79.私が作るモノっておかしいですか?
中等部も2年になると自分達が目指すモノが少しずつ見えて来るみたい。
裏庭の薬草園で薬草(精霊達)に声を掛けながら水やりの作業をして何となく考えてみます。
キラキラと水が反射して皆気持ち良さそう!
アディは未来の王妃です。
王妃教育に勤しんでいて……って言ってももう殆ど終わっていて、今は実際に王政に携わる事を少しずつ現王妃様と一緒にやっているそうです。
ますます忙しそうだけど、時間が出来たら女子会して沢山お喋りもしてるからか息抜きも出来て、楽しそうです。
最近アディはますます綺麗になりました。
イザベル様とメルもそれぞれの婚約者達を支えようと領地経営等の勉強も進めているそうです。
レティは……婚約者が決まっていないのですが、候補者の中になんとリュドが入っているそうです!!
なんと!!二人はなんとなく、そうなんとなくだけど……仲良さげなんです!!
ヴィータはリュドが付いてからさらにしっかりしてきました。
ヴィータの婚約は……今一番有力なのは隣国の姫君らしいです。
色々と調整して今度初対面するってリュドが言ってました。
どんな方なんだろう……ヴィータに優しくしてくれる方だったらいいな……。
なんか、その顔合わせよりも前にビンゴの景品になったお礼をして欲しいってヴィータから言われたんだよね。
ヴィータからそういう事言われるの初めてだったから、忘れてたわけじゃないよ!って言ったけど、そういうわけじゃないから……ってまた煮え切らない?感じになったの。
そして私、気付いたのよ!
───ヴィータって、月の雫亭に行った事無いって!
テオ達とは何回か行ってるしリュドだって私と一緒に行ってる。
ヴィータだけが行った事無かったから、ちょっと拗ねてる?のかな?って!!
もう、それならそうと早く言ってよねーって思ったけど、腐っても第二王子だもんね。
そう簡単には行けないよ……
ホイホイ出歩いているテオがおかしいだけだよ……
そんな感じで皆がそれぞれの将来に向かって歩き始めています。
高等部に上がった皆ももうなんだか大人になったなって感じ。
中等部の時は棟が一緒だったからすれ違ったりもしたし、学食は同じだったからたまに一緒に食べたりして楽しかったけどな……。
仕方ないけど寂しいよね……。
なんて考えてたら入学式諸々終わったみたいで、高等部の校舎から寮の方へ帰って行く人がチラホラ見え始めました。
「……そろそろかな?」
手を洗って道具を片付けて中等部の生徒会サロンに向かいます。
今日はサロンに皆で集合してお茶会をします。
セバスとニナが来てくれてお菓子とかの準備をしてくれているので私達は手ぶらでOK。
でも一応高等部入学のお祝いとして、ロウの毛とネスルの羽とセルの鱗の粉末で作った紐を編んでミサンガみたいなブレスレットタイプのお守りを作ったので皆にプレゼントしたいと思っています。
加護はどうしようかな〜って思って悩んでたら、オベロンがすでに加護を付与してた……。
まあ、精霊王の加護だから間違い無いと思いますけど?でも練習にならないじゃん!って言ったら、オベロンがお祝いだからねって小さい身体で可愛らしくウィンクするから仕方なしで許したよ!
アン様がコレ見た時に絶句してたけど……大丈夫かな?
そして……中等部の棟へ入る時にチラッとピンク色の頭の編入生らしき人が高等部の裏庭へ続く道を走って行くのが見えました。
走ってると怒られちゃうよー!っと思ったけど遠すぎるので見送るしかできなかったわ。
大丈夫かな?また迷ってるとか?
それに高等部の裏庭なんて何かあったかなぁ?
