76.卒業パーティー楽しんでくれてますか?
卒業式が終わり、ホールに中等部の人達が集まりました。
ホールの前方にステージが作ってあって、そこにまず先生方と現生徒会役員が並び挨拶をします。
「三年生の皆さん中等部ご卒業おめでとうございます……」
あの人見知りでおとなしかったヴィータが大勢の人の前で堂々と挨拶しています。
うん、成長した!息子の成長を喜ぶ母みたいな
感情になるのは仕方ないと思うの!
だって、あのボソボソ何話してるか分からない、存在感のないヴィータがこの堂々たる態度!
テオも安心して高等部に行けるってもんよね。
「……そして今回の卒業パーティーは今までとは違う新しい事を沢山用意していますので、是非楽しんで下さい!……まずは、ビンゴ大会を始めたいと思いますのでお手元に配りましたカードをご覧ください。ビンゴゲームの説明は……メラニーよりさせて頂きます」
ザワザワと皆さんが楽しそうにしています。
入場の時に一人一枚ずつビンゴカードを配っていたのを皆さん興味深そうに見ていたから、盛り上がりそうな予感がしますよ!
「コホン……皆さまのお手元のカードまず中心部分をこうやってパチリと穴を開けてください」
実演しながらメルが説明をして、皆真剣にパチッと穴を開けています。
先生方にも配っているので全員参加です。
「今からここから出てくるボールに書かれた数字を発表していきます。同じ数字がカードにあった場合その箇所を開けてください。縦横斜めが揃いましたら、ビンゴ!と言って前に出てきてください。景品と交換させて頂きます!」
景品?という声が聞こえてきてメルが再び説明を始めます。
「前方をご覧ください。ここに一覧がございます。こちらが景品です!これらと交換いたしますので早く数字が揃う事を祈りながらゲームに参加して下さいね!」
景品一覧を見せると、オオッと大きな騒めきがホールに響いた。
「ホッドミミルの……いいね!」
「アタシはリュド様のがいい!」
「私は先生の……」
「聖獣様のってヤバイ!」
「自分、クリス様とお茶会がしたい……!」
様々な声が聞こえてきて反応は上々!
「……では、スタートしたいと思いますので宜しくお願いします!」
カラカラっと数字の書いてある小さなボールの入った球体を振り、ボールを取り出します。
前の世界にあったような物は作れなかったけど、まあいい感じの物が作れたと思います。
ドルトスさんにお願いして工房を借りて作ったの。ボールはリンリンさんの所で。
ワーワーキャーキャー楽しそうな声がホールに響いています。
「リリィ」
「あ、レオ!卒業おめでとう!」
「ふふ、ありがとう。このゲーム考えたのリリィだって?」
「あー、まぁ一応?」
「?。景品って面白いのばかりだね。クリスとかよく了承したね」
「お兄様には……ヘルからのご褒美を餌にしたの。ヴィータとリュドには今度月の雫亭でご飯を奢る約束をして、ライル様にはオベロンと二人きりで話す機会をって感じで皆さんに了承してもらいました!」
エヘッ!という感じで舌をペロッと出して笑ったらレオも笑った。
「……そういえばクリスとかヴィータとかリュドとか婚約者のいないメンバーは景品になったんだね」
「本当はねぇ、テオとかも一瞬景品になってもらおうかと考えたけど婚約者がいたらダメでしょ?相手に失礼じゃない」
「……オレは?オレの所にも来るかと思ってたけど」
え?レオ?
「リリィの周りの男どもは聖獣様も含めて皆駆り出されてたから、オレの所にも来るのかなって思ってたけど」
「レオはそんな……一瞬考えたけど……」
「オレは戦力外?」
「そんな訳ないじゃない?レオが出たら目玉よ超目玉!」
「なのに呼ばなかったの?オレの事忘れてた?」
「……そうじゃなくて……すぐに却下したの」
「なんで?なんで却下したの?」
「──っ!あ、レオ!数字!数字!当たってる!」
「ん?あぁ、本当だね。……フフ自惚れてもいいのかな?」
「──っ、バカ……」
「ん?なんて言ったの?」
「──知らないっ!!」
なんで却下したのかなんて……そりゃあレオに景品になってもらえたら凄い目玉だけどさ!当たってゲットするのって男の子だけじゃないんだもんね……自分以外の女の子と学食でだけどお茶会……って思ったら、なんかモヤッとして気付いたら却下してたんだもん。
って考えてたら顔が熱くなってきちゃった。
隣に涼しい顔で立っているレオを見上げると目が合った。
すごく優しく微笑んできて、あの……どうしたらいいですか?分からなくなってきたのですけど……。
そんな事をしている間にも少しずつ「ビンゴ!」の声が上がってきています。
女の子達は目の色変えてビンゴカードを喰い入るように見つめています。
ワーッ!キャーッ!
