74.やりたい事が見つかりましたので全力を注ぎます?
あの日からこの国この世界の事を色々勉強して分かった事があります。
過去に聖女と呼ばれる女の人がいた。
精霊王はその女の人を加護していた。
その女の人は精霊の愛し子と呼ばれていた。
聖獣はその女の人と一緒に結界を張っていた。
初代聖女は自分の意思で世界を守っていた。
初代以降の聖女は初代のようであれと強要されていた。
初代以降の聖女は自己犠牲の元世界を守っていた。
聖女は約100年毎に誕生してきたらしい。
数百年前の最後の聖女はマルタン王国に居た。
教会から出て王家に嫁ぎ幸せになったらしい。
それが最後の精霊の愛し子。
それから……
……今、私の部屋には精霊王と言われている人物が腹を出して枕の上で大の字で寝ています。
更に……聖獣と呼ばれる方々が……
えーと、ロウは…安定のひっくり返りからの体ビクゥッですね。
えーと、セルは…あら今日は絡まってないわね。と思ったら尻尾の先は団子結びみたいになってるわ。
えーと、ネスル…あらイヤだ目が合ったわ。
ネスルが寝てる所って見たことないなぁ。
ロウとセルとは大違いね。
───って思ったら体ガックゥッてなった!!
──寝てたんかい。
ラスク……は安定のバスケットの中でお鼻がピクピクしてますね。
フフフ……
そうか、やっぱりそういう事だよね……。
はぁ……。
何がどうしてこうなったって感じ。
まあ、全てを素直に受け入れていたらこうなったんだけど…。
うん、私にはそういうの無理。
明日天気になりますように…とか、アレが食べれますように…とかそういう願い事はしてたけど、世の為人の為に祈りを捧げる?ってそんな聖人君主な人になるのなんて難しいよね。
皆、特に何も言わないのには何か理由があるのかな?それとも、私じゃ力不足だから黙ってる事にしたのかな?
学園長が言いたかったのはそういう事?
それともそうはならないようにっていう事?
このご時世だから特にそういうのは要らないって事なのかな?
じゃあ……今自分は何がしたいのか、だよね。
一番やりたい事は……美味しいポーション作りと魔法具作りかな……。
自分が第一線で戦うのが難しいと判ったから、それなら皆を守る物を作りたいって思ったんだ。
沢山考えてそれが今一番やりたい事だと気付いたんだよね。
魔法具と言えばリンリンさんだけど、そこにいきなり教えて下さいって言うのもお仕事されているリンリンさんの邪魔になるだろうし……。
ポーションとか他の薬も使ってみたい。
そう思うと……アン様に……教えてもらおうなんてちょっと虫がいい話かな……。
でも一番確実に私がやりたい事を教えてもらえると思うんだよ。
そう思った瞬間に窓をコツコツと叩く音が聞こえた。
「──誰?」
ここは5階だよ?…と不安になりながら窓を開く。
『早く開けなさいよね…』
漆黒のカラスがそう言いながら部屋に入って来た。
『何?このだらしない奴らは……はぁ……リリィの事拐うわよ……?』
その声に反応して全員がバッと飛び起きた。
『なっ!ババア!!何しに来やがった!!』
え?このカラス、アン様なの?
『リリィ、半分正解。思念だけこの子に乗せてるのよ』
「アン様…何故ここに?」
『そーだそーだ!貴重な睡眠時間を返せー!』
「セル、煩い!」
『……すまん』
『なんだかね、ウダウダと悩んでる声が聴こえてきたからね…』
「アン様──っ私!アン様に!!」
カラス姿のアン様のなで肩?部分に手をガシッと乗せてガクガクと揺らしながら力説してしまった。
「ポーション作りとか!魔法具作りとか!そういうので皆を!!」
『わ…わかった!分かったから!!落ち着いて!離しなさい…』
ハッと手を離すとカラス姿のアン様はクチバシでボサボサになった羽を整えるとコホンと咳払いをした。
『教えるのは別にいいわよ…作るついでだし。リリィは質の良いものを作るし…』
「え!?じゃあ、いいんですかっ!?」
『……そうね。アンタが大変じゃない程度に家にいらっしゃいな。私が居ない日でも勝手に使ってもいいけれど…そういう日は作った事のある物なら作ってもいいわ……』
「アン様!ありがとうございます!!あ、でも教えて貰うのに何か返せる物…」
『そうね……薬草とかのアイテムを採ってくるのが授業料って事にするわ……』
「アン様…いえ!師匠!!」
『フフ…難しい所にも採りに行って貰うから覚悟しなさいよ…?』
「はい!!頑張ります!!師匠よろしくお願いします!!」
目の前の霧が晴れたようなそんな感覚。
聖女とか愛し子とかそういうの全部取っ払って、自分のやりたい事を師匠に色々教えて貰おう!!
それが皆の為になればそれでいい気がするんだ。
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