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賽の河原に落とされた話

作者: 七代金平

ふと気づくと自分は霧の中に立っていた。


周りを見ると老若男女問わずたくさんの人間が自分と同じように立っていた。


唯一の共通点はみんな死に装束ってやつ?あの白い着物着てることだった。何なら頭に三角の布巻いてる人もいるし。


かくいう俺も同じだった。白い着物に白の三角布を頭に巻いてさらには手を中途半端に前に出していた。ザ・幽霊って感じ。


「列を乱さずゆっくり進んでくださーい!!」


遠くのほうから声が聞こえてくる。どうやらこれは何かの列のようだ。


何をすればいいのかわからなかったのでみんなに合わせて列に並び進んでいると霧が晴れてきて、周りの様子が分かった。


まずすごいのは一面の花畑。彼岸花だっけな。がずら~っと咲いている。まあきれいなこと。とてもこの世のものとは思えない。


次にこの列は川を渡る船に乗るための列らしい。ちょっと先のほうに川があって、昔ながらの屋形船っていうの?あれが5,6隻ある。みんなそれに乗るための順番待ちしているらしい。


あ~やっぱ俺死んでたか、って改めて思った。


だって最後の記憶がリスカしてる時の記憶で(やっべ、これたぶん動脈まで行ったわ、お湯で流さないと!)だもん。これで死んでなかったらびっくりだわ。


やっちまったなあ、ノリでリスカなんてするもんじゃなかったなあ。


新しいカッター買ったしリスカしてみたかったんだーとか言ってた俺、マジで殴りたい。


そんなこと考えていたら船の順番が来た。これ乗ったらあの世行きかあ。


「あ、ちょっと待ってお兄さん。お兄さんはこの船乗れないよ。」


「え、なんでなんで?ブスは泳げてきな?」


「いやいや、そうじゃなくて。」


俺を止めてきた船乗りさんは持っていた帳簿を確認するといかにもあちゃーみたいな顔しながらこっちを見てきた。


「お兄さん死因自殺でしょ。」


「いやまあ、そうですね。」


「しかも親より先に死んだでしょ」


「あ~、親確かに生きてましたね」


「あちゃ~」


ついに言っちゃったよ、何なんだよ。


「親より先に死んだ人はこの河原沿いに歩いて2kmのところにある賽の河原で石積んでもらわないと。」


「え、まじで?」


「まじまじ。君仏教徒でしょ?キリスト教とかだと見逃せたんだけど仏教徒になっちゃうとね、規則なんで。」


いや、規則ならしょうがないし、俺が仏教徒なのも間違いないからいいんだけどさ。


「あの、おれ24よ?」


「みたいだね。」


「身長178よ?」


「今どきの子は身長高いよね~」


いやそうじゃなくて。


「賽の河原って、歌いながら石自分の身長まで積むんじゃなかった?」


「そうね。」


「いやいやいやいや」


無理やろ、約1,8mつまなきゃってことでしょ?


「え、なんとかなんないの?」


「なんないっすね、こっちの規則なんで。では、いってらっしゃ~い。」


そういうと船乗りは俺を無理やり列から外し「その方向にまっすぐ歩けばすぐだから~」とだけ言って次の死者の相手を始めた。


マジかよ、20超えて石遊びさせられるのかよ。てかあの世の制度ここ数百年変わってねえの?現実では成人年齢引き下げやら児童手当やら目まぐるしく変わっていく中で、あの世は未だに江戸時代?改革が必要だろ改革が。マジで意味わかんねえよ。マジやってらんないわ、自殺とか言われてたけど実質事故だし、そういう柔軟な対応できねえから日本の少子高齢化が進むんだよ。あの世システム悪いからまだ死にたくない的な老人が増えるんだよ。マジ考えろよ。


なんてうだうだ考えていたらでっかい看板が現れた。「賽の河原~楽しく親御さんが死ぬのを待とう♪~」とポップなフォントで書かれている。


舐めてやがる。こっちだって好きで親より先に死んだんじゃねえんだよ。


「あの~船乗りさんにこっちに行けって言われたんですけど」


「ああ。小林さんね。大変だねえ、その年で賽の河原なんて。まあ業務内容は単純だし気楽にやっちゃって。」


入り口付近にいた皮膚の青い鬼に声をかけるとそういわれたので早速石を積んでいる。なんだよ業務内容って、給料もらえんのかよ。


しばらく石を黙々と積んでいると近くで泣き声がした。


「うわ~~ん」


「ガハハハハハっ。また積みなおしだなあ。」


見ると小学校3年生くらいの子が積んだ石を鬼が壊したところだった。男の子は鬼が去ると泣きながらもけなげにまた積みなおしている。


泣くな少年、ここはそういう場所だ。


心の中でエールを送っていると先ほど石を壊した鬼と目が合った。


一瞬怖い顔をした。おそらく俺の石の塔も壊してやろうとしたのだろう。しかし俺の手元を見てすぐに憐れむ顔に変わった。


そりゃそうだ、なぜなら俺の塔はわずか3段で止まっている。


そもそもとしてこの賽の河原は古参が有利になるようになっている。古くからいるガキはでかくて平べったい、土台にふさわしい石を確保しそれを使って塔を築く。対する俺のような新参者は砂利みたいなみみっちい石しか確保できないのだ。