……後で聞いてみよう。
「リリィ!」
つらつらとそんな事を考えながら歩いていたら名前を呼ばれて振り返ると、レオ、テオ、ローラン様、マティ様、イザベル様、お兄様が揃ってこちらに歩いて来ていました。
「あれ?皆、もう終わったの?」
「うん。今日は簡単な説明だけだからね。他の皆は?」
レオが嬉しそうに話しかけてきてくれます。
「あ、どうだろう。先に行ってると思うよ?」
「そう?じゃ行こうか」
サッとこんな場所なのに腕を取ってエスコートしてくるレオにちょっとだけ恥ずかしくなっちゃいます。
「レ、レオ……」
「ん?どうしたの?」
皆はいつもの事って感じで誰も反応していません。
「まあ……いいか。あ、そうだ高等部の裏庭って何かあったっけ?」
「高等部の裏庭?……ああ、あそこは昔はガゼボがあったらしいけど裏庭だからかな、使う人も居ないしって事で取り壊されて鍛治部の工房を拡大してそこに建てて、今年から使えるようになったらしいよ」
成る程、編入生の方は鍛治部に興味があったのね……急いでいたのは早く見に行きたいからだったって事か。
「鍛治部……って武器とか作る?」
「防具もだね。ドルトスさんの所の工房からお弟子さんが来てくれるらしいよ」
「そうなんだ!見に行きたいけど、高等部じゃないとダメだよね……?」
「許可出してもらえれば入れるよ。見学に行く?」
「行きたい!!じゃあ先生に聞いておこう!!」
「ふふ、リリィは本当に好奇心旺盛だね」
「え?ダメかしら?」
「いいと思うよ?」
軽口を叩きながら話していたらサロンに到着し扉を開けると既にアディ以外は揃っていました。
「あれ?アディは?」
「あ、リリィ。アディ様はまだ来ていないですよ」
用事がある時以外は必ず早めに来ているアディにしては珍しいな……。
テオも少し心配そうな顔をしています。
「とりあえずアディ待ちながらお茶にする?ニナお願い」
「畏まりました〜」
「……アディ大丈夫かな?急に調子悪くなっちゃったとか……?テオは何か聞いてる?」
「いや、昨日までは特に変わった所も無かったが……」
アディの心配を皆でしていたらコンコンとノック音がして、セバスが扉を開けるとアディが立っていました。
「アディ!──君大丈夫かい?……顔が真っ青だ……」
テオがアディの所に歩み寄り身体を支えてソファに座るように促しました。
「本当だ……アディ、具合悪い?」
「……あ……すみません……少しだけ……」
ソファに座るアディにそっとテオが寄り添って手を握って背中を撫で、気を落ち着かせるように労っています。
「──ニナ、少し熱めに紅茶を入れて頂戴。アディ何かあったの?」
「──ッリリィ……。大丈夫。ごめんね驚かせちゃった……テオ様も申し訳ありません……」
「アディ?誰かに何かされた?それとも具合悪いだけ?」
「──大丈夫です。少し……夢見が悪くて……」
アディは真っ青な顔で俯きながら答えていく。
こんなアディは見た事ない……。
「───そうだ!アレ!アディちょっと待ってね!」
アイテムボックスの中から瓶を取り出して、アディに渡します。
「アディ、コレ飲んでみて!師匠と一緒に作ったから変な物じゃないから!」
「リリィ……ありがとう」
何も言わずにアディは渡された瓶の蓋を開けてコクリと飲んでくれました。
疑いもせずに飲んでくれるアディに私って信頼されている!という喜びが爆発しそうでした。
「リリィ──今のは何?」
テオが心配そうに聞いてきて、それもそうかと説明をします。
「今のは回復薬かな。体のダメージに対してじゃなくて、気持ちの方のダメージに対して回復させる薬だよ。いい香りと美味しい味で少しでも気分は良くなると思うんだけど」
女の子用に作った薬というかサプリメントで、メンタルが疲れた時とかにどうかな?と思って試しに作ってみたんだけど……。
「リリィ…ありがとう。少し落ち着いたわ」
アディの顔色は戻っていて落ち着きを取り戻したのか、フワリと綺麗に微笑んでくれた。
何かあったのかもしれないけど、アディが大丈夫だと言ったらもう大丈夫。
本当に困った事があったならすぐに言ってくれるしね!
心配だけどアディを困らせちゃいけないし……。
「あ、そうだ!!入学おめでとうございまーす!って事で皆さんコチラをお受け取り下さい!」
ジャーンとミサンガをテーブルに置いた。
「───っっ!!」
皆さん、どうしたの?
そんな驚いた顔して、ささ、受け取ってちょーだい!!
「───リリィ。君の作る物は本当に……」
何ですか?
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