


「クソッ! 放せジジイ!」


 もう片方の脚で老人の顔面を蹴りまくる。


 しかし、放そうとしない。


「レクス!」


 アッシュが助けに入ろうとするも、


「ほれい!」


 狂暴な少女をぶん投げ、アッシュにぶつけた。

 2人は綺麗に重なって地面に衝突する。


「クソッ、完全に遊ばれているぞ」


 2人とも息が上がっていた。

 先ほどの戦いでザイコールは消耗している。

 今なら戦えると考えていたレクスだが、その予想は外れた。


「ああ、やっぱり歯が立たないさ」

 

 アッシュの方はすでに体験済みだったが、改めて力の差を痛感する。


「終いか? ならワシから行くぞ」


 ザイコールが破裂(バースト)で接近。

 アッシュに向かって光撃(ハード)を構えた。


悪魔の左腕(デーモンハンド)!」


 とっさに黒い腕を出し、攻撃を打ち消す。


「うぐっ!?」


 オーブは消えた。

 だが、拳の威力は殺すことができず、後ろの壁まで吹っ飛んでしまう。


「なんと、ワシの光撃(ハード)を!」


 たかだかCランク風情にオーブを消された。


 驚くザイコールだが、切り替えが早い。

 背後から襲ってきたレクスの存在にいち早く気づく。


「しねジジイ!」


 攻撃をスルッとかわし、即座に回し蹴りを入れた。

 その動きは老人ができるモノとは思えない。


 蹴りを受け、レクスは遠くまで転がった。


「まとめて始末してやる!」


 終わらせる。

 ザイコールはジャンプして空中で静止。

 大きく手を広げる。


 そして、両手から出したオーブが拡散され、2人めがけて降り落とした。


「レクス!」


 先ほどの攻撃でお腹を押さえて動けない。


 アッシュは破裂(バースト)で降り注ぐオーブを避けながら、少女の元まで駆け寄る。


「──魔王丸盾(ディモンシェル)!」


 レクスの頭上に黒い灰のようなモノをぶちまけた。


「なんじゃ⁉」


 灰に当たったオーブは砂のように消えていく。


 アッシュも灰の下に潜り込み、攻撃をやり過ごした。


 またしても防いでみせた。

 ザイコールは仰天する。

 同時に、見たこともない技を使う少年に、薄く笑みを浮かべた。


「ハア……ハア……」


 アッシュは息が絶え絶え。

 またも大きな力を使ってしまった。

 今のでもう動くことができない。


「すまない、アッシュ」


 レクスが、倒れそうになるアッシュの身体を支えた。

 

「イービルの力をモノにしておるな。良いものを見せて貰ったわい」


 ザイコールがゆっくり近づいてくる。

 この老人はアッシュのことを知っている。

 レクスは睨むが、


「小娘の知ることではない」


 そして、右腕をかかげ、巨大なオーブを出した。


「なっ⁉」


 そのあまりの大きさに、レクスは目を見開く。


「小僧を置いて去れ、レオストレイトの娘」

「なに⁉」

「分からんか、命だけは助けてやると言っておるんじゃ」

 

 今日見たことは全部黙ってもらう。

 その後、落ち着いた後でいいので、もう一人の小汚い男も連れてきてほしい。

 というザイコールの提案だ。


 しかし、


 レクスはアッシュを放さない。

 絶対に渡さないと目で訴えていた。


「出来ればお主は手にかけたくはなかったのじゃが」


 一度腕を高くあげ、


「共に逝け!」


 目をギュッと閉じた。







 ──次の瞬間、いきなりあさっての方向の壁が破壊。


「──なにやってんのよ!」

 

 中から一瞬、人影が。

 横からもの凄い速さでザイコールをぶん殴り、壁までぶっ飛ばした。


「間に合ったわ!」


 プラスだ。

 間一髪でプラスがやってきた。


「遅いぞ!」

「ごめんなさい。少し手間取ったわ」


 敵から目を離さないで言う。 


「──やれやれ、こんなとこに居やがったのか」


 もう一人。

 壁の中からぬるりと出てくる巨大な腕。


「会いたかったぜ、ザイコール」


 ゴーだ。

 ギリギリのところで2人が助けに来てくれた。


「アッシュ……」


 プラスは、ぐったりと動かない少年を見る。


 やっと会えた。

 感動の再会を果たそうとしたが、そうはいかないようだ。

 

「あー、お嬢さん。悪いが前を見てくれ」

「わたしに指図しないで」

「チッ、親切に教えてあげたんだがな」


 

 ザイコールが立っていた。

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