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Prologue;第八世界の無機魔術師
荒れ果てた地と血の上に、一人の男がただ呆然と立っている。それは地面に突き刺さっている枝のようであった……
「ああ、いつからか、この、世界のことを誰にも知られないくらい、好きに、愛していたんだな……」
「我ラハメイメイ森ニ棲ム人デアツタ。我ラハ野生ヨリ出、ムラヲ作リツ、クニヲ作リツ、人間トナツタ。我ラハ異能ヲ操ル術ヲ知ル。ソレヲバ魔術ト呼ビケリ。(中略)我、ヨノ・オ・ジャルハン、此ノ帝剣『輝世』ニ誓ウ。」(創始記・ヨノクニ)
この世界に「人間」が現れてから700年余り。文明は人間の持つ「異能」――魔術(生きとし生けるもの全てに流れている魔子を行使し外界に干渉する能力)によって著しい発展を遂げた。
世界的な魔法戦争が終結し、人間社会はいよいよ安定期に入った。
―――――かと思われた。
これは、この誰もが異能を保有する魔法世界で、一人の、異能を持たぬ少年が、世界を紡ぐ物語。