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第八世界の無機魔術師  作者: 菟月 衒輝
ZERO;Public School of Magic
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二.  入学式

「ふぅ。なんとか間に合ったな」

「カインが夜遅くまで起きてるからぁ〜」



 二人は合格通知書を受け取り、入学式が執り行われる中央大講堂に行かんとする第3クラスの列にギリギリ合流できた。


「こらぁー、お前ら遅刻だぞー」

 教師からの注意の声に入学試験の時に似た笑い声が生まれる。



「お前はよく不特定多数の人に笑われるのな」

「今回は僕のせいではな・・・?」

 レイははっきりとはしないが、違和感を感じ、辺りを見回した。



(―なんだろう?今の感じ)


「ん?どうかしたか?」

「いや、なんでもないや」





◇魔法公学校 中央大講堂





 中央大講堂は大講堂という名の通り、とても大きな場所で、その広さは数千人を収容できる。


 扇状に席が並んでいて、演壇の方から第1クラス第2クラス第3クラスという席順だ。



「あ、そうだ。潤女うるめ、お前は一番前の席だ」


 担任と思しき女教諭は席に着こうとするレイを引き止める。


「え?僕だけですか?」

「そうだ。お前だけだ」



 カインが吹き出しながら「遅刻したからだろ、ご苦労さん」とレイの背中を軽く押す。


「そんなこと言ったら君もじゃないか!」



「ほら、さっさと行った行った」


 その女教諭は手で虫でも払うようにそう催促する。



 レイは諦念に似た心持ちでとぼとぼ講堂の階段を降りていく。



「それと・・・七里、お前には後で話があるので私の隣に座りなさい」

「は?あ、はい。すみません」


 カインはレイがこちらを一瞥するのと同時にニヤっと笑ったのを見逃さなかった。


「あんにゃろめぇ〜」

「ん?なにか言ったか?」

「いえ。何も。独り言でございますわ」


 どこのご令嬢だよ!とカインは自分で自分に突っ込んだ。



 

 入学式は校歌斉唱から始まり、学校長の言葉、来賓の祝辞や在校生代表の言葉などで1時間強。


 レイは第1クラスや第2クラスの前にいるという緊張の檻からはとっくに脱獄していて、微睡(まどろみ)の海を泳いでいた。



「続いて入学試験成績優秀者の表彰です」



 成績優秀者とは読んで字の如く、魔術や学術の試験などで優秀な成績を収めた者のことで年に数回、公に表彰されるのだ。

 


 その司会の声と共に最前列の生徒は一人を除きバッと立ち上がる。



「君、立ちたまえ」


 レイの隣に座っていた第1クラスの生徒が肩をたたいてそっと起こす。



「ゑ?ん?あ、はい」


 レイは全く状況が掴めておらず変な声も出た。

 そして寝起きの顔である。



 壇上に登った最前列にいた生徒はビシッと壇上に並んだ。



「総合魔術における入学試験成績最優秀者 S1クラス 零月(れいづき) (まい)

 

 はいっ、と淑やかながらも力の籠もった声が響いたあと、学校長の前へ黒髪の女子生徒が登場する。

 大講堂は若干騒つき、レイはその堂々たる態度に憧憬の眼差しを向けた。


(―かっこいいな、あの人)


 

 そのあとも殆どの表彰で英が最優秀者として呼ばれ、他の壇上の生徒が呼ばれることはなかった。

 次点以降は壇上に立てるだけで呼ばれることは無いのだ。




「総合学術における入学試験成績最優秀者 四組 潤女(うるめ) (レイ)


 レイはその情報を処理するのに少し時間を要した。

(―ん?いま呼ばれたの僕だよな?)



「ゑ?はいっ!」


また変な声が出る。


 

 英の時とはまた違った雰囲気で大講堂が騒つく。




「え?四組って言った?」

「第3クラスのやつが学術首席?」

「なにかの間違いだろ…?」

 



 レイはふらふらと壇上の教壇の前へ向う。



「おめでとう」



 学校長から金色の表彰状が手渡される。レイはここでやっと自分が成績最優秀者であることに気が付いた。

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