それに加えて俺は身長が178cmもある。塔の建設は絶望的だ。


見るとさっきまで嬉々としてガキの塔を壊していた鬼が頑張れとジェスチャーで伝えてくる。ふざけんなクソ鬼できるわきゃねえ。






「おい、お前ら給食の時間だ!!!」


鬼が河原の入り口に立ちエプロン姿で怒鳴り散らす。いや威厳もくそもあったもんじゃない。


「「「わ~~~~い」」」


河原にいたガキどもが一斉に駆け出し入り口に置いてある長テーブルに座りだす。


「今日のご飯は何?」


「今日は青鬼特性カレーだ」


「ええ、、僕辛いの食べれないよ、、、」


「私も、、、」


「そんなお前らのために鬼甘に作ってある」


「やったーーー」


「鬼さん大好き~~」


舐めてんのか。賽の河原児童福祉法適用されてんの?


鬼たちは一応どすの聞かせた声で話しているがガキどもには大好きといわれている始末だ。


あほらしくて俺はこの隙に平べったくてでかい石を集めることにした。


なぜだか知らないがここでは腹が減らない。体感3日くらいたっているのに。おそらく給食も名前ばかりで要は休憩なのだろう。


離れたところで石を探していると、ふとガキが一人いることに気づいた。


そのガキは給食に気づいていないのか熱心に石を積んでいる。しかももう少しでガキの身長に達しそうだ。


考えるより先に体が動いた。


ガシャン!!!!


俺はガキの積み立てていた塔を蹴り壊した。


ガキは最初何が起きたのかわからないといった顔をしていたが、徐々に顔がゆがみ、河原に響き渡るほどの声で泣き出した。


「うわああああああああん」


「ガアッハハハハハハハハ!!塔が完成すると思ったかクソガキめ!!俺より先に塔を完成させるなんて許さんわ!!」


河原にはおそらく小学校入学前であろうガキンチョを本気で泣かせている24歳の姿があった。あれ、俺鬼より鬼してね?






「小林!!!ちょっと来い!!!」


賽の河原に来て早2年が経ったころ、鬼に呼び出しを食らった。


なんだと鬼のそばによるとここでは話せないからと賽の河原から離れたところへ連れていかれた。


連れてこられたのは最初俺が渡れなかった川、三途の川だった。


「え、とうとう親死にました?」


と嬉々として聞いたがなぜか無視された。


「おい、例の奴だ」


と鬼が船乗りに声をかけると、船乗りは船着場から少し離れたところにある船を指さし、「あれに乗んな」といった。


何やら俺抜きで俺の話が進んでいるようで非常に不愉快な気持ちで船に乗り川を渡った。







「ここで待っててくれ」と言い残し鬼は去っていった。


俺は川を渡った先、さらに奥のいかにも閻魔様の城といった建物の一室に通されていた。


なんか俺やらかしたっけな~。最近の俺といえば石の塔作るのあきらめて周りのガキどもの塔の完成を邪魔する妨害厨に転身したくらいなんだけどな、確実にそれか。


あの世の説教ってどんなンなんだろ。やっぱ仏陀本人が直々に説教に来るのかな~。いやだな~、屁理屈で返しちゃいそう。


そんなことを考えていたら部屋のドアが開き、今までの鬼より二回りほどでかい鬼が現れた。


そっちのパターンかあ。俺あの世でもまた死ぬの?と不安に思っているとその鬼から意外な提案がされた。


「お前、鬼にならないか?」


「いや猗〇座か」






長々と話をされたから要約して話すと、どうも今鬼界で俺は評判がいいらしい。


今まで賽の河原では鬼の監督不行き届きで石の塔を完成させてしまうことが度々あったらしいが、俺が来てから0になったと。ここ最近の活躍は特に目まぐるしく、ぜひ鬼になってほしいとのこと。


最初はそんな面倒くさいこと誰がやるかと思ったがこの一言ですべて変わった。


「50年で定年扱い、その間特に問題行動がなければ来世に優遇措置をする。」


「それって超絶イケメンに産んでくださいとかもできるの?」


「もちろん」


「やります」







というわけで僕は今、鬼をやってます。

アドバイス、誤字脱字超ほしいです。

少しでも笑ってくれたら「笑ったよ」だけでいいので感想も欲しいです。

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