あと少し!悔しい!ヤッター!!等々ホールには楽しい声が沢山上がっていました。
「キャンプファイヤーっていうのもやるんだって?」
レオが話題を変えて話しかけてきました。
「……そうなの。それも初の試みだからね準備はしたけど皆がダンスで楽しんでいる間に外に最終確認しに見に行ってくるわ」
「じゃあリリィがダンスは参加しないって本当だったんだ……残念」
「え?」
「ファーストダンスを申し込もうと思ってたんだけどね。そういう理由なら仕方ないね。今回は諦めるよ」
と言って髪をひとすくいすると、そこにキスを落としてニコリと笑った。
「オレ、ビンゴだわ」
そう言ってレオはステージに向かって行った。
──なっ!なに!レオは私をどうするつもりなのよ!!
心の中で悪態をついてもレオはステージ上で景品選びの真っ最中。
何を選ぶのかと思ったらポーション詰め合わせでした。
凄い嬉しそうな顔をしているから言ってくれたらレオにだったらいつでも渡すのに……って思ったら何かすごく特別な位置にレオがいる?
「──リリィ?そろそろ外のチェックに行きますよ?」
「──わっ!!あ、リュドか、びっくりした」
「なんか顔赤いですよ?大丈夫?」
「だっ大丈夫よ!ほら、行こう!!」
ホールはビンゴ大会も大盛況で終わり楽しそうな顔の皆さんがスイーツバイキングに向かったりお喋りしたりダンスしたりしていた。
あら?いつの間に……?
そう思ってホールを見回すとレオがホールから出て行く所だった。
「──あ、リュドごめん。先に見に行って貰っていい?後から行く」
「え?あ、はい、了解しました。では後ほど」
なんとなく、なんとなくだけどレオの後を追ってしまう。
「──レオ!!どこ行くの?」
「あれ?リリィ。今から外でチェックじゃなかったっけ?」
レオは少し驚いた表情で振り返った。
「あーえと、そうなんだけど……レオが出て行くのが見えたから……」
「追い掛けて来てくれたの?」
「えっと……何で?ダンスとか……」
「ふふ。心配してくれた?」
「そ!そうなのか…な……?」
「リリィと踊れないならホールに居ても仕方ないしね。他の子と踊るのは面倒くさいし」
「面倒くさいって……」
「ん?リリィ以外とは踊りたくないし。社交界だったら仕方ないと割り切れるけどね。面倒な事はしたくないし」
私…以外とは……踊らないんだ……。
「リリィ?あ、でもキャンプファイヤーは参加するよ。そこだったら気兼ねなくリリィの側に居られるでしょ?」
ボンッと顔がまた熱くなったのがわかった。
レオは、私が照れたりするの分かってて直接的にアピールしてくるんだ。
「……揶揄ってる?」
「リリィの事を?そんな訳ないでしょ」
レオの顔は真剣。
「リリィと一緒に居れる時間は少ないからね。……またダンス踊る機会があったらファーストダンスは必ずオレと踊るって約束して?」
「……ん」
「エスコートさせてね?」
「……ん」
恥ずかしくてレオの顔を見る事ができません!
下唇を突き出すような拗ねた顔になってしまいます。
「リリィ?」
顎をクイっとされ視線を合わされました。
「かわいい、顔真っ赤だ」
「──!バッバカ!!」
額にチュッとレオの唇が軽く触れて離れて行きました。
はくはくと口を動かすけど声に出す事ができません……。
「じゃあ、どっかで時間潰してから行くから、また後でね」
ヒラヒラと手を振ってレオは去って行きました。
『あれって、レオって言ったっけ……?』
「──!!びっくりした!!……アン様!!』
今度はカラス姿のアン様が窓から声を掛けてきて中に入って来ました。
『学園の結界もザルよね……』
「師匠はレオの事知ってるのですか?」
『まあ……そうね、生まれたてのあの子を鑑定したのは私だからね……』
「──えっ!?」
確かに、あの時レオは魔女に鑑定してもらったって言ってたけど……確か深淵の魔女にって言ってた気がする……。
『まあ、ある意味深淵の森よね……』
「え!じゃあ王とかに相談した方が良いって……」
『助言したのにね……あの子の母親は残念だけど愚か者だったわね……』
師匠の言う事を聞かずに魔力暴走を起こして死に至ったというレオのお母様……。
『まあ、仕方のない事だったと思うわ……でも乗り越えられたのもリリィのおかげなんだろうね……』
「……。そうだと嬉しいですけど……」
『クク……あれだけイイ男に育ったからね……アンタもボサボサしてると横からかっ攫われるわよ……』
「────っ」
『……じゃあキャンプファイヤー楽しみにしているわ……』
バサバサと師匠は入ってきた窓からまた外へと出て行った。
───皆して、私を悩ませないで下さい!!
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