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第八世界の無機魔術師  作者: 菟月 衒輝
第一章 武技競戦
34/84

23. 武技競戦 本予選 剣術②

次話もすぐに投稿します。


                     ◇


「いまのは……とんでもないわね……」


 カエデの声は少し震えていた。


「…………。オレいまのは絶対レイが負けたと思ったもん……」


「あれで魔法使ってないって言うんだから……というかあいつ試合重ねるごとに強くなってない?」


「ほんとだよな。もしあいつが魔法使えたら向かうところ敵なしだったろうな」


「本当に見えてきたわね。魔法校戦」


「ああ……こっちまで緊張してきたぜ……」




 4回戦。



「へぇ、お前さんが潤女レイか……。思ったよりちっこいな……」


 すでに試合は始まっていたが、両者とも戦わないどころか、抜刀もしていなかった。


「ほら、俺もお前と同じで片刃! ま、お前のよりでかいやつだけどな」


 ここでAクラスの学生が自分の訓練刀を見せるために抜刀した、が、構えることはしない。


「さて、遅延行為で反則取られる前に始めようか」


 膠着していた空気が変わる。レイも抜刀した。



 それを見送ってからAクラスの学生は間合いを詰め、刀を振りかぶった。


 レイはそれを敢えて受け止めてみた。

 速く、重い剣。だが、レイは気に入らなかった。



(――雑な剣だ)



 レイは相手の剣から惰性を感じた。


「ほらほら、次行く……なッ!?」


 再び刀を振り上げた時、眼の前にレイの姿は捉えられなかった。


「チッ……!!」


 Aクラスの学生は大きく距離をとった。


「どこへ消えやがッ……」


 Aクラスの学生が思い切り地面を刀で穿つ。

 その瞬間。頭上から現れたレイが側頭部を薙ぎ払った。


 競技服の安全装置が働く。防護魔法と衝撃緩和だ。

 

 競技服の安全装置は選手の命に関わる衝撃、また後遺症が残るような衝撃に対して()()()()()が外れる。

 リミッターが外れるとすぐさま簡単な防護結界が張られ、安全が確認されない限り解除されない。


「君の剣はダメだ……何も得られない」


 レイは納刀しつつ静かに言った。失望とも憤慨とも取れる言葉だった。


            


                 ◇



「一撃か……ほっ、ほっほっほっ」


「ちょっと落ち着きなさいよ」


 カインは席に座りながらぴょんぴょん跳ねるといった奇行に走っていた。


「でも、なんか今のは拍子抜けだったな。Aクラスのくせに大したことないっていうか」


 レイは今の試合、相手の剣を受け止めた後、一気に後ろに引き下がった。

 相手はその時にレイを見失い、同様に後ろに下る。


 それと同時にレイは低姿勢で距離を詰め、相手がもう一度顔を上げたときに上に飛んだ。


 

 だが、レイが近づいている時、飛ぶ直前、相手が怠慢でなければ視認できたはずなのだ。挙句の果て、イライラから自分の剣で地面を叩くなんてことをしているのだから、レイの奇襲に気がつけても防御なんてできるはずもなく。

 今回の相手はキーンと違い「油断」であったのだ。おそらくキーンと戦ってもキーンが勝っていただろうとレイは思った。



「完全に相手がレイのことをなめていたわね。ていうか、どんどん人が増えてくわね……」


 次が武技競戦本予選最終戦だから、というよりレイの大番狂わせを聞いてやってきたのだろう。


「いよいよだな!! おい、ニーナ?」


 ニーナはうつむきながらガタガタ震えていた。


「この子さっきからずっとこの調子よ」


 何かボソボソ呪文みたいに呟いているのだが、何を言っているのかはわからない。



「おい! 七里(しちり)!」


 四組の学生たちがカインに声をかけた。


「お? どうした?」


「まじで勝ってるみたいだな……」


「だから言ったじゃねぇか、あいつは絶対勝つって」


 いや、あんたも観戦中すごい情緒不安定だったじゃない……とカエデは思った。



            

                  ◇




 会場は今日イチの混雑具合。昼時だから減るのが自然なのだが、そうではないのは言うまででもないだろう。

 


 最終戦、相手は第1クラスS2クラスの学生。刀や剣ではなく、槍を得物としていた。


「お主が拙者の相手でござるか」


 呂ノ國、世界東部出身と思われる言葉遣い。


「拙者は陸道(りくどう)右門(うもん)。潤女玲殿。お主の令名聞き届けている。が、しかし拙者もそう安々引き下がれる立場にない故、容赦はできぬ」


 陸道家。零月家の分家の一つ。零月家の分家は名前にマジックコートは用いず、家名に数字を用いていることが多い。それは(ぜん)から直接教えてもらっていた。分家ならばある程度の信用はしていいということで。



 だから「立場」というのは士族の(しがらみ)のことなのだろう。

 それがレイが遠慮する理由にはならない。



「こちらこそよろしく。僕も君に負ける気はないよ」


『これから武技競戦本予選第一学年、剣術部門第6ブロック決勝が行われます』


 決勝が始まる。

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